じじぃの「フリーダイバーの友情・マイヨール・イルカとの出会い！グラン・ブルー」

映画『グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-』予告編

動画　YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=T8DtVusxF_Q

Mayol & dolphin

11月23日　世界初の素潜り100メートルを達成（1976年）

2018.11.23　サイエンス
1976年のこの日、映画『グラン・ブルー』のモデルとしても知られるフランスの海洋生物学者ジャック・マイヨール（Jacques Mayol、1927-2001年）が、素潜りの世界記録に挑戦し、みごと水深100メートルの潜水に成功しました。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58473

『映画になった奇跡の実話これが美談の真相だ』

鉄人ノンフィクション編集部　鉄人文庫　2021年発行

グラン・ブルーより

モデルになったダイバー2人の仲は映画によって引き裂かれた

「レオン」「ニキータ」などで有名なリュック・ベッソン監督の出世作「グラン・ブルー」は、素潜りの世界記録に挑む2人のダイバーの友情と、その1人を愛した女性の心の葛藤を描いた傑作である。映画は多くの若者に支持され、製作国フランスでは『グラン・ブルー・ジェネレーション』なる言葉が誕生するほどの過熱ぶりを見せたが、一方で、作品のモデルとなった2人の男性の間に浅からぬ軋轢（あつれき）も生んでいた。
本作は、実在のフリーダイバー、ジャック・マイヨールとエンゾ・マイオルカをモデルにしたという以外、ストーリーはほぼフィクションだ。時代設定は1980年代後半になっているが、実際に彼らが記録を競ったのは1960年代後半から1970年代前半。マイヨールと恋仲になる女性も架空の人物。2人の人物造形にも大幅な脚色が加えられている。
マイヨールは1927年生まれのフランス人で、幼少のころから母親に泳ぎを教えられた。毎年、夏休みは日本の唐津で過ごすのが決まりで、生涯の心の友となるイルカと出会ったのも唐津の海だった。25歳で結婚、米マイアミ水族館に勤務し、ここでイルカの調教を担当したことから素潜りの呼吸法を体得する。その後、イギリス・カイコス諸島に移住。周囲の勧めでフリーダイビングを始めるとたちまち実力を発揮し、1966年6月、バハマで水深60メートルの世界新記録を達成する。
それまでタイトルを保持していたのが、劇中でジャン・レノ扮するイタリア人のエンゾ・マイオルカだ。1960年に45メートルの世界記録を作って以来、世界のトップに君臨。マイヨールに抜かれた後も、翌1967年に64メートルに成功し再び王座に返り咲き、以後、2人は抜きつ抜かれつの記録合戦を演じる。
彼らの闘いが終わったのは1974年。マイオルカが87メートルの世界記録を達成したものの、酸素欠乏のため浮上時に意識を喪失。映画で、彼はこの事故により死亡することになっているが、実際には一命を取り留め、以後、医師から潜水を禁じられたことで一線を退く。
その後はマイヨール1人が記録に挑戦し、1976年49歳のとき、科学者たちが絶対に不可能としてきた水深100メートルの壁を打ち破る。さらには7年後の1983年、水深105メートルを達成し、1988年までは世界王座の地位を維持し続けることになる。
劇中のマイヨールは物静かで控えめな男性に描かれている。が、実際は真逆のキャラクターだったようで、饒舌で事故主張が強く、実に怒りっぽい人物だったという。
片や、映画の中で口汚い粗野な人物に描かれたマイオルカは、公開11年後の1999年、次のように語っている。
「この作品は監督と同じフランス人のマイヨールを主役にしているため、実際の人物像より美化され、逆にマイオルカは気品のないイタリア人に貶（おとし）められている。かつて私とマイヨールは好敵手であり良きライバルだった。しかし、今では公然と知られた敵同士だ」
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マイオルカは現役引退後、医療関係の仕事に30年以上従事し、2016年11月、故郷のシチリア島で85歳で逝去。一方、マイヨールは、大記録を達成以後は人間の能力の追及をテーマに、標高4,650メートルの湖での閉塞潜水をはじめ数々の実験に参加するようになり、さらには水中出産や乳幼児の潜水訓練といった分野にも積極的に関わった。また大の親日家として千葉県館山市に別荘を設け、1990年代後半には日本のテレビドキュメンタリーにも出演。イルカと人間の共存を訴え続けたが、晩年は鬱病を患い、2001年12月、イタリア・エルバ島の自宅で首吊り自殺した。享年74歳。その遺体のそばには、「グラン・ブルー」のビデオと、直前に出演したテレビ朝日の「グレートマザー物語　ジャック・マイヨールの母」のビデオが置いてあったという。
ちなみに、マイヨールが打ち立てた世界記録はその後、彼が育てた若いダイバーたちによって更新され続け、2021年6月現在のワールドレコードは124メートルまで伸びている。