じじぃの「科学・地球_507_移民の世界ハンドブック・ロシアの在留外国人」

How Diverse is Russia? - Russia's Republics Explained

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VCOEjL5nBUY


Immigration by country of origin in Russia 2021

Mar 3, 2022 Statista
In 2021, Ukraine was leading as the country of origin of immigrants in Russia, with nearly 123 thousand people changing their residence to Russia. All leading 10 origins were former republics of the Soviet Union.
https://www.statista.com/statistics/1203451/immigration-by-country-in-russia/

『地図とデータで見る移民の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

ヨーロッパ、世界のおもな移住先のひとつ より

ロシア、地域的移動システム

ロシアは、アメリカに次いで在留外国人が多い国である(1200万人の移民)。鉄のカーテンが崩壊すると大きな内部移動が起こったが、国家の分裂によってそれは、旧ソ連諸国とロシアで構成される独立国家共同体(CIS)内での国際的な移動となった。中国人の移住もみられた。2012年、ロシア、ベラルーシカザフスタンは移動と就労を自由にし、ピザを廃止する協定を結んだ。2015年1月1日に発足したユーラシア経済連合は、人と財の移動をさらに容易にするものである。2020年には、外国籍を放棄することなくロシア国籍を取得すること(二重国籍)が法律が認められた。

人口の危機

ロシアは、出生率(人口1000人あたりの出生数)は9.1で豊かな国よりも低く、死亡率(人口1000人あたりの死亡数)は15.4で貧しい国よりも高い。人口統計学者から「ロシアの十字架」とよばれるこの現象は、人口問題が気がかりな状況にあることをあらわしている。ロシアの人口は、今世紀なかばには1億人ほどまで落ち込むとみられている。年間70万人から90万人減少しているからだ。高齢者(年間出生数120万人に対して死亡数220万)と移出による人口減少である。ときには中絶が避妊のかわりにおこなわれ(年間170万件)、子どもの遺棄も多い(250万人の浮浪児)。ロシア女性の合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯に産む子どもの数)は1.3だが、次世代の人口を維持するためには、2.1以上でなければならない。
男性が多いのは、男性の33歳からの平均余命が、女性よりも低いことと関係がある。その原因は、アルコール中毒、たばこ中毒、保険制度の悪化などだ。約40パーセントの子どもはシングルマザーによって育てられていて、住宅や雇用の問題も出生率の上昇をさまたげている。2006年にヴラジーミル・プーチンは、子どもをふたり以上産んだ家族に奨励金を出す「母親資本」制度を打ち出した。この結果。出生率は18パーセント上昇した。目標は、合計特殊出生率を1.6にすることである。さまざまな資料によれば、ロシアは2025年までに、人口が700万人から1200万人減少するとみられている。

旧ソ連諸国からの移民

カフカスコーカサス)では、モスクワやサンクトペテルブルクに移住する人々がいまだに多い。ロシア語が話せることや、CIS圏内を自由に移動できる短期滞在制度(1年まで)があることで、移住がしやすいのである。トルコについては、カフカスの一部の人々と共通する宗教をもち、言語も近いが、移住先としては、ロシアやカザフスタンにはおよばない。
カザフスタンは鉱物資源が豊富で建築工事も多いが、人口は1991年から20パーセント現象している。ウズベキスタンウクライナは、CIS諸国でもっとも多くの労働力を提供している国々である(2018年にはウズベキスタン340万人、タジキスタン170万人、ウクライナ130万人)。南カフカス諸国では、結婚のための移住がめだっている。男児を優先する出生前性別選択で女性が少なくなっているためだ(アゼルバイジャンアルメニアジョージア)。しかしカフカスの人々は、ロシア人から「色黒の人」という蔑称でよばれることもある。アフリカ人やアジア人や「スラヴ系ではない顔つきの」ロシア人と同じように、カフカスの人々も、「ロシアはロシア人のもの!」という外国人排斥スローガンを掲げる超国家主義者から、暴力を受けている。ロシアは多民族・多文化国家であるが、社会的な多様性や共生という思想はなかなか根づかない。旧ソ連諸国からロシアに移住した800万人のうち、半数以上は中央アジア出身者である。CIS圏外出身者のほとんどは、中国人である。
いっぽうロシアの世論は、人口が減少傾向にあるにもかかわらず、ロシアが移住者受け入れ大国になることを、あまりこころよく受けとめていない。