じじぃの「歴史・思想_616_宮本弘曉・日本の未来・7つの分野・エネルギー」

Global ranking of renewable electricity generation

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gFb82kF1UHE

世界のエネルギー消費量の推移


世界のエネルギー消費量の推移

キーエンス
●エネルギー源は今も石油が主役
世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)の動向を見ると、変わらず石油がエネルギー源で一番多いことがわかります。
2016年時点でエネルギー消費の33.3%を占め、特に経済成長著しい中国などのアジア地域で多く消費されています。しかし、近年は中国の需要が鈍化し、アメリカでは天然ガスへ代替えが進むなど、石油の需要の伸びが緩やかになっています。
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/energy-saving/column/energy-consumption.jsp

101のデータで読む日本の未来

宮本弘曉(著) PHP新書
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。
国債通貨基金IMF)を経て、現在は東京都立大学教授を務める著者は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。
そこで本書では、世界と日本を激変させる3つのメガトレンド――①人口構造の変化、②地球温暖化対策によるグリーン化、③テクノロジーの進歩について、その影響を各種データとファクトから徹底的に検証。日本人が勘違いしている「世界経済の変化の本質」を理解した上で、日本社会の現在、そして未来に迫る。

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『101のデータで読む日本の未来』

宮本弘曉/著 PHP新書 2022年発行

第2章 メガトレンドが影響を及ぼす7つの分野(前編)――メガトレンドの変化が影響を与える「7つの分野」 より

ここまで、日本・世界経済を取り巻く3つのメガトレンドの変化――「人口構造の変化」「グリーン化」「テクノロジーの進歩」について見てきました。これらのメガトレンドの変化は社会に様々な影響を与え、私たちの生活や働き方すら一変させます。
本章及び次章では、これら3つのメガトレンドが影響を与える「7つの分野」に注目して、それぞれの分野の現状と課題、そしてその未来図について考えます。その7つの分野とは次の通りです。
 1.経済成長
 2.財政
 3.医療・健康
 4.農業・食料
 5.教育
 6.エネルギー
 7.地方・住宅問題
もっとも、これらの分野はそれぞれが独立しているわけではなく、互いに影響しあうものです。例えば、人は年をとると病気になりやすくなったり、怪我をしやすくなったりします。つまり、高齢化が人々の健康に影響を与えた結果、医療や介護にかかる費用が増加します。これは社会保障費の増加を通じて、国の財政悪化につながります。

第3章 メガトレンドが影響を及ぼす7つの分野(後編)――メガトレンドが影響を及ぼす分野⑥ エネルギー より

電気やガスなどのエネルギーは、私たちの日常生活や社会活動を維持していくために欠かせないものです。
しかしながら、世界ではいまだに約7.9億人が電気を利用できない状況にいます。また、現在のエネルギーの中心は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料をもとにしたもので、エネルギーを作り出す際にCO2が発生し、地球温暖化の原因のひとつとなっています。
そうした中、SDGsではその目標のひとつとして「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を掲げ、具体的には、「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」ことをターゲットにしています。

世界のエネルギー、その台所事情

まず、世界のエネルギー消費量がどうなっているのかを見てみましょう。
18世紀の産業革命以降、産業の発展や人口の増加によりエネルギーの消費量は急速に伸びてきました。また、今後、世界のエネルギー消費量は、人口増加と開発途上国の経済成長により、ますます増加すると見込まれています。
図(画像参照)を見てください。世界の1次エネルギー消費量は石油換算で2018年には138億トンとなっており、1965年の37億トンから3.7倍に増加しています。国際エネルギー機関(IEA)は、2040年には世界の1次エネルギー消費量は、192億トンに達すると予測しています。
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実際に、世界では再生可能エネルギーのシェアが大きく増加しています。2000年おける1次エネルギー消費量の燃料別シェアは石油38.2%、石炭25.4%、ガス23.2%、水力6.4%、原子力6.2%、再生可能エネルギー0.5%でした。この20年間で再生可能エネルギーが世界のエネルギー消費量を全体に占める比率は約10倍に拡大しています。

