ドイツが消費減税を導入へ 新型コロナ対策で
消費税10%:ポイント解説 海外、導入の国多く 高福祉のスウェーデンは25%
2019年9月26日 毎日新聞
付加価値税は1954年、世界で初めてフランスで導入された。
所得税や法人税には勤労意欲をそいだり、企業活動を制約したりする懸念があるのに対し、「経済に与える影響が比較的小さい」として急速に普及。日本では89年4月に消費税として当初は3%の税率で導入された。
https://mainichi.jp/articles/20190926/ddm/008/020/130000c
『現代ドイツを知るための67章【第3版】』
浜本隆志、高橋憲/編著 明石書店 2020年発行
消費税の二重構造――弱者への配慮 より
日本では消費税の議論が喧(かまびす)しい昨今である。2019年10月1日から現行の8%が10%へ引き上げられ、同時に軽減税率制が導入された。その際、政府与党の推進派は、ヨーロッパの消費税が日本より高いといい、スウェーデンやノルウエーの25%などを引き合いに出し、増税の根拠にした(なお、ヨーロッパでは消費税を付加価値税と呼ぶが、ここでは日本の慣例にしたがって、消費税と表記することにする)。
消費税は収入に応じた累進課税と違って、減速として金持ちや貧乏人にかかわらず、国民に一様に税金をかけるシステムである。その意味では低所得者の貧困層に過酷な負担を強いる税制であるといえる。ヨーロッパの消費税は、原則として日常に用いる食料品に低く、高級品に高いという、貧困層に配慮した軽減税率制を導入し、二重構造になっていることが多い。これはある意味では、ヨーロッパ人の合理的発想であるといえる。2019年時点の主要国の消費税比較を挙げておこう(画像参照)。
とくにイギリスやアイルランドでは、生活必需品には消費税無料であり、スイスも2.5%と安い。実際に、高級品を買う金持ちには高い税金を課し、低所得者に配慮していることが分かる。それにとどまらず、税金の負担の軽量は、日欧で単純に云々することはできない。もし相対比較をするなら、教育費、社会福祉、医療費などと、トータルに考えなければならないからである。ヨーロッパでは教育費や社会福祉費などで還元されるので、高い消費税でも人びとは容認している。
現在、ドイツの消費税は19%であるが、生活必需品、たとえば食料品、水道費、書籍、新聞、雑誌、観劇チケット、医薬品、旅客輸送、宿泊施設の利用などは、軽減成立が7%である。
とくに新聞、書籍、観劇チケットは、文化的生活に必要ということで、ドイツでは優遇されており、ここにドイツ人の文化や教養を重視する国民性がよくあらわれている。さらに話題になるのは、同じ食べ物であっても外食は19%、テイクアウトは7%という違いである。外食は贅沢という解釈なのである。
ロブスターやキャビア、ワインが高級品として19%というのは分かるが、各種ジュース類まで19%であり、またビールも19%、これと相性がいいソーセージが7%というのは、納得がいきかねる。また税率決定のときには、根拠が示されたのであろうが、以下に挙げる例は、その線引きが不明確で理解できない(数字は%)。
トマト 7 トマトケチャップ 19
補聴器 7 眼鏡 19
ジャガイモ 7 さつまいも 19
タクシー 7 レンタカー 19
映画 7 DVD 19
水道水 7 ミネラルウォーター 19
消費税は目的税ではないから、いうまでもなくヨーロッパにおいても、この財源が福祉目的のみに使われているわけではない。たとえばドイツの場合、2007年度からアップした3%のうち、1%は福祉部門の失業保険料の引き下げの財源としたが、2%は財政赤字の補填に使うという割り振りをした。
世間では増税をすれば経済を冷え込み、不景気になると器具されたが、シュレーダー政権時のハルツ改革を中心とする、新自由主義的な構造改革、財政再建の効果があらわれ、ああせてユーロ安など、これらの相乗効果によって、消費税導入後、ドイツ契機はむしろ好転し、失業率も減少するという結果になった。
日本でもこのような生活必需品や新聞などとそれ以外を区別する、軽減税率がようやく導入された。たしかに消費税はヨーロッパ諸国に比べると安いが、食料品などの軽減税率は8%で、ヨーロッパ諸国に比べるとかなり高いといえる。さらに消費税を上げると消費が落ち込み、景気が悪化するので導入には慎重であるべきだという意見も多い。
さて、最後に消費税に関する話題を付言しておこう。日本人がドイツで品物を買ったとき、未使用であれば消費税を還付してもらえる制度がある。
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実際には品物を購入した店で、免税申請用紙を請求し、書類に必要事項を記入してもらう。出国の際に、税関で未使用の購入品を見せ、書類にスタンプの押印を頼む。空港に払い戻し窓口があるので、そこで書類を提示し、還付金を受領するという手順である。ただしある一定金額以上の買い物でないと、この制度のメリットはない。