じじぃの「歴史・思想_622_宮本弘曉・日本の未来・シン②・財政の未来」

定年70歳!年金開始年齢75歳スタート!現役世代が「今」備えるべき事

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zi2pKxymrmY

年金支給開始年齢を70歳に上げる?


内外経済ウォッチ『日本~年金改革議論に欠けているただ一つの視点~』

2021年12月号 第一生命経済研究所
●The Pension Paradoxを解消するには?
2011年のOECD「Pensions at a Glance」は、年金財政のバランスを保つことと十分な年金水準を確保することとの間には矛盾が生じると指摘した(the Pension Paradox)。
そのうえで、この解決策として①就労期間の長期化、②年金支給の低年金者への再分配、③私的年金の奨励を挙げた。第一に掲げられている就労期間の長期化は、年金を受け取る期間を短くする、つまり支給開始年齢の引き上げに相当する。現行の繰り下げ受給率に照らし合わせれば、5年支給開始を遅らせることができれば年金水準は42%増える。財政検証の見込む将来的な年金水準低下は約2割程度であり、これを相殺するインパクトがある。先進国全般をみても、支給開始年齢の引き上げを目指す国は多い(資料)。
https://www.dlri.co.jp/report/dlri/175108.html

101のデータで読む日本の未来

宮本弘曉(著) PHP新書
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。
国債通貨基金IMF)を経て、現在は東京都立大学教授を務める著者は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。
そこで本書では、世界と日本を激変させる3つのメガトレンド――①人口構造の変化、②地球温暖化対策によるグリーン化、③テクノロジーの進歩について、その影響を各種データとファクトから徹底的に検証。日本人が勘違いしている「世界経済の変化の本質」を理解した上で、日本社会の現在、そして未来に迫る。

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『101のデータで読む日本の未来』

宮本弘曉/著 PHP新書 2022年発行

第5章 日本経済再生への提言 より

労働市場改革」のために、いま何が必要か?

ここまで、日本経済の現在、未来を考える際に重要なメガトレンドの変化、そしてそれが日本経済に及ぼす影響について見てきました。日本は現在、多くの課題を抱えており、また、今後もメガトレンドの変化により大きな影響を受けることが予想されます。
では、今後、日本経済を再浮上させるためには何が必要なのでしょうか? 最終章では、この問いについて考えていきたいと思います。まずは、私たちの生活と直結する労働について考え、その後、第2章、第3章で取り上げたいくつかの分野について論じることにしましょう。

シン・未来② 財政の未来

今後の日本を考えるうえで、きわめて重要なのが財政の問題です。日本政府の借金はこの30年間で莫大な額に触れ上がっており、2020年における累積債務残高のGDP比は257%と、世界でも突出した高さとなっています。
第2章で詳しく論じたように、日本経済はいま、経済破綻に向かって進んでいます。市場参加者が国債への信頼を失った時、言い換えれば、政府の財政運営への信頼が損なわれた時には、財政危機がいつ起きてもおかしくない状況です。
では、どのように財政再建を進めればいいのでしょうか? 残念ながら、財政再建に特効薬はなく、国の借金を減らすためには、歳入を増やす、歳出を減らす、あるいはその両方を進めるしかありません。その上で、私は、次のような財政再建案が望ましいと考えています。
歳入を増やす手段としては、経済成長による税収の自然増と税率引き上げなどによる増税があげられますが、今後、人口が縮小していく日本では、高い経済成長を見込むのは難しいため、経済成長だけで膨大な借金を削減していくのは困難だと考えられます。
また、経済成長のみに頼って財政を健全化しようとすると、経済が期待通りに成長しない場合のコストが大きくなってしまいます。つまり、財政健全化には増税が避けて通れないということになります。問題はどのように増税を行うかです。
増税の際には、消費税を上げることが望ましいと考えられます。消費税は、消費に対して課税されるため、あらゆる世代に広く、公平に課税されます。また、景気にそこまで左右されないため、安定的な税収も期待できます。さらに、経済のグローバルにもかなり税金となっています。
消費税は輸入品に課せられる一方で、輸出品にはかかりません。それゆえ、国内の消費増税は輸出価格を引き上げず、海外市場での日本企業の競争力を阻害しないというメリットがあります。このようなメリットがある一方で、よく消費税は低所得者の税負担を高める「逆進性」があるという批判があります。これについては低所得者に給付を行うことで解決可能です。
ただ、消費税率の引き上げはその前後で駆け込み需要やその反動減などで経済に影響を与えてしまいます。増税幅が大きくなれば、人びとの反応も過大になる傾向があります。そこで、毎年、小刻みに増税をしていくという手があります。コロナ危機が終息し、その経済損失が明らかになった段階で、債務が持続可能なところまで、少なくても消費税15%まで毎年1%上げていくことが考えられるでしょう。IMFも消費税率を2030年まで15%、2050年までに30%に段階的に引き上げることを提言しています。
中期的に増税の予定がわかっていれば、経済主体はそれを織り込んで行動するため、経済へのマイナス影響を軽減することが可能です。毎年、税率を変更することには事務コストがかあkりますが、こうしたコストはITを活用することで対応可能だと考えられます。
また、高齢化が進む日本では相続税を活用することも財政健全化に有効でしょう。現在、相続税は一部の富裕層が支払うようになっていますが、税率を引き下げて課税ベースを大きく広げることで、負担感も軽減され、税収も増加すると考えられます。
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一方、歳出抑制には、一般会計歳出の約3分の1を占める社会保障費を抑えることが鍵となります。高齢化が加速する日本では、今後もその増加が見込まれており、社会保障改革により、その費用を抑制することが重要です。年金については、「マクロ経済スライド」(社会情勢に合わせて年金の給付水準を自動調整する仕組み)を活用し、給付を氷期的に削減すると同時に、年金受給開始年齢を70歳まで引き上げるべきでしょう。
また、先に述べたように、労働市場改革を進め、高齢者や女性の雇用を促進して、労働力人口減少をすこしでも弱める必要があります。もし高齢者の労働参加が進めば、高齢者の所得確保を通じて、消費需要の創出につながります。その結果、年金、医療などの社会保障給付への依存も緩和され、勤労者の税負担も軽減されます。その結果、現役世代の所得増加、消費意欲の増大も見込まれるでしょう。また、労働供給を促進することは、長期的な経済成長率を底上げするのにも役立つと考えられます。
なお、高齢者を雇用し続けるためには、最新のテクノロジーを活用することが重要となります。コロナ禍でテレワークを実施する企業が増えましたが、働く場所や時間の柔軟性を高めるテレワークがさらに普及すれば、体力的に通勤が難しい高齢者にとって大きなメリットになると考えられます。また、高齢化の先端を走る日本で高齢者の雇用を援助するためのロボットやAIが開発されれば、将来、高齢化に直面する国にも輸出することが可能で、自動車などに匹敵する一大産業となる可能性もあります。