じじぃの「科学・地球_413_始まりの科学・銀河の始まり」

アルマ望遠鏡の光学系のお話 -導入編-

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ve9TVm10ZDY

アルマ望遠鏡と天空に架かる天の川銀河


アルマを作り上げた人々の執念、難プロジェクトは人を、企業を育てる

2018.02.14 日経クロステック(xTECH)
 スーパー電波望遠鏡「アルマ(ALMA)」。南米チリ、アンデス山脈アタカマ砂漠。海抜5000mの高地に設置された、全66台のパラボラアンテナで構成される世界最高の巨大電波望遠鏡である。
 アルマ望遠鏡は人類が創り出した、宇宙を見る、知る、最大の眼だ。
 2013年3月の開所式からやがて5年。
 アルマは、期待以上の成果、宇宙の成り立ちを明かし続けてくれている。
 それは、「私はどこから来たのか?」「私を作っている物質はどう生成されたのか?」、つまるところ「私とは何か?」という究極の問の答が続々と出ていることを意味する。
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/column/15/080200123/00011/

『【図解】始まりの科学―原点に迫ると今がわかる!』

矢沢サイエンスオフィス/編著 ワン・パブリッシング 2019年発行

パート2 銀河の始まり――宇宙の大衝突が銀河を生み出す より

アンドロメダ銀河が天の川に接近中
われわれが生きている天の川銀河(銀河系)に隣のアンドロメダ銀河が急速に近づいている。そのスピードは時速100万km、1年に9億kmにも達する。いずれ2つの銀河は衝突し、地球は破滅するかもしれない。
もっとも、現在のわれわれが地球の破滅を怖れたり悲観する必要はない。衝突が起こるのは最新の計算でも45億年後である。おそらく銀河系は、過去にもこうした衝突を経験している。後述するように銀河の多くは他の銀河との衝突を経て成長し、いまのような姿になったと考えられているのだ。
宇宙には数千億個の銀河が存在する。美しい渦を描くもの、楕円形のもの、綿雲が集ったように見えるもの――その姿形や大きさはさまざまだ。
アンドロメダ銀河やわれわれの銀河系は「渦巻銀河(渦状銀河)」のひとつである。中央のふくらんだ領域(バルジ)のまわりをとりまく”腕”が渦を巻いているのでこう呼ばれる。われわれの銀河系には2000億個もの星々が存在し、直径は10万光年に達する。光が1年間に進む距離(1光年)は約10兆kmで、地球ー太陽間距離の6万倍だから、10万光年は地球ー太陽間距離の60億倍である。
宇宙に散りばめられた銀河の中には100兆個もの星々をもつ超大型銀河もあると見られている。これほど巨大な宇宙構造物である銀河やわれわれの銀河系は、いったいいつどのようにして生まれたのか?

●最初の銀河はいつ生まれたのか?
多くの読者は、人間が”過去を見る”ことなどできないと考えるかもしれない。しかし、われわれの目にふだん映る光景は現在ではなく、つねにほんの一瞬過去のものだ。”見る”とは、外界の光が眼球に飛び込み、その情報が目の網膜から視神経を通って大脳に送られ、そこで解釈されたものだ。外の世界が発したり反射したりした光が目や脳に届くまでには、短いといえ時間がかかっている。ただ、日常生活でわれわれがそれを過去と感じるほどの時間差ではない。
だが宇宙は別である。もっとも遠方の天体の光は数億年、数十億年の時間をかけて地球に届く。いいかえると、われわれが観測できる遠方の天体ははるかな過去の姿だ。NASAのハップル宇宙望遠鏡やチリにあるアルマ電波望遠鏡のようなずば抜けた性能をもつ望遠鏡は、宇宙の過去をのぞく”タイムトラベル装置”でもある。
近年、こうした望遠鏡の観測により、初期の宇宙のようすがしだいに見えてきた。それによれば、130億年前にはすでに多数の銀河が誕生していたらしい。われわれから最遠の小さな銀河(GN-Z11、MACS11491など)は、その光の波長から計算すると133~134億年前にすでに誕生していたことになる。「ビッグバン宇宙論」(パート3参照)にもとづけば、これらの銀河は宇宙誕生からわずか4億~5億年後に誕生したのだ。
初期の銀河はいまのわれわれの銀河系よりはるかに小さい。130億年前の銀河の大きさが銀河系の20分の1~100分の1で、星の数も10億~数十億個と推測されている。しかしどれも非常に明るく、星が爆発的に誕生していることを示している。星誕生のペースは銀河系(年間数個)の数十倍、ときに1000倍に達する。
初期の銀河は、自らの重力で周囲のガスを引きつけしだいにて大きく成長した。さらにまわりの銀河と衝突や合体をくり返してしだいに巨大化したと考えられている。つい最近も、まさに集合の途上にある小さな銀河群が発見されている。比較的近傍の、つまり最近の宇宙でも衝突中の銀河がいくつも見つかっているが、宇宙初期の銀河どうしの衝突ははるかに頻繁であったようだ。
すでに見たように、われわれの銀河系も過去に何度も衝突を経験した。最近のESA(ヨーロッパ宇宙機関)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測では、銀河系全体の回転とは異なる動きをする星々が多数発見された。

