じじぃの「歴史・思想_639_逆説の日本史・中華民国の誕生・民主革命」

孫文の演説(1924)「中国人は皆眠ってしまった!目を覚ましましょう!」 / Sun Yat-sen's Speech in 1924

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SUo-yrZlk5E

人民大会堂で開かれた辛亥革命110周年記念大会 孫文


辛亥革命110年で大会、中国、習主席が演説

2021/10/9 産経ニュース
中国で清朝が倒された辛亥(しんがい)革命の発端となった武装蜂起から10日で110年となるのを前に、北京の人民大会堂で9日、辛亥革命110周年記念大会が開かれる。習近平国家主席が演説。民族の団結を訴えて愛国心を刺激し、台湾統一への決意を誇示する構えだ。

台湾問題をめぐっては米中両国の軍事的緊張が高まっている。習氏は演説で、外部勢力の干渉や台湾独立勢力を牽制(けんせい)するメッセージを打ち出す可能性がある。
https://www.sankei.com/article/20211009-NMSVJ56EM5MFVE4K5CRVBR7CBU/

『逆説の日本史 27 明治終焉編 韓国併合大逆事件の謎』

井沢元彦/著 小学館 2022年発行

第2章 「好敵手」中華民国の誕生 より

多くの犠牲者を出した「文化大革命」を「若干の歴史問題」とする傲慢な態度

すでに述べたように、現在の習近平体制では台湾への武力侵攻すら考慮するという事態になっている。とくに、中国が「一つの中国」を声高に叫ぶ時は危険だ。それは独立国家としての台湾を許さない、ということだからだ。習近平主席は「中国共産党創立百周年」を祝う演説の中で、「一つの中国」を強調している。人類の常識でもあるが、そんな晴れがましい場で公言したことを実行しなかったら、口先だけの人間ということになってしまう。つまり本人はやる気だということだ。
そのためにぜひ必要なことは、自己の能力の強化である。習近平は最近その中の大きな試みとして「歴史決議」の実現に取り組んでいる。これも「NHK NEWS WEB」(2021年11月8日12時03分)の報道で紹介しよう。

  中国共産党 きょうから「6中全会」「歴史決議」を審議へ

  中国共産党は、重要方針を決める会議「6中全会」を8日から開き、これまでの党の歴史を総括する「歴史決議」を審議します。
  「歴史決議」は毛沢東と鄧小平の時代に採択されて以来で、長期政権をにらむ習近平国家主席の権威がさらに高まるものとみられます。

「6中全会」とは正式には「中国共産党中央委員会第6全体会議」のことだが、「歴史決議」とはいかなるものか。この記事の解説部分を紹介しよう。
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文化大革命(2019年8月24日 朝刊)

1966年、党指導部内の権力闘争を背景に、毛沢東主席の主導で発動された大規模な政治運動。紅衛兵による暴力的なつるしあげ行為が各地でエスカレート、社会が混乱、被害を受けた人は1億人に上ると言われる。76年に毛の死亡で終結共産党は81年の「歴史決議」で「大きな災難をもたらした内乱」と位置づけた。文革時に10代だった習近平国家主席も父親が地方に飛ばされ、自らも陝西省の農村に下放(かほう)されている。

ところが、じつはこの朝日新聞の解説にはきわめて重大な事実が欠落している。それは、たとえば毎日新聞の電子版の『漫画で解説 文化大革命とはの巻』にも掲載されているが、引用すれば次のようなものである。

  犠牲者は公式には死者40万人、被害者1億人ですが、一説には死者2000万人とも言われています。

おわかりだろう。公式発表はいわゆる中国共産党の見解である。こんな数字は信用できない。だがそれでも「被害者1億人」であり、死者数に至っては2000万人説もある。歴史上「中国人をもっともたくさん殺した男」は毛沢東であるという事実が、この朝日新聞の記述からはスッポン抜けているのだ。毎日の解説は朝日に比べて(ネット上の記事だから)字数制限が無く、それにくらべて朝日の記事は紙面に載ったものだから当然何から何まで書くわけにいかない。しかし、それでも絶対に書かなければいけないポイントというものがあり、それがこの場合は「2000万人が殺された可能性もある」ということだ。実際には2000万人どころでは無く、もっと殺されたと主張する論者もいるぐらいの話なのである。そこでもう一度、朝日新聞デジタルのキーワードで「文化革命」を検索すると、このキーワードを載せた最近の解説が3つ出てくる。その中の1つだけに「多くの犠牲者を生んだ」という記述はあったが、死者の数は載せられていない。朝日新聞社内では、「中国の非」に関する事実を書くのはタブーになっているのではないかと思わせるぐらいの状態である。
これは歴史的事実としてははっきり述べておくが、この「文化大虐殺」に対して、日本のマスコミの多くはこれを歴史的快挙とみなし熱狂的報道を続けたが、その中でもっとも中国に対して賞賛の声を送ったのは、ほかならぬ朝日新聞であった。そうした過去の誤りについて少しでも反省の気持ちがあるならば、こういうところでしっかりと文革の実態を記述するべきではないだろうか。NHKの解説記事にもあるように、中国共産党すら鄧小平の時代に文革は誤りだったと認めているのである。もっとも、公式見解でも40万人の自国民を殺した事実について「若干の歴史問題」とするのがまさに中国共産党であり、おわかりだろうが「自分たちは絶対に過ちを犯さない」という傲慢な思想を持っているからこそ、こういう態度に出るのである。

若い読者とは逆に、古くからの読者はひょっとしたら「おいおい、孫文の話はどこいったんだ?」と不満を抱いているかもしれないが、じつはその話もしているのである。日本は明治維新という近代化を成し遂げた。西洋も、アメリカ独立やフランス革命を起点としてさまざまな革命改革がなされ、ヨーロッパのほとんどの国は民主革命体制を確立した。ロシアだけが一時違う方向にいき、史上初の共産主義国ソビエト連邦となったが100年ももたずに崩壊し、今はさまざまな問題を抱えているもののロシア連邦という民主主義体制になった。孫文もこうした時代の流れの中で、当時の清国を民主主義国家にできると考えたのである。彼は生涯を通じて楽天家で、それが故に多くの友人に恵まれた。日本人も孫文の夢「民主革命」が成功すると考えたからこそ応援したのである。だが、その夢の結晶である中華民国は崩壊し、中華人民共和国に取って代わられた。そしてその体制は昨年100周年を迎えた。おわかりだろう、そもそも孫文の夢は実現する可能性は無かったということだ。