じじぃの「科学・地球_475_量子的世界像・ジョセフソン接合とは何ですか」

ジョセフソン効果

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hndJYa24nhU

超伝導量子干渉計(dc SQUID

   

   

超伝導回路で量子ビットを実現 図1.D-Waveのハードウエア

   

宇宙一冷たい場所で動く

2014.08.12 日経クロステック(xTECH)
 1台10億円とも言われるD-Waveマシンのハードウエアを見てみよう(図1)。筐体はサーバーラックのような外観をしている。筐体内には銀色に輝く筒状の「希釈冷凍機」があり、冷凍機のさらに内側に、D-Waveマシンの心臓部である超伝導回路が納められている。

磁束量子の磁場はとても小さいので、「磁束量子パラメトロン(QFP)」で増幅する。増幅した磁場を「超伝導量子干渉計(dc SQUID)」で計測する。量子ビットとQFPはいずれも最初に日本で開発された。
https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20140801/368477/

『量子的世界像 101の新知識』

ケネス・フォード/著、青木薫塩原通緒/訳 ブルーバックス 2014年発行

XIV さまざまなスケールでの量子物理学 より

ジョセフソン接合とは何ですか

1962年、ケンブリッジ大学で学んでいた22歳の大学院生、ブライアン・ジョセフソンは、2つの半導体のあいだに薄い絶縁体の層を挟んだときに、一方の半導体から他方の半導体へのあいだで電子のトンネル効果が見られるかどうかに興味を持った(このような配列が、のちに「ジョセフソン接合」と呼ばれるようになった)。そして、彼は2つの驚きべき発見をした。第1は、絶縁体の層にかけられている電圧がゼロであっても電流は流れるということで、これはこの電流が電圧によって生じる従来の弱電流ではなく、真のトンネル効果による電流であることを実証していた。しかも、この電流はどちらの向きにも流れることができ、電流の大きさはそれぞれの半導体内部のクーパー対の波動関数(これを「位相差」という)に依存する、ある最大値までの範囲でどんな値でもとることができる。この現象は明らかに、大きなスケールでの量子効果のあらわれだった。というのは、クーパー対が量子的な波動関数としてふるまうかどうかにかかっているから、そして古典的には乗り越えられない障壁を乗り越えるトンネル効果が関与しているからだ。
ジョセフソンの第2の発見は、さらに信じがたいものだった。接合全体に一定の電圧をかけつづけると、交流が生じるのである(通常の物質を使った場合、一定の電圧は一定の電流、つまり直流しか生じさせない)。さらにジョセフソンは、この交流の振動数が、かけられている電圧と、電荷の量子単位eとプランク定数hを含む単純な定数との積に等しいと予言した(このhが出てきたら、量子物理学が絡んでいると思って間違いない)。
言うまでもなかろうが、まもなく実験によって裏づけられたこれらの洞察により、ジョセフソンは博士号を授与された。そして1973年、この業績によりノーベル物理賞も獲得した。
図に示されているように、このジョセフソン接合を2つ組み合わせると、また新たな驚くべき効果があらわれる。この配列の「穴」のなかの磁場がゼロであれば、接合の1つだけのときと同じように電流が流れ、半分は一方の接合を通り、半分はもう一方の接合を通る(2つの接合がまったく同じだと仮定して)。しかし、もし磁場が――より正確には、磁場と面積の積である磁束が――この穴を貫通していると、超伝導ループに関係する磁束の量子化(項目88 超伝導とは何ですか)が起こる。磁束の基本量子単位の整数倍でない磁束を通そうといくらがんばっても、自動的にはじかれてしまうのだ。少しだけ電流をループに足してやって、全磁束が量子化された値になる場合だけ、その電流は流れることを許される。超伝導体は、量子単位の整数倍でない磁束「許容」しない。このわずかに追加された電流――たとえばループの上側では左から右に、下側では右から左に流れているとする――の効果が、上の経路と下の経路での波動関数の位相を変化させ、それによって2つの接合を通る全電流を変化させる。結果的に2つの接合は、強め合う干渉か打ち消し合う干渉を起こさせる二重スリットのような働きをする。この場合では、上の経路を流れる電流と下の経路を流れる電流のあいだで干渉を起こさせているわけだ。この干渉は、ループを通る――あるいは通ろうとする――磁束によって制御することができる。

この2つのジョセフソン接合を用いた装置を、「超伝導量子干渉計」(SQUID)」という。その実用的な用途のひとつは、かつてない精度で磁場を測定することだ。わずか1量子単位で磁束が変化するごとに、計器を流れる電流が強め合う干渉と打ち消し合う干渉1サイクルをひとめぐりし、それが容易に観測される。項目88で触れたように、1量子単位の磁束の大きさは、直径2.5センチメートルのループをくぐる地球の磁場の磁束の約1000万分の1である。