じじぃの「土星の衛星・エンケラドゥスに生命が見つかったら?地球外生命」

(いちからわかる!)土星の衛星に地球外生命の可能性?

2017年5月13日 朝日新聞デジタル
■噴(ふ)き出す熱水から、微(び)生物生息の痕跡(こんせき)が見つかるかも
コブク郎 土星の周りを回る衛星(えいせい)に生物がいる可能性があるんだって?
A 「エンケラドゥス」のことだね。厚い氷に覆(おお)われた表面の下に、熱水の海が広がっている。南極近くでは、90度以上の熱水が噴(ふ)き出して…
https://www.asahi.com/articles/DA3S12934760.html

『地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』

小林憲正/著 中公新書 2021年発行

第5章 ウォーターワールドの生命 より

土星の衛星エンケラドゥス

エウロバにつづく太陽系第2にウォーターワールド発見は劇的でした。1997年に米欧共同で土星探査機は打ち上げられましたが、それは土星の4つの衛星を発見したジャン=ドミニク・カッシーニ(1625~1712)の名前をとり、カッシーニと名づけられました。カッシーニはおよそ7年間の飛行の後、2004年6月に土星に到達し、土星やその衛星たちの探査をつづけました。土星には現在80個以上の衛星が見つかっています。本家カッシーニ土星の4つの衛星(イアペトゥス・レア・ディオネ・テラィス)と土星の輪の空隙(カッシーニの空隙)を見つけましたが、探査機カッシーニも負けじとダフニスなど6つの衛星を発見しました。2005年1月、カッシーニ土星最大の衛星タイタンに接近、着陸機ホイヘンスをタイタンに着陸させました。このタイタンの探査については6章に詳しく述べましょう。
カッシーニは、タイタンの第1回の訪問の後にエンケラドゥス(英語ではエンセラダス)(画像参照)に向かいました。エンケラドゥスは1789年にウィリアム・ハーシェル(1738~1822)により発見された直径約500キロメートルの衛星で、土星の衛星としては6番目の大きさです。土星の輪はいくつかに分かれていますが、主要なものは内側からD環、C環、B環、A環、F環、G環、E環と名付られています。エンケラドゥスはその最も外側のE環の中を公転しています。1981年ヴォイジャー2号はエンケラドゥスの写真を送ってきましたが、その表面はエウロバなどと同様、水の氷に覆われ、太陽系天体の中で最大の反射率(アルベド)を示すこと、つまり1番白いことがわかりました。まるで新雪に覆われた白銀の世界です。このことからエンケラドゥス土星のE環の材料を供給し、それがまたエンケラドゥスの表面に降り積もっている可能性が考えられました。カッシーニエンケラドゥス探訪はこの謎に何らかのヒントを与えてくれるのでは、という期待のもとに行なわれました。
2005年2月に最初にエンケラドゥスに接近した時は特にめぼしいものが発見させませんでした。しかし、3月と4月に再度500キロメートルくらいまで接近したとき、まず、磁力計が反応しました。何かがあるらしい。そこで、7月にはさらに近く、175キロメートルくらいまで接近しました。このときは、さらに質量分析計や赤外分光計などさまざまな装置が興味深いシグナルを検知しました。カッシーニエンケラドゥスの南極近くに虎の縞(タイガーストライブ)と名づけられた縞模様があること、その領域は赤道付近よりも温度が高いこと、そしてエンケラドゥスから宇宙に向けて様々な物質が噴き出していることを見つけました。さらに虎の縞からプルーム(水煙)が噴き出していることも確認されました(画像参照)。
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水が氷の割れ目から噴き出しているのが確認されたのはエンケラドゥスが最初でした。これは氷の下に液体の水が存在する動かぬ証拠です。

さらに、有機物も確認されたことから、エンケラドゥスは現在も生命が存在する可能性に関していえば、火星やエウロバをもしのぐ天体といえるでしょう。エウロバの場合、有機物がまだ検出されていないのに対し、エンケラドゥスは、ブルーム中に分子量100を超すような大きい有機物の存在が確認されているのです。

また、シリカの小さい粒が存在することは、エンケラドゥスの海底にすくなくとも100℃以上の熱水活動が存在することを意味します。観測データからエンケラドゥスの内部海は南極域など限られたものとも当初は考えられましたが、その後のカッシーニの観測結果から、海が衛星全体に広がっている可能性が高いとされています。