じじぃの「土星の衛星・タイタンに生命が見つかったら?地球外生命」

Dragonfly: NASA's New Mission to Explore Saturn's Moon Titan

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xn3-0a19sC8

土星の衛星タイタンを探査するドラゴンフライ計画

彗星サンプルリターン対土星の衛星ドローン 制したのは「ドラゴンフライ」

2019/6/29 Yahoo!ニュース
2019年6月28日、NASAは太陽系探査計画「ニューフロンティア」の第四弾として、土星の衛星タイタンを探査するDragonfly(ドラゴンフライ)を選定したと発表した。
ミッションを実施するのは、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)。最終候補のもう一方は、NASA ゴダード宇宙飛行センターが提案した彗星物質のサンプルリターン計画CAESAR(シーザー)だった。
https://news.yahoo.co.jp/byline/akiyamaayano/20190629-00132076

『地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』

小林憲正/著 中公新書 2021年発行

第6章 タイタン 生命概念の試金石 より

土星最大の衛星タイタン

タイタン(ラテン語読みではティタン)は直径5150キロメートル、土星系では最大の衛星です。太陽系の中でも木星の衛星ガニメデに次ぐ2番目の大きさで、惑星の水星よりも大きいのです。その発見は1655年にオランダの天文学者クリスチャン・ホイエンス(1629~1695)によるもので、ガリレオによる木星の4大衛星(ガリレオ衛星)の発見の45年後です。当初、タイタンはガニメデよりも大きいと考えられていました。これはガニメデが非常に薄い大気しか持たないので対し、タイタンが濃い大気を持っており、ふくらんで見えたからです。太陽系では、濃い大気をもつ惑星はいくつかありますが、濃い大気を持つ「衛星」はタイタンのみです。

タイタン表面に海?

タイタンは厚い靄を含む大気で覆われているため、ヴォイジャー1号はタイタンの表面を直接見ることはできませんでした。しかし、分光観測などから、タイタンが極めてユニークな天体であることがわかり、その大気や表面について議論が巻き起こりました。タイタンの地表温度のマイナス179℃というのは、タイタン大気に含まれているメタンが凍りつく温度よりも高く、気体になる温度よりも低いのです。ということは、タイタン表面でメタンが液体になっている可能性が考えられます。タイタンには液体メタンでできた海が存在するのではないでしょうか。そして液体が存在するならば、タイタン大気中に様々な有機物も存在することから、生命が存在する可能性も考えられるのではないでしょうか。

タイタン大気中の複雑な有機物、ソーリン

生命の存在を考える時にまずは生命分子の活動の場としての液体(特に水)の存在が重要であること、そしてその条件にあてはまる太陽系天体は意外に多いことを第5章で述べました。その条件を満たした上で、次に問題になるのが有機物の有無です。エンケラドゥスは氷の割れ目から噴出するプルーム中にさまざまな有機物が検出され、「水・有機物・エネルギー」の生命存続の3要素を満たしている点で注目されていますが、有機物に限っていえば、タイタンが豊かなことは他のウォーターワールド天体の中で群を抜いています。大気中に比較的多く存在するメタンからは炭素2個のアセチレンやエタン、炭素3個のプロパンなどのさまざまな炭化水素が生成することは容易に予想できます。ヴォイジャー探査機による上空ぁらの赤外分析でもそれらは確認されていました。また、窒素とメタンからはシアン化水素(HCN)などのシアン化合物が生成することが期待され、実際に検出されていました。では、それよりももっと複雑な有機物、さらにはアミノ酸などの生命の基となるうる有機物は存在するのでしょうか。ヴォイジャー探査の後、多くの研究グループが模擬タイタン大気を用いた実験を行いました。

次世代のタイタン探査

カッシーニ探査は1997年に打ち上げられ、2005年には切り離さたホイヘンス着陸機が無事にタイタン表面に到着しました。カッシーニ本機もタイタンに接近し、写真撮影や観測を行いました。さらに、カッシーニ土星本体やエンケラドゥスなどの多数の衛星を観測し、エンケラドゥスから有機物やシリカを含む水が噴出していること(第5章)など、多くの成果が得られました。カッシーニ本機は、2017年9月15日、土星の大気圏に突入して燃え尽きました。これはカッシーニ本機には地球微生物が付着している可能性があり、これがエンケラドゥスやタイタンに持ち込まれて生物汚染を引き起こすことを防ぐためでした。
    ・
2019年6月、私はシアトルで開催されていたアストロバイオロジー科学会議(AbSciCon、アブサイコン)に出席していました。その会場で、NASAの次期大型ミッションが決定された、との発表がありました。選定されたのはドラゴンフライ(とんぼの意味)計画と呼ばれるタイタンタイタン探査計画。すぐさま、計画責任者(PI)のエリザベス・タートル博士(ジョンズ・ポプキンス大学)や副PIのネリサ・トレイナー博士(NASA)らが壇上に集結し、会場は歓声につつまれました。この計画に限らず、昨今のアストロバイオロジー研究においては女性の活躍がめだっています。
ドラゴンフライ計画では図(画像参照)のような足と羽をもつ昆虫に似た着陸機が、タイタン表面をひょいひょいと飛び跳ねながら探査する予定です。ホイヘンスが着陸地点から動けなかったのに対し、様々な場所を調べられるのがメリットです。湖に飛び込むことは想定されていませんが、メタンの雨により有機物が集められていると考えられる低地を訪れ、濃集された有機物の分析をめざしています。

2027年に打ち上げられ、2036年にタイタンに着陸する予定で、生命の徴候や化学進化の痕跡が見つかるか今から成果が楽しみです。