じじぃの「女魔術師・呪い・冥界に魔法を送り込む?古代ギリシア人の24時間」

Hades & The Underworld Explained In 15 Minutes | Best Greek Mythology Documentary

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4hZN4YtBPpg

Greek mythology Hades


魔法の絨毯

2007-01-14 美術館めぐりとスケッチ旅行
ギリシャ神話あれこれ:冥府の番犬
死者の霊魂を冥府まで導くのは、伝令神ヘルメス。彼はなかなか気さくに、死への旅路を先導してくれるという。
亡霊たちは、冥王ハデスと、ミノス、ラダマンテュス、アイアコスの三人の裁判官とによって、生前の行ないについて審判を受け、それぞれの現世の罪過に相当する刑罰を受けるという。
 この冥王ハデスの宮殿の門には、番犬ケルベロスが構えている。
ギリシャ神話あれこれ:ヘカテ
本来は古い大地神だったが、次第に、冥界と縁故の深い女神となる。ハデス、ペルセフォネに次ぐ、冥界のナンバー・スリーたる権威を持ち、猛犬ケルベロスを従えて冥界の門を預かる。
月明かりの郊外の夜道を、松明を手に、冥府の犬族の一群を引き連れ疾駆して、旅人を脅かす。
亡霊の女王として、幽鬼や妖怪など、あらゆる魑魅魍魎を操る。また、隠秘で怪奇なあらゆる事象を引き起こし、魔術の使い手をことごとく手下とする。魔女メデイアもヘカテを信仰し、ヘカテの魔術に長け、ヘカテを召喚している。

また、エンプーサ(蟷螂)やモルモ(夜盗蛾)ら、邪悪な女神たちを従者とする。このうちエンプーサは、ロバの脚と青銅の脚とを持つ異形の夢魔で、自由に姿を変えて、男と交わりそれを喰らうという。
https://blog.goo.ne.jp/chimaltov/214

古代ギリシア人の24時間――よみがえる栄光のアテネ

フィリップ・マティザック/著、高畠純夫、安原和見/訳 河出書房 2022年発行

昼の第1時(6:00‐7:00)――女魔術師が魔術を用いる より

雌鶏の首を落とすと、女魔術師は部屋の奥の粗末な炉に向かった。熱湯に雌鶏の血を混ぜ、火にかけておいた小さなるつぼにそれを注ぎ入れた。ケレオスが押し殺した悲鳴をあげる。雌鶏の血が閃光とともに燃えあがり、鼻を突く黒煙が噴き出したのだ。煙は部屋じゅうに渦を巻き、物陰に重く垂れ込めた。「感じるでしょう、モルモを」女魔術師がかすれ声で言った。「来ているわ、耳をそばだてているわ」

女魔術師がかすれ声なのは、石灰と硫黄の混合粉末をるつぼに加えたとき、一部をうっかり吸い込んでしまったからだ。ケレオスはがたがた震えているし、女魔術師自身も結果として起こった化学反応にすっかり恐れ入っていた。これは、秘密の売人からもっと買っておかなくてはならない。ただ困ったことに、悪臭漂う空気、黒い雌鶏のおどろおどろしい犠牲式、それに恐るべきモルモの突然の出現、というか派手な火と煙の見世物のおかげで、ケレオスがうろたえて口がきけなくなってしまった。

「黙ってちゃだめでしょ」女魔術師がしゃがれ声をあげると、おびえたケレオスもようやく口を開いた。
「あいつらを呪ってくれ! おれに呪いをかけた居酒屋の主人どもをみんな呪ってくれ。どうかアルテミスの怒りが、とくにパナゴラとデメトリオスに降りかかって、あのふたりをどん底に突き落としてくれますように」

鬱積した怒りと失意のはけ口を見いだしたらしく、今度はあとからあとから言葉があふれてきた。
「あいつらの居酒屋を、いや、全財産を奪ってくれ。あいつらの持ちもんがなにもかも滅茶苦茶になればいい。それからぺらぺら口のうまいデメトリオスのやつ、締めあげてくれ、締めあげて、ぐうの音もでねえようにしてやってくれ。舌がまわらないようにしてやってくれ、キュノトスに当たってみてえに、そうだ、キュノトスだ!」

