じじぃの「木星の衛星・エウロバに生命が見つかったら?地球外生命」

2010 - The Odyssey Continues

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2O1GoZrZPew

木星の衛星

プラネタリウムの広場

わかっているだけで63個の衛星(月)をもつ木星ですが、ガリレオ衛星はとりわけ大きく、木星に近いほうからイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの名前がついています。
http://www.katch.ne.jp/~taka-ota/hiroba/planet/gallery/2006_natsu/2006_natsu.html

地球外生命体の存在が更にアップ?木星の衛星エウロパに巨大地底湖

2011年11月20日 カラパイア
2009年11月、木星の衛星エウロパの海に、魚のような生命体が生息している可能性があるというニュースを紹介したが、その可能性を裏付けるかのような論文が16日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。
それは、謎多き木星の衛星エウロパ(Europa)の地下に、北米の五大湖と同じくらいの大きさの地底湖が存在する可能性を示唆したものだ。
https://karapaia.com/archives/52049894.html

『地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』

小林憲正/著 中公新書 2021年発行

第2章 生命の誕生は必然か偶然か より

生命とは何か

地球外生命を探すとしたら、まず、何を生命とよんでいいのかが問題になります。生命とは生物がもつ性質ですが、生命を定義するのは極めて難しく、科学者にとってその定義もさまざまに変わります。オーストリアの物理学者で量子力学の父とよばれるエルヴィン・シュレディンガー(1887~1961)は、1933年にノーベル物理学賞を受賞後、生命とは何かに興味を持ちました。彼はその著書『生命とは何か』(1944)の中で、生命を「負のエントロピーを食べていきているものである」と定義しています。しかし、この定義に従って地球外生命を探すのは大変そうです。NASAは20世紀末以降、地球外生命の発見を惑星探査の大きな目的に掲げています。現時点でのNASAの生命の定義は、米国ソーク研究所教授のジェラルド・ジョイス(1956~)のアイデアに基づき、「ダーウィン進化が可能な自立した化学系」としています。進化ということにかなり重きを置いているのですね。

第5章 ウォーターワールドの生命 より

エウロバ表面の謎

図(ヴォイジャー2号が撮影した画像)のエウロバとガニメデの写真を見比べてみましょう。なお、カリストの画像は、ガニメデによく似ていました。右のガニメデの画像には白い点々が見えますが、これは隕石衝突によりできたクレーターであり、月や火星、さらに水星などの画像でもおなじみのものです。太陽系の天体は地球も含めてその誕生以来、たび重なる隕石の爆撃を受けてきました。つまり、ガニメデの画像はヴォイジャーの訪問以前から予想されていたとおりのものでした。左のエウロバのものは、ガニメデと雰囲気がかなり異なります。エウロバ表面は明らかに水の氷で覆われており、その点ではガニメデ・カリストと同じなのですが、クレーターがほとんど見られないのです。クレーターの代わりに目立つのは、マスクメロンのような縞模様です。なぜ、クレーターがなくて、代わりに縞模様があるのでしょうか。いくつか可能性が考えられましたが、そのひとつが氷の下に液体の水が存在するというものでした。液体の水が縞模様の部分から噴き出せば、エウロバの表面に再び凍りつくため、エウロバの表面の氷は新しくできた氷で覆われます。このため、古い氷の表面にあったクレーターも覆い隠されてしまうでしょう。
エウロバなどの氷衛星の氷の下が融けているのでは、というアイディアは、1971年にジョン・ルイスマサチューセッツ工科大学)が論文で提案していましたが、あくまでも物理的な可能性に過ぎませんでした。その後、1975年にはヴァチカンのガイ・コンソルマーニョ、1979年にはNASAのベントン・クラークといった科学者がエウロバの氷の下の海と、そこに生命がが存在する可能性を発表しました。この1970年代末は、地球の深海底での海底熱水噴出孔とその周辺の生態系の発見がなされた時期です。そして、1980年にはリチャード・ホーグランド(1945~)が、一般向けの科学雑誌「スター・アンド・スカイ」でエウロバの氷の下の海と生命の可能性を解説しました。なお、ホーグランドは、NASAが宇宙人の情報を隠蔽しているという訴訟を起こしたり、火星に人面岩があると主張したりした、お騒がせ男として有名です。
ホーグランドの記事をSF作家アーサー・C・クラーク(1917~2008)が読みました。クラークは、SF小説の金字塔で、スタンリー・キューブリックにより映画化もされた『2001年宇宙の旅』を1968年に刊行しましたが、その続編『2010年宇宙の旅』を1981年から執筆していました。そこにエウロバに生命が存在するかもしれないというアイディアを盛り込んだのです。前作『2001年宇宙の旅』で疾走したディスカバリー号を探しに米国・ソ連の共同チームが木星に向かうのですが、これを出し抜く形で中国の木星探査機がエウロバに水の補給のために着陸します。すると、その氷の下から探査機の光に引き寄せられた大型生物が現れ、探査機を破壊してしまうのです。また、エピローグにおいては、コンピュータHALが地球人に向けて「エウロバ以外はすべてあなたたちのものだが、エウロバには決して着陸してはならない」というメッセージを発します。その後、木星が恒星ルシファーとなり、エウロバが温暖化してエウロバ生物は知的生物への進化が促進されます。クラークはエウロバ生物は、氷を通して海に差し込む光を利用する光合成生物を想定していました。また、こn小説は『2010年』というタイトルで映画化されましたが、映画では中国の探査機がエウロバの生物に襲われるエピソードは扱われていません。

氷の下の生物圏?

エウロバの直径は約3200キロメートルで、地球の約半分です。エウロバの氷の厚さはまだよくわかっていませんが、薄い氷のモデルでも数キロメートル、厚い氷のモデルだと100キロメートルくらいになります。このため、太陽光は氷の下まではとても届きそうにもありません。その下の液体の海の体積は厚い氷のモデルを採用しても地球の海の体積を凌駕します。

エウロバの表面温度は平均でマイナス160℃と極寒です。氷の下の海水の温度は高い圧力や塩の存在により凝固点が下がるため、氷点下の温度でしょう。液体の水があるといっても、そのような暗く寒い世界に生物が生存できるのでしょうか。