じじぃの「科学・地球_491_温度から見た宇宙・生命・地球外生命・エウロパ」

Europa Clipper On Jupiter's Ocean Moon Europa

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=sD6BNag4Xys

木星の衛星エウロバ NASAが開発した海中探査ロボット


NASA、「エウロパ」探査用ロボットを準備

Feb 12, 2020 American View
米航空宇宙局(NASA)は木星の衛星「エウロパ」で生命を探すミッションを計画中だ。
氷で覆われたエウロパの表面を移動できる探査ロボットをこのたび製作した。
「BRUIE」は氷下浮力型探査ロボットだ。動きは敏捷で、水中を浮かんで移動する。ぎざぎざの歯のある車輪が氷で覆われた表面をしっかりと掴みながら進む。耐水性があり、氷下の水中では上下に回転しながら進むことができる。
https://amview.japan.usembassy.gov/nasa-prepares-robot-to-traverse-jupiters-moon-europa/

『温度から見た宇宙・物質・生命――ビッグバンから絶対零度の世界まで』

ジノ・セグレ/著、桜井邦朋/訳 ブルーバックス 2004年発行

第4章 極限状況下の生命 より

氷の下、3キロメートルの生命

火星と外惑星たちは、地峡に生きる生命にとっては冷たすぎるし、太陽からも遠すぎる。だが、熱水噴出口で見つかった生命から私たちは、もしエネルギー源が存在し、水を液体として維持するほど十分に温度が高ければ、日光の下でなくても生命が存在することを知った。
地球以外に生命を宿していそうな天体の有力な候補は、木星の衛星の1つであるエウロバである。木星の他の衛星を見てみると、カリストには水があるようだが、ほとんど熱的な活動がない。ガニメデでは、熱的な活動が大きいが、水がほとんど、あるいはまったくない。しかし、第4の衛星であるイオは、無視できない存在である。
この星のあまりに激しい火山活動は、私たちの想像を超えている。その大きなカルデラは、約2000度Cの溶岩を地表に噴きだしているが、それは過去30億年に地球で見られた溶岩のいずれに比べても温度が高いのである。イオの火山活動は、地球の過去の姿を垣間見せてくれるものかもしれないが、イオが生命に優しい環境を与えてくれるとは考えられない。つまり、木星の衛星のいずれかに、何らかの生命が誕生した可能性はあるが、確実に生命が存在したと言うことはできない。
ガリレオは1610年に、木星に4個の衛星を発見し、大いに驚嘆したのだった。これらの衛星は、地球が太陽の周りをめぐっているとするコペルニクスの考え方を、彼に確信させた。カリスト、エウロバ、ガニメデ、それにイオが木星の周囲を回っているとしたら、地球が太陽の周りをめぐっていてもおかしくない。地球が宇宙の中心でなかっただけでなく、生命の中心でもなかったということを、この4つの衛星が示してくれたとしたら、何と皮肉なことではないだろうか。そしてその発見はまさに、木星の衛星を初めて観測した者の名に因んで名づけられた”ガリレオ”探査機によりなされるのがふさわしいはずだ。
さまざまな検出器を備えたこの探査機は、4年間にわたって木星の周囲を20回も旋回するという旅を最近終えた。この探査機は、4つの大きな衛星を念入りに観測し、最接近した時には、約200キロメートルのところまで近づいたのである。
木星の衛星は生命を維持できるのだろうか。ガリレオ探査機はエウロバを目指したのだが、この衛星の氷でできた地殻の平均温度は、赤道でマイナス160度Cであり、両極ではさらに約50度Cも冷たいのである。この探査機の撮影した写真は、この衛星の表面に深い裂け目のあることを示しているが、これは、湧き上がる熱的な活動により大地が裂かれたことを示唆している。表面には暗い尾根が見え、そこからは、奥深くの流動性鉱物が流れだしているようである。
エウロバの表面のあちこちに、北極海に浮かぶ流水に似た、ぎざぎざの盛り上がりが見られる。ここでも、内部に熱的な活動があることが示唆さされている、彗星や隕石の衝突により作られたクレーターが存在しないことには、こうした熱的活動の存在を確実視させる。地下の熱的活動が表面の形を作り変えていることを示唆しているからだ。
これらすべての手掛かりは、エウロバの核で発生していることを指し示しているが、果たしてそれは液体の水から深い海を維持するのに十分なのだろうか。おそらく答えはイエスだ。が、実際に探査機が、水のしぶきや地価の海洋で起こる水流を見つけるまでは、断言はできないのである。

太陽系内で地球外生命を要する天体観測は、木星の4惑星と火星だけではない。土星の衛星タイタン、海王星の衛星トリトン、さらに冥王星カロンですら、地球外生命をもっている可能性がある。太陽以外の星々を周回する惑星が、ここ10年の間にいくつか見つかっている。中心の星が太陽と同じような性質ならば、これらの惑星、あるいは、これらの惑星衛星のどれかに生命が存在しないとはいいきれない。フロー万・ダイソンは、火星と木星の間にある多数の小惑星にも、生命が存在する可能性があると言っている。
こうした多くの謎に対する答えは、近くの惑星や衛星をより精密に探索することによって、今後何十年かの間に得られるだろう。興味深いことだが、探査が拡大し、遠くまで観測ができるようになったとしても、重要なデータは地球自身から得られるであろう。こうした情報は、誰も予想もしていないところに横たわっているものである。