じじぃの「歴史・思想_614_宮本弘曉・日本の未来・7つの分野・農業・食料」

【アニメ 絵本読み聞かせ】面白く食品ロスについて考える知育の絵本~ダメダメ!食べ物は大切にして!~

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=em5KP5nMbIU


2050年における世界の食料需給見通しの公表について(世界の超長期食料需給予測システムによる予測結果)

2019年9月17日 Gov base
●世界全体の食料需要量の見通し
人口増加と経済発展により2050年の世界の食料需要量は2010年比1.7倍となります。特に、畜産物と低所得国の伸びが大きくなる見通しです。
https://www.gov-base.info/2019/09/17/40171

101のデータで読む日本の未来

宮本弘曉(著) PHP新書
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。
国債通貨基金IMF)を経て、現在は東京都立大学教授を務める著者は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。
そこで本書では、世界と日本を激変させる3つのメガトレンド――①人口構造の変化、②地球温暖化対策によるグリーン化、③テクノロジーの進歩について、その影響を各種データとファクトから徹底的に検証。日本人が勘違いしている「世界経済の変化の本質」を理解した上で、日本社会の現在、そして未来に迫る。

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『101のデータで読む日本の未来』

宮本弘曉/著 PHP新書 2022年発行

第2章 メガトレンドが影響を及ぼす7つの分野(前編)――メガトレンドの変化が影響を与える「7つの分野」 より

ここまで、日本・世界経済を取り巻く3つのメガトレンドの変化――「人口構造の変化」「グリーン化」「テクノロジーの進歩」について見てきました。これらのメガトレンドの変化は社会に様々な影響を与え、私たちの生活や働き方すら一変させます。
本章及び次章では、これら3つのメガトレンドが影響を与える「7つの分野」に注目して、それぞれの分野の現状と課題、そしてその未来図について考えます。その7つの分野とは次の通りです。
 1.経済成長
 2.財政
 3.医療・健康
 4.農業・食料
 5.教育
 6.エネルギー
 7.地方・住宅問題
もっとも、これらの分野はそれぞれが独立しているわけではなく、互いに影響しあうものです。例えば、人は年をとると病気になりやすくなったり、怪我をしやすくなったりします。つまり、高齢化が人々の健康に影響を与えた結果、医療や介護にかかる費用が増加します。これは社会保障費の増加を通じて、国の財政悪化につながります。

第3章 メガトレンドが影響を及ぼす7つの分野(後編)――メガトレンドが影響を及ぼす分野④ 農業・食料 より

SDGsの17の目標のひとつには、2030年までに「飢餓をゼロに」するといった目標もあります。このように、サステナビリティ(持続可能性)という視点からも食料や農業への関心は高まっています。
農業の問題と聞くと、農業関係者だけに関係するものだと思われる方もいるかもしれませんが、農業は、私たちの生活がサステナビリティなものとなるために必要不可欠なものです。つまり農業と食料はすべての人の問題なのです。
ここでは、メガトレンドの変化が国内外の食と農にどのような影響を及ぼしているのか、また、今後はどうなるのかについて考えていきましょう。

世界で増加する人口、どう食べさせるのか?

日本では人口が減少していますが、世界の人口は今後、ますます増加することが予想されています。国連によると、2020年に78億人だった世界の人口は、2050年には97億人まで増加、あわせて、中国、インドなどで中間所得層が拡大するとこが予想されています。これに伴い、農産物への需要は大きく増加することが見込まれています。
国連食糧農業機関(FAO)が行った予測では、2005~2007年と比較して、2050年には穀物の重要量は1.5倍に、肉類の需要量は1.8倍に増加するとされています。また、農林水産省が行ったシミュレーション分析では、人口増加や経済発展を背景に、2050年の食料需要量は2010年比で1.7倍にになると予想されています(図.画像参照)。
品種別にみると、畜産物と殻物への需要が大きく高まるとされています。また、所得階層別にみると、低所得国の食料需要量の増加が特に大きく、2050年の食料需要量は2010年の2.7倍になると予想されています。

FAOや農林水産省などの見通しでは、世界の人口が増加する中で、今後30年間で食料生産を6~7割程度増加しなければいけません。果たして、それは可能なのでしょうか。

飢餓の裏で進む「食品ロス問題」

最後に、現在、世界中で問題となっている「食品ロス」について見ていきましょう。食品ロスとは、まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまう食品のことです。
SDGsのターゲットのひとつに「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」というものがあります。世界の温室効果ガス排出の1割弱は食品ロスに関連しているとの推計もあり、食品ロスを解消することは世界的に急務です。
国連環境計画(UNEP)が2021年3月に公表した「食品廃棄指標報告2021(Food Waste Index Report 2021)によると、2019年、世界では家庭、飲食店などで消費できたであろう食品の17%にあたる9億3000万トン以上の食品が廃棄されています。これは大型トラック(10トントラック)で約9300万台分にあたる量です。このほかに、生産、加工、流通過程で失われた食品も合わせると、世界では食料生産量の3分の1が廃棄されました。
日本の食品ロスは、2018年に約600万トンと推計されています。これは東京ドーム5杯分にあたる量です。国民1人当たりに換算すると年間47キログラムで、1日に換算すると130グラムとなり、茶わん1杯のごはんの量に相当します。また、2019年に世界で飢餓に苦しむ人に向けられた世界の食料援助量は約420万トンとなっており、日本の食品ロスはこの約1.4倍の量となっています。
日本の食品ロスがどこで発生しているかを確認しておきましょう。食品ロスは大きくわけると、家庭から発生するものと、食品産業から発生するものがあります。前者は、例えば、購入した食材を使用せずに捨ててしまったり、料理を作りすぎてしまい食べ残してしまうことなど発生するものです。その量は年間276万トンと日本の食品ロス全体の約46%にあたります。
後者は、飲食店での食べ残しや小売店での売れ残りや返品、あるいは売り物にならない規格外品などで、その量は年間324万トンとなっています。その内訳は、外食産業116万トン、食品製造業126万トン、食品小売業66万トン、食品卸業16万トンとなっています。食品ロス削減には食品産業における発生を抑えるとともに、一般家計からの発生も抑えなければならないことがわかります。食品ロス削減は国民運動として取り組む必要があるのです。