じじぃの「科学・地球_515_移民の世界ハンドブック・南米・移民受け入れ国」

パラグアイの大豆の収穫の様子!Colheita de soja no Paraguai py cosecha de soja en Paraguay

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=w9o0MCBTbhk

中南米日系農業者との連携交流・ビジネス創出委託事業

中南米日系人
日本から各国に渡った方は1世、その子や孫は2世、3世と呼ばれます。
日系人は誠実な仕事によって信頼を得て、中南米の中で着実にその地位を築いています。今現在、約213万人もの日系人中南米に暮らしています(2015年10月)。
https://nikkeiagri.jp/nikkei.html

『地図とデータで見る移民の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

新世界――移住の地 より

南アメリカ、もどってくる移民と近隣諸国からの移民

約250万人のラテンアメリカの人々は、生まれた国以外のところに住んでいる。おもな行き先はやはりアメリカ合衆国である。南アフリカは、移民送り出し国(ボリビア、ペルー、コロンビア、エクアドルベネズエラ)と、受け入れ国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)が、労働力と富をおぎないあって、完全な域内移住システムを作り上げている。経済危機が生じたときには、この地域が移住の地となり、南アメリカが出身者たちが祖国にもどってきた。それは、資源に恵まれたブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビアが、5パーセント以上の成長率を示しているからである。しかしかつて移民を受け入れる豊かな国だったベネズエラは、政治や経済情勢の悪化から避難民をコロンビアに流出させるようになり、両国の立場は逆転している。

いくつかの移住の動き

南アメリカは1930年代まで、ヨーロッパの人々(イタリア人、スペイン人、ドイツ人、イギリス人、フランス人)が移住してくる地域だった。ブラジルは、1950年まで、日本人労働者を受け入れていた。1939年からは、スペイン内乱の難民がチリにやってきたし、第2次世界大戦後には、ナチ・ドイツの戦犯たちがアルゼンチン、やブラジルに逃げてきた。1970~1980年代には、逆向きの移住がおこなわれた。チリやアルゼンチンの難民たちが、ヨーロッパに向かい、中央アメリカ(ニカラグア)の難民たちは、どちらかといえばアメリカ合衆国に向かった。ピノチェト大統領の独裁が終わると、チリからの亡命者の20~30パーセントが、祖国にもどった。

移民受け入れ国、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ベネズエラ

アルゼンチンはいま、ふたたびアンデスの人々をひきつける移住国になった。しかし、豊かな土壌や地下資源は、獲得競争の的になっている。自然の豊かさを守るために、アルゼンチン英府は、外国人ンによる農地の取得を全国の農地面積の15パーセントまでに制限し、また外国人所有者ひとりあたりの農地所有を1000ヘクタールまでとしている。しかし、社会的発展はまさに破綻状態にあるため、パラグアイボリビア、ペルー出身の移民たちは行き場を失い、よりどころもなく、さまざまな差別を受けている。
ブラジルでは、外国企業によってひき起こされることが多い。アマゾン川流域の森林破壊のせいで、高度技能をもつ者たちが、ポルトガルアメリカ、日本に移住している(祖先が日本人である移住者は日系人とよばれる)。いっぽうで、パラグアイとの国境地帯に開拓者たちを移住させ、そのおかげで世界有数の大豆産出国となった。深刻な社会格差をかかえながらも、ブラジルの高度成長は移民たちをひきつけつづけている。
ベネズエラは豊かな石油資源のおかげで地域全体から移民をひきつけていた(2015年には人口3000万人のうち、コロンビア人500万人)が、政治や経済の混乱により、移民の流れが逆転した。移出民の数が550万人にのぼるベネズエラは、近年最大の移民流出国となっている。
チリは、ペルー人、ボリビア人、アルゼンチン人、コロンビア人が移住してくる国であるが、移民送り出し国でもある(50万人のチリ人が外国で暮らしている)。メルコスール(南米南部共同市場)のさまざまなプログラムによって、移住が容易になっている。

もどってくる移民と近隣諸国の移民

アンデス地方は、30年以上前から、さまざまな問題をかかえている。武装ゲリラ、政治的危機や経済危機、麻薬密輸などだ。ペルーは経済危機の影響を最初に受けた国である。1980年から1990年にかけて、移出民が3倍になった。その10年後には、エクアドル移民が、ラテンアメリカ南端部や、スペインに向かった。スペインでは、エクアドルが第3位の移民出身国となっている。コロンビアは域内の移民の40パーセントを受け入れているが、移民送り出し国でもある(人口の10パーセント)。この3ヵ国の人口の10分の1は、外国に住んでいる。非熟練労働者(家事サービスに従事)や、高学歴の若者たちなどだ。
ラテンアメリカ南端部は、ほぼ完成された移民システムを形成している。域内の移民のほとんどは、南アメリカ大陸出身者だからだ。かつての移住者は、ヨーロッパの人々がとくに多かったが、現在では、労働移民の大部分がアンデス諸国の人々(コロンビア人がベネズエラへ、その後ベネズエラ人がコロンビアへ、ボリビア人やペルー人はチリやアルゼンチンへ)で構成されている。いっぽう、パラグアイ人はブラジルへ移住している。いま、ヨーロッパにいたにいたラテンアメリカの移民たちが、本国にもどっている。そしてスペインやポルトガルなど、ヨーロッパの高学歴の若者たちが、危機の解決策を求めて、言語や既存のネットワークによって親しみのある国々へ移住している。