じじぃの「科学・地球_481_温度から見た宇宙・生命・恒温動物・一定の温度」

恒温動物と変温動物のちがい

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=k_UgNGF72cY


変温動物と恒温動物の違い【生物と体温の関係。生物はなぜ冬眠するのか?】

2018-10-05 ネイチャーエンジニア いきものブログ
変温動物と恒温動物の違いは何?
https://www.nature-engineer.com/entry/2018/10/05/194923

『温度から見た宇宙・物質・生命――ビッグバンから絶対零度の世界まで』

ジノ・セグレ/著、桜井邦朋/訳 ブルーバックス 2004年発行

第1章 37.0度C より

一定の温度

私たち哺乳類と鳥類は、ともに一定の体温を維持するという性質をもっている。いわゆる温血動物なのである。もちろん温かいのは血液だけではないし、それだけで動物をきちんと分類できるわけでもない。生物学上の区分は、恒温動物(homeotherms)と変温動物(poikilotherms)である。homosは”同じ”、poikilosは”可変”、thermeは熱とか温度を意味するギリシャ語である。
恒温動物の哺乳類や鳥類は高度の代謝系を有し、内部で熱を発生し、体温を一定に保つ精密な冷却機構を備えている。一方、哺乳類や鳥類以外のすべての物質からなる変温動物は、このような機構をもっていない。だが、この定義には例外がある。例えば、いくつかの恒温動物は、冬眠する時に体温を下げるのである。しかしながら、この分類法は、恒温動物が進化してきた理由を考える際には十分であろう。体温を一定に保つという機構は、洗練された制御機構をもつ複雑な脳を必要とするため、既知の生物種の中でごくわずかな種が採用できるにとどまったのである。
恒温動物がなぜこのような機構を獲得したかについては、多くの仮説があるが、現在のところ、これだという唯一の解答はまだでていない。
ある種の動物は、初期の水生動物の段階から陸上生活への移行の時に一定の体温を保てるようになったようである。水中では生物は、天候の変化からおおむね守られている。特に、深海の温度はかなり一定に維持されている。これとは対照的に、地上の生物たちは、昼夜、晴雨、あるいは、風や嵐を経験しながら、四六時中、温度の変化を受けている。
さらに、地上の動物たちの多くは、複雑な決断を急いでしなければならないのである。
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ライオンに追いかけられながら、決断を積み重ねている祖先の例に戻ると、彼(彼女?)は、脚で大地を駆けながら腕で木によじ登ろうとは考えないだろうし、まして、何かつまみ食いするのにちょうどいい時期だなどとも考えない。積み重ねられた小さな決断が、速く、しかも信頼できるものになればなるほど、生き残りと次世代に自分の遺伝子を残すチャンスは増える。脳の温度が一定であることが、こうした過程を容易にしてくれているものと思われる。その一方で、ライオンも状況に応じて決断を積み重ね、原始人を追いかけることに力を尽くしていることだろう。
しかしこの例から、食うものと食われるものとの関係が築かれるのには、複雑な体温調節機構が不可欠だと言いたいわけではない。それは明らかに正しくない。人間やライオンのような生き物の脳は、一定の温度で最もうまく働くのだが、このような複雑な脳をもつにいたった経緯は、特異なこみいった理由があるのである。
体温を一定に保つ機能が進化したのは、脳の温度を一定に保つためだけではない。一般に化学反応は、温度が上がるのに応じて速くなるので、体温のサーモスタットを高温にセットするほうが、ある段階までは、より活発な活動が可能となる。しかし、余分な熱が発散されなくなり、情報があまりに急激に入ると、システムはこわれてしまう。過去数百万年にわたって人類は、他の哺乳類や鳥類と同じく、37度Cの辺りで自分の体が最も有効に機能することを見出してきたのだと思われる。
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約20度Cの部屋で私たちは気持ちよく感じるというのと、私たちの体温が37.0度Cになったのは、同じ理由であると言う人もいる。およそ200万年前に、人類は、1日の平均気温が20度C台前半だったアフリカの地方に出現したのだ。37度C程度の体温は、このような機構もとで狩人にして採集者だった人々の熱の散逸を最適なものにしてくれるのである。
普通に活動していて生じる熱の発生速度と、周囲が20度C台前半の時に体が熱を放出する速度は、計算すれば産出できる。どちらも体温によって決まり、大雑把な計算では、体温が37度Cの時に、これら2つの速度がおおむね一致することを示している。つまり、この温度のときに発生する熱と出ていく熱が等しくなるのである。後に、人類は毛皮を身にまとったり、火をおこすというユニークな能力により、熱的に許容しうる生活圏を寒冷地にまで拡大したのであった。
だが、気候に対するこのような適応は、私たちが37.0度Cの体温をもつ理由のごく一部にすぎない。私たちと大きく異なる進化をたどった鳥類や哺乳類は、大体において、私たちと同じ体温で安定している。恒温性の主な理由は、複雑な化学変化に対する適応に関わっている。これらの化学変化は、私たちや動物たちが生きていくうえでの、複雑な諸活動を可能にしてくれているのである。