The History of Mount Everest - One of The Seven Natural Wonders of The World
富士山の高さは何メートルですか?
『屈辱の数学史』
マット・パーカ/著、夏目大/訳 山と渓谷社 2022年発行
第9章 丸めの問題 より
スケールの違う数字
人間は切りのよい数字に出合うと、その数字を疑わしいと思ってしまう。世の中の数字はほとんどが切りのよくないものなので、私たちはすっかりそれに慣れてしまっていて、たまに切りのいい数字があると、「きっとこれは丸められた数字だろう」と即座に思う。誰かが「自宅から会社までは1.5キロメートルです」と言った場合、本当に自宅から会社までの距離がちょうど1500メートルだと思う人はまずいない。きっと端数は丸められているのだろうなと思う。一方、「自宅から会社までは14万9764センチメートルです」と言われれば、一応は正確な数字なのかもしれないと思う。
アメリカが石炭による火力発電をすべて太陽光発電に切り替えたとしたら、毎年5万1999人の命が救われることになるだろう。という報告が2017年になされた。妙に具体的な数字だ。いかにも丸めていない数字のように見える。何しろ9が3つも並んでいるのだ。しかし、私の目には、これは丸めていないのではなく、あまりにも大きさの違う数字をうっかり足し合わせてしまったことで得られた無駄に精度の高い数字のように見える。本書でも触れたとおり、宇宙の年齢は138億歳だと言われている。しかし、本書の出版から3年後に、「宇宙はもう138億3歳か」などと思ったりしないだろう。スケールがまったく違う数字を足したり引いたりすることはできない。そんなことをしても無意味な答えが得られるだけだ。
5万1999というのは、石炭火力発電を使わないことによって命を救われる人の数から、太陽光発電を使うことで命を奪われる人の数を引いて得られる数字だ。2013年の調査では、石炭火力発電の排出物によって、1年に5万2000人の命が奪われていることがわかった。一方、太陽光発電のほうは、まだ規模が非常に小さいこともあり。それが直接の原因で死亡した人は出ていない。そこで研究者は、半導体産業の統計データから、ソーラー・パネルの製造過程での死者の数を推測することにした(半導体とソーラー・パネルは製造工程が似ていて、製造に使用される危険な化学物質も似通っているため)。その結果、ソーラー・パネル製造過程での死者は1年に1人くらいであるという数字が得られた。したがって、石炭火力発電を太陽光発電に切り替えることで命を救われる人の数は、52000 - 1で、5万1999人ということになったのだ。実に簡単な計算だ。
問題は、そもそも5万2000人という数字が丸めによって得られたものだということだ。
有効数字は2桁になっているが、丸めの前の数字は、有効数字5桁である。2013年のデータをよく見ると、元の数字は1年に5万2200人になっている。そして、この数字自体が推定値である(統計学に興味がある読者のために書いておくと、52200という数字の90パーセントの信頼区間は、23400から94300までである)。仮に丸めの前の5万2200人という数字を使って計算すると、太陽光電量は5万2199人の命を救うことになる。一気に200人もふえるのだ。
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エベレストの標高は、初めは2万9002フィート(約8840メートル)とされた。これだけ細かい数字が得られているからには、おそらく何十年にもわたる大変な努力の結果、算出されたものだろう、と思う人は多いはずだ。イギリスによる「大三角測量(Great Trigonometrical Survey = GTS)と呼ばれるインド亜大陸全体の測量計画が開始されたのは1802年である。1831年には、コルカタの優秀な学生、ラダナート・シクダールが大三角測量部に参加した。シクダールは、測地測量に必要な球面三角法の知識を持っていた。
1852年、シクダールは、ダージリン周辺の山岳地帯から集められたデータを分析した。そして、16の測定値を基に、当時「ピーク15」と呼ばれていたエベレストの高さを2万9000フィート前後だと判定した。その推定値を得たシクダールは急いで上司のオフィスに行き、「世界の最高峰を発見した」と報告した。その頃、アンドリュー・ウォーが長官を務めていた大三角測量部は、数年を費やして高さの確認を行い、1856年にピーク15は世界最高峰であると発表した。また、その山を前任の長官、ジョージ・エベレストにちなんで「エベレスト」と名付けた。
実は、シクダールの最初の計測値は、2万9000フィートちょうどだったという説もある。
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どうでもいい、じじぃの日記。
富士山の高さは何メートルですか?
国土地理院が公表している富士山の高さは3776メートル。
山頂の火口を囲む火口壁に8つのピークがあるが、その中で南西部に位置する最も高い剣ケ峰の高さがそれに当たる。
国会議事堂前の憲政記念館庭に1891年に水準原点を設け、この高度を24.4140メートル(最初は24.500メートルだったが、関東大震災によって下がった)と決めた。日本各地の標高はすべてこの水準原点によっている。つまり、富士山の高さは東京湾の平均の海面からの高さとなる。簡単に言えば、国会議事堂前の水準原点から順次測って決めている。
(https://www.fujisan-net.jp/post_detail/2001073)