じじぃの「科学・地球_516_移民の世界ハンドブック・オセアニア州・オーストラリア」

1851年から2019年までの出生国別のオーストラリア最大の移民人口

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nFnG2EQs_Rk

Australia immigration


『地図とデータで見る移民の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

新世界――移住の地 より

オーストラリア、ニュージーランドと、その近隣諸国

オーストラリアとニュージーランドは、カナダやアメリカと同様に、移民の国である。オーストラリアでは白豪主義の政策がとられていたが、その後、多文化主義が市民権の構成要素となった。オーストラリアやニュージーランドの周囲には、太平洋諸島(ニューカレドニアパプアニューギニア東ティモール、フィジーサモア、ヴァヌアツ、キリバス、ツヴィル、ソロモン諸島)に住む約5000万人の人々がいる。高度技能をもつ移民は歓迎されるが、難民はオーストラリアが協定を結んだ国(インドネシアナウル)に送られる。

オーストラリア、世界の十字路にある歴史

ヨーロッパの人々のオーストラリアへの移住は、この地がイギリスの流罪植民地となった1788年にはじまった。イギリスそして大英帝国とつながりの深い白人社会は、アボリジニやその他の先住民を放逐、殺害することによって形成されていった。1788年に50万人いた先住民の数は、19世紀末には5万人に減少している。その後、イギリス人たちが開拓のために移住してきて、羊毛や小麦を生産した。1850年代のゴールドラッシュでは、ギリシャ人やイタリア人だけでなく、中国人もやってきた。いっぽう、サトウキビのプランテーションでは、太平洋諸島の先住民たちが、安価な労働力として働いていた。
「黄災論」による中国人移民への排斥運動や人種差別、ナショナリズムの高まりから、オーストラリア政府は1901年以降、非ヨーロッパ系移民を受け入れないことにした。第2次世界大戦後、人口が750万人となったために、人口と労働力の必要性が説かれ(「人口増大か滅亡か」というスローガンがそれを示している)、南ヨーロッパギリシャ人やイタリア人)や、北ヨーロッパ、東ヨーロッパの共産主義者でない白人が移民として求められた。イギリス人が優先されたにもかかわらず、年間20万人と決められている永住者数のうち、イギリスは第4位だった。オーストラリアは1973年に白豪主義を廃止し、ラテンアメリカやアジアから新規移住者を受け入れるようになった。1947年から1973年まで、労働力の50パーセントは移民でまかなわれていた。

現在の状況

現在、オーストラリア人のうち800万人、つまり総人口の30パーセントが移民である。新規移民で多いのは、インド人、中国人、ニュージーランド人、イギリス人である。しかしオーストラリアは国際色豊かな国であると同時に、ナショナリズムの国ともなっている。毎年、必要とされる労働力に応じて、数量割りあて制で移民枠が定められるが、国籍の取得(出生地主義)には時間がかかり、新たな市民権のテストも実施されるようになった。人口50万人にアボリジニは、1967年から国籍を取得できるようになっている。この国は失業率が低く、順調な成長をとげているので、経済危機が起こったときには、多くのヨーロッパ人たちが移住を希望した。短期移住の制度があり、とくに若者を対象としたワーキングホリデービザで、現地に1年間滞在することができる(2015-2016年度は21万4500人)。もっと安定した職業について、数年後に永住権を取得する人たちもいる。しかし、ポイント制で優先される職業(140種類のビザがある)は、新規移民の統合のしかたに応じて変化する。
難民の受け入れは減少し、それと同時に、不法移民への対応を強化している。インドネシアで押しとどめられた難民は、カンボジアに向かうか、あるいは太平洋諸島に設けられた「オフショア」難民センター(ナウル島、マヌス島)に収容される。ただしオーストラリアは2017年以降、人道移民の就労を支援するいくつかのプログラムを提供している。

ニュージーランド

ニュージーランドは、オーストラリアと、タスマン海をはさんだ2国間で労働者を行き来させることができる協定(TTTA:トランス・タスマン・トラベル・アグリーメント)を結んでいるので、伝統的にオーストラリアからの移住者も多く受け入れている。もっとも多いのはインド系、中国系、イギリス系、フィリピン系である。ニュージーランドでは、人口の24パーセントが外国生まれである。オーストラリアと同じようにポイント制がとられ、季節労働ビザや、学生、シニア、高度技能をもつ若者のためのビザがある。人口予測では、2026年までにアジア系移民が79万人になるとみられている。そのいっぽうで、ニュージーランドの若者たちは海外に移住している。
太平洋諸島のキリバス、ツヴィル、マーシャル諸島は、水没の危機に瀕している。キリバスはフィジーに避難場所となる土地を購入した。ニュージーランドは気候変動難民のために、難民ではなく労働移民として移住を認める制度を設けた。