じじぃの「科学・地球_497_温度から見た宇宙・生命・宇宙定数・加速膨張する宇宙」

犯人はダークエネルギー?加速膨張する宇宙と宇宙定数

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=E4g-3ECCrNs

70億年前から始まった宇宙の加速膨張


宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス

2014年06月20日 とね日記
●70億年前から始まった宇宙の加速膨張
ダークエネルギー(暗黒エネルギー)は70億年前から始まった宇宙の加速膨張によって予想されるようになった。
それが何なのかはまだ解明されていない。加速膨張はダークエネルギーの斥力的な重力による。70億年前から始まった宇宙の加速膨張は標準光度の超新星爆発を使った距離測定(ハッブル定数の測定)によって明らかになった。1998年のこと。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6f36e8eedba5ee63a4f919d30a2cb20

『温度から見た宇宙・物質・生命――ビッグバンから絶対零度の世界まで』

ジノ・セグレ/著、桜井邦朋/訳 ブルーバックス 2004年発行

第5章 太陽からのメッセージ より

基本の元素:水素とヘリウム

宇宙初期の物語は、空間の拡大、時間の経過、または、温度の低下を用いて語っていくことができる。即ち、定規、時計、そして温度計である。私たちの宇宙では、これら3つの量は同じ物語を語ってくれる。空間は時間の経過に応じて広がっていくし、それにつれて温度も下がっていく。これら3つのうちどれか1つだけ用いればよいのだが、宇宙論者はよく温度を好んで使う。

3Kの光子、2Kのニュートリノ

ウィーンの法則には、もう1つの面白い特徴がある。それは、波長が1000倍に増加して周波数が1000分の1に小さくなっても、温度を1000分の1にするだけで同じ曲線が得られるという特徴である。強度が最大となる周波数は温度に比例することからピーブルスは、最大値を1000倍だけ動かせば、温度を1000倍した時の曲線が得られるということを示した。ペンジーアスとウィルソンが観測した光子を専門的に正しく表現すると、「3000Kの熱分布由来の光子の波長が、1000倍に引き伸ばされたもの」ということになる。これを簡単に表現する言葉が、「3K光子」である。
ペンジーアスとウィルソンの測定は、強度対周波数の曲線状の一点についてだけのもので、直感に基づく理論の正しさを示唆したにすぎなかった。この論争に終止符が打たれるのは、その後25年かかった。

ビッグバン、ビッグクランチ

1960年代中頃、3K放射が観測されたことによって、科学者たちは、これで初期宇宙の複雑さを解き明かすことができると信じた。こうした確信は水素とヘリウムの比についての予想が登場するとともに急速に高まり、それが現在まで続いている。現在、角度に対する温度差の微妙なパターンの調査が、もっと高い精度で行なわれている。それは、特殊な望遠鏡、気球、それに人工衛星によって行われている。
現在建設中の新しい装置は、さらに時間をさかのぼることを可能にしてくれるであろう。ビッグバンから100分の1秒後――1000億Kのとき――は、宇宙の壮年期だと言えよう。そこで研究者たちは、もっと以前の宇宙の揺籃期について知りたいと思っている。彼らは、どんどんと高温に向かってあらゆる温度領域を征服し、無限の温度にまでたどろうと考えている。

宇宙は膨脹し続けるのだろうか、それとも、将来のビッグクランチに向けて収縮していくのだろうか。

宇宙は冷え続けるのだろうか、それとも「ビッグロースト」へ向かうのだろうか。このような大災厄は今から150億年以上経たなければ起こらないが、私たちは間もなく宇宙の最終的な運命を知ることになるであろう。
飛びあがって二度と戻ってこないロケットもあれば、みごとなアーチを描いて戻ってくろロケットもある。ロケットが2つの軌道のどちらを取るかは、2つの因子によって決まる。1つはロケットの初速であり、もう1つは地球の質量である。同じようにこの宇宙の未来は、膨張速度と質量の平均密度によって決定される。前者は既知であり、後者は10年以内には求まることであろう。
現在支持されている宇宙論のモデルによれば、ビッグローストはぎりぎりのところで避けることができる。地球の重力場を脱出できるぎりぎりの速度のロケットと似た状態に、私たちは置かれているのだ。宇宙論的な表せば、宇宙は永久に外側に向かって飛び去り続けているのである。
「平坦な宇宙」と呼ばれるこうした状態を実現するために必要な物質の量のうち、やっと数%を目に見える物質、即ち、星とチリとが担っている。いまだ素性の明らかでない物質は、必要の量の30%を担う。この物質は光を放射しないので、望遠鏡では見つかっていない。60%以上に達する残り分は、宇宙定数により与えられる。この定数は、最初アインシュタインが、当時都合のよかった、膨張も収縮もしない定常宇宙というモデルを説明するために考えた一種のエネルギーである。しかし後に宇宙が膨張しているという証拠が得られて、アインシュタインは宇宙定数を棄て去った。
驚くべきことだが、今またこの定数が必要となってきた。それは、宇宙を平坦にするような特別な膨張のしかたを実現する上で、この定数の値がちょうど合致するからだ。宇宙定数は再び不必要になるとする予測もあるが、私はそれには賛同できない。

もし宇宙定数が存在すれば、宇宙の膨張は加速することになる。

今まで述べたことで、現在の宇宙は説明できる。しかし、どのようにして宇宙が膨張を始めたかについては、何もわかっていない。宇宙の膨張は、面白い温度の問題を引きだしてくれる。150億年の旅をしてきた光子は、あらゆる方向から私たちのところにとどくが、その時2.735K分布という過去痕跡をもたらしてくれる。
宇宙はどうして、どこもかしこも同じ温度で始まったのだろうか。宇宙はある瞬間に始まったのだが、実はどこかある一点から始まったのではない。宇宙はあらゆるところから始まり、空間自体がそれ以後、ずっと広がり続けてきているのだ。今、目の前を右に進んでいった光子と左に進んでいった光子は、今初めて出会った。まえに一度も出会ったことがないとしたら、どうしてこの2つの光子は同じ温度をもつのだろうか。
いちばん広く受け入れられている解答は、アラン・グースという物理学者が20年ほど前に考案したものである。彼は、宇宙のごく初期には、極めて小さな領域が極度に速く膨張したと考えた。グースは、この状態をインフレーションと呼んだ。この状態が終わると、加熱された宇宙は通常の膨張様式に落ちついたが、この時も誕生した当時の記憶をとどめていた。右向きと左向きの2つの光子が等しい温度になる条件は、この宇宙の初期に成立し、以後そのまま残ったのである。