じじぃの「科学夜話・グラフ理論・ケーニヒスベルクの橋と腎臓移植!すごい数学」

ケーニヒスベルクの7つの橋

2020.07.30 ハロー!パソコン教室
ケーニヒスベルクにはプルーゲル川という大きな川が流れています。
その川には大きな中州が2つあり、両岸そして中州同士が橋で結ばれていました。
ある人が言いました。
「プルーゲル川の中州にかかっている7つの橋を、同じ橋を2度通らずに、全て通ることはできるだろうか」
http://hello-ayagawa.jugem.jp/?eid=128

生体ドミノ肝移植 ~ 14時間45分の命のリレー ~

●生体ドミノ肝移植とは,  
健康なAさんの肝臓の一部を切って病気のBさんに移植し,そこで取り出されたBさんの肝臓を,より重い病気であるCさんに移植するものです。
移植が連続して行われるので,このように呼ばれています。肝臓には切っても元の大きさに戻る復元力があるため,生体(生きている人)からの移植が可能なのです。
https://www.kyushu-u.ac.jp/oldfiles/magazine/kyudai-koho/No.8/topix1.htm

『世界を支えるすごい数学――CGから気候変動まで』

イアン・スチュアート/著、水谷淳/訳 河出書房新社 2022年発行

4章 ケーニヒスベルクの腎臓 より

腎臓移植のチェーン

では、ケーニヒスベルクの橋と腎臓移植の間にはどんな関係があるというのだろうか? 直接的には関係はあまりない。しかし間接的なつながりはある。ほとんどのドナーが近親者にしか自分の腎臓を提供したくなくても、ドナーとレシピエントをマッチングさせることのできるある強力な方法が、オイラーの論文をきっかけに生まれたグラフ理論によって可能となったのだ。イギリスでは2004年に人体組織法が施行されたことで、近親者以外にも合法的に腎臓を提供できるようになった。
ここで最大の問題が、ドナーとレシピエントをいかにしてマッチングさせるかである。腎臓を提供したいと思っている人がいても、意中のレシピエントと組織型や血液型が合致しないかもしれない。たとえばフレッドおじさんが腎臓を必要としていて、その息子ウィリアムは自分の腎臓を1つ提供したいと思っているが、ただし他人にはあげたくない。ところが不幸にも、ウィリアムの腎臓は組織型が合っていない。2004年より前なら話はこれ以上進まず、フレッドは頻繁に透析を受けるしかなかった。しかしウィリアムと組織型が合致する患者がほかに大勢いた。たとえば、フレッドとウィリアムのどちらとも縁のないジョン・スミスが同じ問題を抱えていたとしよう。その妹エミリーが新たな腎臓を必要としていて、ジョンはエミリーに自分の腎臓を1つ提供したいと思っているが、やはり他人にはあげたくない。しかしジョンとエミリーは組織型が違う。そのため誰も腎臓移植を受けられない。
だが仮に、ジョンの組織型がフレッドと合致して、ウィリアムの組織型がエミリーと合致したとしよう。2004年以降このような場合には合法的に腎臓を交換できるようになった。それぞれの主治医が連携し、ウィリアムの腎臓をエミリーに移植するという条件でジョンの腎臓をフレッドに移植するよう提案できるようになったのだ。どちらのドナーも自分の親族が新たな腎臓を手に入れられるし、親族のためなら進んで腎臓を提供したいと思っているのだから、この提案ならばはるかに同意しやすい。誰がどの腎臓をもらおうがドナーにとってもレシピエントにとってもほとんど違いはないが、組織型が合致するかどうかは生死に関わる。
現代の通信技術を使えば、ドナーとレシピエントおよびその組織型を登録しておくことで、このような一致があるかどうかを見つけることができる。レシピエントとドナーの人数が少ないと、このように都合よく交換できる可能性は低いが、人数が増えるにつれてはるかに高くなる。レシピエントの人数はかなり多く、イギリスでは2017年時点で5000人以上が新たな腎臓を待っていた。死んだ人からも生きている人からも腎臓を提供できるが、ドナーの人数はもっと少なくて、同時点で2000人ほどだった。そのため待ち時間の平均は成人で2年以上、子供では9ヵ月におよんだ。
もっと多くの患者がもっと早く移植を受けられるようにするための1つの方法が、もっと手の込んだ形でチェーン状に(ドミノ倒し的に)腎臓を交換することである。現行の法律ではこれも認められている。
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もしもゾーイ(アメリアに腎臓を提供する)が順番待ちの他の誰かに腎臓を提供していたら、アメリア、バーナード、キャロル、ディアドリが腎臓を手に入れるには順番待ちをするしかなかった。しかしそうしなかったことで、移植できる腎臓が4つも増えた。この方法をドミノ腎臓移植チェーンという。ゾーイが最初のドミノを倒すことで、いくつものドミノが順番に倒れていくということだ。ここではこれを単に”チェーン”と呼ぶことにしよう。
ここで考慮すべきは家族関係でなく組織型である。アルバートにはゾーイと同じ組織型の親族がいる。ベリルにはアルバートと同じ組織型の親族がいて、チャーリーにはベリルと同じ組織型の親族がいる。レシピエントとドナーの人数が比較的多ければこのようなチェーンはかなりできて、医師がそれを見つけ出せる。しかしたとえ委託したところで時間のかかる作業だし、腎臓は1つ1つが貴重なので、最善の形でチェーンを選びたい。だが数多くのチェーンが共存するため、そう簡単ではない。医師は複数のチェーンを同時進行で進めていくが、2つのチェーンに同じドナーが含まれていてその人が2人に腎臓を提供しなければならなくなったら、そこで一方のチェーンは途切れてしまう。
最適な形でチェーンを選ぶ――何とも数学的な問題ではないか。数学の用語で表現して適切な手法を用いれば解けるかもしれない。しかも完璧な解である必要はなく、当てずっぽうよりも優れていればいい。この腎臓交換問題をグラフの問題に変換する方法がデイヴィッド・マンラヴによって見出された。それを解く上でオイラーの定理は役に立たないが、オイラーはこの分野全体を打ち立てることで役割を果たしたことになる。それ以降さまざまな数学者がこの分野を発展させ、グラフ理論の新たな手法を数多く考案してきた。グラフは離散的な[連続量を扱うたぐいのものではない]概念で、実際にはノードとエッジ、そしてどのエッジがどのノードをつないでいるかを記したリストにすぎないため、コンピュータで扱うのにきわめて適している。グラフを解析して有用な構造を抽出するための強力なアルゴリズムも開発されている。たとえばあるアルゴリズムを用いると、現実的な大きさのグラフにおいてドナーを患者に最適な形で割り当てる方法を見つけることができる。いまではコンピュータに実装されているそのような手法が、イギリスでは日常的に用いられている。

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どうでもいい、じじぃの日記。

「では、ケーニヒスベルクの橋と腎臓移植の間にはどんな関係があるというのだろうか?」

ケーニヒスベルクの橋」の問題をグラフ化してみると、わかりやすい。
「腎臓移植」の問題をグラフ化してみると、わかりやすい。
このグラフ化するというのを、あの有名なオイラーさんもやっていたというお話。
でした。