じじぃの「科学・地球_296_地球に住めなくなる前に・世界人口(2050年)」

The Overpopulation Problem In The Future (2050)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-Ax03FpfQRk

Future World Populations (2050)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=YJjz7LVVl8c

『私たちが、地球に住めなくなる前に』

マーティン・リース/著、塩原通緒/訳 作品社 2019年発行

第1章 人新世の真っ只中で より

脅かされる生態系と臨界点

50年前、世界の人口は約35億人だった。現在では、およそ76億人と推定されている。しかし増加のペースは以前ほど速くない。実際、全世界で見て年間出生数がピークに達したのは数年前で、今では減少に転じている。にもかかわらず、世界人口はまだまだ増えると予測され、2050年までには90億人前後、あるいはそれ以上になると見積もられる。これは発展途上国の大半の人がまだ若く、子供を持っていないためであり、加えて、これらの人々の寿命が延びることも見込まれるからだ。発展途上世界の年齢ヒストグラム[柱状グラフ]は、今後ますますヨーロッパのそれに似てくるだろう。現在、最も成長しているのは東アジア諸国で、いずれ全世界の人的資源と金融資源がここに集中してくる――4世紀にわたった北大西洋の覇権がついに終わりを迎えるのだ。
人口統計学者の予測によると、都市化は今後も進み、2050年までには全人口の70パーセントが都市に住むようになるという。ナイジェリアのラゴス、ブラジルのサンパウロ、インドのデリーなどは、早くも2030年までに人口が3000万を超すと見込まれる。そうしたメガシティを不穏なディストピアにしないようにすることが、これからの統治の大きな課題になるだろう。
現在のところ、人口成長についての議論が十分に尽くされているとは言いがたい。理由のひとつは、大量飢餓というこの世の終わりのような予言――ポール・エーリックが1968年に著した『人口爆弾』や、民間研究団体「ローマクラブ」の公式見解で言われていたようなこと――が、結局は外れだったからかもしれない。また、人口成長という問題には触れないほうがいいと見られている面もある。1920年代や30年代の優生学、インディラ・ガンディーのもとでのインドの政策、もっと最近では中国の強硬な一人っ子政策との結びつきが、この問題にどうしても影を落としているからだ。ともあれ、食料生産と資源採取が人口増加の後れをとらずに進んできたのは確かである。飢饉は今でも起こっているが、それはおもに紛争や不均衡分配が原因であって、全面的な欠乏のせいではない。
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イノベーションの恩恵を全世界にあまねく行き渡らせようとするなら、私たち全員の生活様式が変化するのは必至だろう。ただし、それは必ずしも忍耐が求められるという意味ではない。それどころか2050年には、今日の西洋人が享受しているのと少なくとも同じぐらいの潤沢な生活の質を、世界中の人が得られていることだってありうる――テクノロジーが首尾よく発展し、賢く配置されているならば。かつてのガンディは言った。「すべての人の必要を満たすには十分でも、すべての人の強欲を満たすには十分でない」。彼のこの信念は、必ずしも禁欲を呼びかけるものではない。むしろ、天然資源と自然エネルギーの節約につながるイノベーションを介して、経済成長を促そうと呼びかけるものだ。
「持続可能な開発」という言葉が世に広まったのは1987年、ノルウエー首相のグロ・ハーレム・ブルントラントを委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」が。これを「将来の世代がその時点での必要を満たせなくなるようにならない範囲で、現在の――とくに貧困層の――必要を満たせるようにする開発」と定義してからのことだ。この目標に達するための「署名」を拒む人はいないだろう。今日の世界の恵まれた社会が享受している生活様式と、それ以外の社会が甘受している生活様式との差が、2050年までには埋まっていることを誰もが望むはずである。しかし欧州と北米がたどってきた産業化への道を発展途上国がそっくりそのままたどるなら、この未来は実現しない。今日の発展途上国は。もっと効率的で無駄のない生活様式に一足飛びに移行する必要がある。ここでめざすべきは、反テクノロジーではない。逆にテクノロジーをもっと活用することが必要である。ただし、それは適切に方向づけられたテクノロジーでなくてはならない。そうして初めて、必要とされるイノベーションをテクノロジーが下支えすることができるのだ。そして先進国も、同様にこの種の移行を果たさなくてはならない。
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いずれにしても、2050年以降には世界人口が増加に向かうのではなく、減少に向かうことを祈るしかない。さもないと、たとえ地球が90億人を(良好な統治と効率的なアグリブジネスによって)養えるとしても、また、消費財が(たとえば3Dプリンティングなどの技術を使って)もっと安価に生産できるようになり、「クリーンエネルギー」が十分に作られるようになったとしても、人口過密と緑地現象によって食の自由には制限がかかり、生活の質は落ちることになってしまうだろう。