再生可能エネルギーは変える未来

ここで改めて再生可能エネルギーについて確認しておきましょう。
再生可能エネルギーとは、発電や熱供給に活用される自然のエネルギーのことをいいます。主な再生可能エネルギーとしては、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスがあげられます。
現在、世界的に実用化が進んでいるのが太陽光発電風力発電です。太陽光と風力は、化石燃料のように枯渇する心配がなく、また、発電時にCO2を排出しない環境面でメリットがある発電方式です。太陽光発電は太陽光さえあれば発電できるため、災害時の非情用電源としても期待されています。また、風力発電は、強い風が吹く場所であれば発電が可能なので、陸上だけでなく洋上でも発電が可能になっています。
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太陽光発電についてその発電コスト(LCOE)を比較すると、2020年下期に日本は124ドルMWhで、インドの4~5倍、他の先進国と比べても倍以上となっています。
これほど日本で太陽光発電のコストが高い理由は、「固定価格買収制度(FIT、Feed-in Tariff)」が関係しています。この制度は、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を国が定める価格で一定期間、電力会社が買い取るものですが、FIT初期の認定案件に当初、運転開始期限がなかったために、設置コストを下げる誘因が働かなかったのです。
また、平地が少なく、森林伐採や造成コストがかかることなどもその発電コストを他国より高くしています。
ここで、再生可能エネルギーの電力比率を国際比較してみましょう。2019年、日本において再生可能エネルギーによる発電が総発電電力量に占める割合は約18%(水力を含む)で、諸外国と比較してそれほど高くはありません。
G7における、水力を除く再生可能エネルギーの電力比率を比較すると、日本は10.3%と、アメリカの10.1%、フランスの8.3%、カナダの7.3%よりは高くなっていますが、ドイツやイギリスの約3分の1、イタリアの半分以下となっています。
日本は第6次エネルギー基本計画で、2030年に電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を36ー38%に高めるとしていますが、欧州委員会は現状の約3割から、2030年に65%にまで引き上げる目標を打ち出しています。
2050年にカーボンニュートラル、2030年にはCO2排出量を50%近くまで削減するという目標自体は、日本と欧州で大きな差はないものの、再生可能エネルギーの利用では日本が大きく遅れていることがわかります。
脱炭素社会の実現のためには、再生可能エネルギーによる発電の比率を大きく高め、電力部門の脱炭素化が不可欠です。それは、電力部門がCO2を多く排出しているからだけではありません。非電力部門において温室効果ガスを削減するのにも、それが欠かせないからです。
例えば脱炭素化を進めるためには、自動車の電化(電気自動車)を進めることが求められますが、そこで利用される電気が温室効果ガスを多く排出する形で作られるのであれば温室効果ガスの削減効果は減少してしまいます。つまり、社会全体でCO2を削減するためには、その基礎となる電力部門の脱炭素化が欠かせないのです。
再生可能エネルギーへの転換は、エネルギーの脱炭素化により温室効果ガスを削減するだけではありません。輸入化石燃料への依存度を引き下げることでエネルギー安全保障上のメリットもあります。
エネルギー自給率とは、国民生活や経済活動に必要な1次エネルギーのうち、自国内で確保できる比率です。2018年の日本のエネルギー自給率は11.8%と、OECD35ヵ国中、34位と低い水準になっています。
2010年の日本のエネルギー自給率は20.3%でしたが、東日本大震災により原子力発電が大幅に減少し、エネルギー自給率は2017年まで10%を下回っていました。エネルギーの安定供給の観点から、エネルギー自給率の改善を図っていくことが重要ですが、再生可能エネルギーは国産のエネルギー源なので、これに寄与することができると期待されています。