●宇宙初期に生まれた超巨大ブラックホール
では、銀河どうしが衝突すると何が起こるのか? 衝突といっても星々の間は実際には離れているので(たとえば太陽から隣のケンタウルス座アルファ星までは4.3光年)、直接衝突するものはそれほど多くないと予想される。だが星々の間に漂うガスはぶつかって圧縮され、その衝撃によって新しく星々が生まれる。また銀河の形は、互いに重力を及ぼし合ってひどく崩れる。だが銀河はゆっくりと回転しているので、周辺の星々はしだいに中心部のまわりに渦巻く円盤へと姿を変える。ただし銀河どうしが正面衝突した場合は、楕円銀河になると見られる。
このとき、双方の銀河の中心に存在する2つの巨大なブラックホールは互いに引きつけ合い、ついにはひとつの超巨大ブラックホールへと姿を変える。
だが最近、このブラックホールが大問題になっている。銀河系の中心(いて座Aの方角)には、質量が太陽の400万倍もの巨大ブラックホールが存在することが確実視されている。またこれまでの観測からほぼすべての銀河の中心に巨大ブラックホールがあることが示され、その大きさ(質量)は銀河中央部のふくらみ(バルジ)の質量に比例することがわかった。そのための銀河とその中心のブラックホールは互いに影響しながら成長したと考えられてきた。
新たな問題とは、巨大ブラックホールの成長に要する時間である。最近の計算では、初期銀河で見られるほどの大きさにブラックホールが成長するには、周囲のガスを吸収し、さらに銀河中心のブラックホールどうしが合体するとしても、宇宙誕生から10億年程度では時間が足りないことが明らかになった。ブラックホールが巨大化するしくみがミステリーになったのだ。

●銀河の誕生と「ダークマター
こうしたいくつもの謎を踏まえた上で、銀河の誕生を説明しようとする最新のシナリオは次のようなものだ。
138億年前、宇宙のタネ――超高温・超高圧だがきわめて微小な”火の玉”――が爆発的に膨張しはじめた。これが宇宙の始まり、すなわちビッグバンである(パート3参照)。このとき途方もなく膨大なエネルギーが解き放たれ、その一部が物質を形づくる粒子(素粒子)へと変化した。
その後、膨張につれて宇宙が冷えると、これらの物質が集って最初の星々(恒星)が輝きだした。さらに星どうしはたがいの重力で集まり始め、宇宙誕生から数億年後には最初の小さな銀河が姿を現した――
ここで問題になるのは、なぜこれほど早い時期に銀河が誕生したかである。ビッグバンの際にはエネルギーは宇宙全体に均一に行きわたったはずだ。これは、物質もまた宇宙に均等に広がったことを意味する。実際、ビッグバン直後の光とされる「宇宙背景放射」(パート3参照)は、宇宙全域からほぼ均一に地球にもやってきている。
この謎を解き明かすために研究者たちが考え出したのが「ダークマター暗黒物質)」の存在である。ダークマターがはじめて提起されたのは1970年代、銀河の回転運動についての謎を解くことが目的であった。銀河の回転速度は、円盤の内側も外側も変わらない。だが、星々の少ない円盤の回転速度は、質量から考えればもっと遅いはずである。いまのような速度で回転していたら遠心力が重力を上回り、星々は銀河の外側に飛び散ってしまうはずだ。

つまり銀河には、観測できる星々とは別に未知の巨大な質量(物質)が存在して、その非常に強い重力が星々をつなぎとめていると見なくてはならない。そこで、正体不明のこの物質をダークマターと呼ぶことになった。