キュノトスとは、さいころの1番悪い出目のことだ。デメトリオスは、舌先三寸でロバから皮を脱がすこともできそうな男だった。ケレオスはそのデメトリオスの下がもつれて、立て板に水としゃべれなくなるようにと呪ったわけである。

女魔術師は立ち上がり、外国語で退散の呪文を唱えた。「アナナク、アルベウエリ、アイエイオヨ。いまは去りたまえ、女王の玉座に。そしてこのケレオスをあらゆる害悪より守りたまえ」
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その後、女魔術師は冥界にこの魔法を送り込む。これは気の重い仕事だ。次に月が空から消えるとき、この恐ろしい伝言を携えて人知れず墓地に行かなくてはならない。闇のなか、ひとりきりで――というか、すくなくともひとりきりであればよいと思う。毎週のように精霊や魔や闇の女神たちを招喚していれば、魔のうろつく闇になのが待っているかわかったものではない。それもあって、人は彼女に頼みに来るのだ。魔法が失敗したら、それを依頼した客ではなく、その魔法をかけたものに反動が来るからである。

明日は葬儀がある。アルカイオスの娘が、かわいそうにたった14歳で死んだのだ。女魔術師はこっそり少女の墓所に忍び込み、その土にこの(呪いの)鉛板をを埋める。月のない闇夜、死者の魂を冥界の門へ案内するものとして、ヘルメス神が少女を連れにやって来る。そして鉛板に刻まれた秘密のしるしに引き寄せられて、ヘルメスはこの伝言を見つけ、その宛先へ、すなわちヘカテとヘルメス、そしてアルテミス――クレオスがモルモの御前でその名を呼んだので、この名も付け加えなくてはならなかったのだ――に届けてくれる。
鉛板が見つかり、その伝言が届けられたら、もう呪いを解くことはできない。居酒屋の主人たちはおしまいだ。

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どうでもいい、じじぃの日記。

古代ギリシア人の24時間』という本に、「冥界」のことが書かれていた。
ギリシア神話では世界を3つに分けて支配する王がいる。天空を支配するゼウス、海を支配するポセイドン、冥界(地獄)を支配する王がハデスである。

古代から宗教では大体、死後の世界は天国と地獄があって、キリスト教ではその間に煉獄というのがある。

里中満智子著『マンガ ギリシア神話〈3〉冥界の王ハデス』という本にはこんなことが書かれていた。

  人は死んだ後、果たしてどうなるのでしょうか。私たちはこの世を去って、一体どこへいくのでしょうか。死後の世界は人間にとって永遠の謎です。他の民族と同様に、古代ギリシャ人もこの謎にさまざまな答えを出してきました。その1つが本書第1章と第3章に描かれたハデスです。ハデスは死者の国とその支配者の両方を意味しています。
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  この返答には、人生や死に対するホメロス的な考え方がよくあらわれています。アキレウスはなぜ地上での生活を望むのでしょうか。なぜ、エリュシオンの野に行きたいと答えないのでしょうか。1つには、古代ギリシャにはパラダイス願望があまりなかったからです。また1つには、ホメロスの世界の人々は、人間は不死なる神々とは違い、いつか必ず死ぬ存在だということを強く意識したからです。彼らは明るい陽光のもとでの生を、それが有限であるからこそ、こよなくいつくしみました。たった一度の生への愛は人生のさまざまな苦しみを人に乗り越えさせるほど強く、彼らは限りある生を人間として精一杯生きようとしました。

「たった一度の生への愛は人生のさまざまな苦しみを人に乗り越えさせるほど強く、彼らは限りある生を人間として精一杯生きようとしました」

本質的に、古代ギリシア人も現代の日本人と同じように現世を精一杯生きていたようだ。