じじぃの「歴史・思想_603_プーチンの正体・暗殺実行部隊・GRU」

SPETSNAZ GRU TRAINING (2021)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hL-b2Jn7p0w

Wagner Group


Wagner Group: The Extended Hand of the Russian Federation’s Hybrid Activities and the Clenched Fist of Russian Global Expansion

21.12.2021 Security Outlines
The Wagner Group is used by the Kremlin as a strategic proxy tool that can be deployed wherever Russia has strategic interests. Europe, the Middle East, Africa, and Latin America. Thanks to the Wagner Group, Russia could previously afford to undertake sometimes risky covert operations while still maintaining the ability to plausibly deny such operations.
https://www.securityoutlines.cz/wagner-group-the-extended-hand-of-the-russian-federations-hybrid-activities-and-the-clenched-fist-of-russian-global-expansion/

プーチンの正体』

黒井文太郎/著 宝島社新書 2022年発行

まえがき より

2022年2月24日、プーチンがロシア軍にウクライナ侵攻を命じ、侵略戦争が始まった。しかし、このプーチンの「狂気」は、なにも急に生まれたわけではない。彼自身が書いたり語ったりしているが、もともと彼にはウクライナ征服の願望があった。その機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたのだ。
ただし、現代の世界では、あからさまな侵略は容易なことではない。国際社会の反発は当然予想されるし、戦争を勝ち抜く力も必要だ。プーチンはその機会をじっと待っていたのである。

第3章 黒い独裁者の正体 より

中央政界に進出し3年で首相に

こうしてFSB旧ソ連KGBの流れをくむ諜報機関)長官の椅子を得たことが、さらなるプーチンの政治家としての飛躍に繋がった。また、エリツィン大統領の汚職疑惑を捜査していたユーリー・スクラトフ検事総長がスキャンダルで失脚した事件でも、その失脚に手を貸している。
その功績からエリツィン大統領の信頼を獲得すると、1999年8月に首相代行、そしてすぐに首相に指名された。当時、エリツィン大統領は重度のアルコール依存症で職務がおぼつかなくなっており、事実上、政府はプーチンが采配することになった。
このあまりのスピード出世は、前述したように彼がエリツィン大統領の信頼を得たことが大きい。プーチンがモスクワに移ったのは43歳で、中央政界ではまったく無名の男が、あっという間に46歳で次期最高権力者に上り詰めたのだ。

第4章 プーチンの暗殺部隊 より

自分に都合の悪い人間は消す

ロシア国内で偏狭な民族意識・愛国意識を扇動するポピュリズムで権力を強化したプーチンだが、その裏ではダーティな手法を多用している。自分に都合の悪い人間を消す、すなわち「暗殺」だ。
ロシアではプーチンに睨まれたら最後、誰しもが、いつどのような形で命を失うことになるかわからない。政権による暗殺の証拠が挙がらなくても、暗殺が強く疑われる不審死も多い。
たとえば2018年4月12日、ウラル地方スベルドロフスク州エカテリンブルクでのマクシム・ボロジンの変死事件がある。ボロジンはニュースサイト「ノービ・デン」の記者だったが、その日、アパート5階にある自室から転落し、3日後に病院で死亡した。転落した経緯は明らかではないが、遺書などは残されておらず、勤務先も「自殺の理由はない」と明言している。
また友人の1人は、転落死前日の午前5時にボロジンから電話を受けており、「バルコニーに銃を持った男がいて、階段にはマスクを被った迷彩服姿の男たちがいる」との話を聞いている。
ボロジンが政権によって暗殺されたのではないかとの疑惑は、この「迷彩服の男たち」の話に加えて、ボロジンの当時の仕事内容にもある。彼は、ロシアの民間軍事会社は「ワグナー・グループ」について記事を書いていたからだ。
ワグナー・グループはウクライナやシリア、リビア、マリ、中央アフリカなどに投入されている表向きは民間軍事会社で、その要因も民間のロシア人雇い兵だが、作戦に関しては、軍の情報機関である参謀本部情報総局(GRU)の事実上の指揮下にある。ロシア正規軍が公式には活動していないことになって地域で、GRUの作戦を行ういわばダミー組織である。ただし、すべてがGRUの擬装作戦というわけではなく、アフリカなどでは現地の独裁政権や鉱物利権を持つ軍閥などと結託し、それなりに報酬を稼いでいることもある。
組織規模は最大で数千人とみられるが、継続的な隊員ばかりでなく、その時々で、契約があり、要員数は時期によって大きく変動する。中核は元GRU隊員を中心に、元ロシア軍特殊部隊などの要員で、戦闘機の操縦士などもいるが、その他の短期契約の一般隊員は元プロ軍人ばかりでなく、むしろロシア各地で募集された応募者たちが多い。彼らは兵士としては練度が低く、ある意味で”消耗品”として危険で劣悪な状況の現場に投入される。

プーチンに逆らう人間に安全な場所はない

ロシア暗殺チームの手は、もちろんイギリス以外にも伸びている。
2014年から敵対関係に入ったウクライナでも、ロシアの破壊工作と思われる事件が相次いだ。たとえば2017年だけをみても、3月には元ロシア検察官でプーチン政権と対立してウクライナに逃亡していたデニス・ボロネンコフが射殺されており、6月にはウクライナ軍の特殊部隊指揮官マクシム・シャポワル大佐がキーウ市内で車両に乗車中に爆殺されている。
あるいは不審死でいえば、元プーチンのメディア戦略のトップアドバイザーだったミハイル・レシンは、2015年11月、訪問先の米国ワシントンのホテルで変死した。彼はFBIと密かに接触していたとの未確認情報もあり、ロシアによる口封じの可能性がある。
ロシア本国での暗殺は、さらに枚挙にいとまない。前述した政府批判派のジャーナリストだけでなく、たとえば野党指導者では、エリツィン政権で第1副首相も務めたプーチン批判派の最有力政治家だったボリス・ネムツォフが2015年2月、モスクワ市内の橋の上で射殺された。この事件では、実行犯としてチェチェン共和国内務省部隊(現在の国家親衛軍。カディロフ首長配下のいわゆる「カディロフツィ」)の隊員ら5人が逮捕され、有罪判決を受けている。カディロフはその特権的地位を維持するため、プーチン崇拝を公言している人物だ。
ほかにも暗殺された政治家や実業家は数多くいる。アメリカの元情報機関員が会員の「元情報オフィサー協会」(AFIO)の機関誌『インテリジェンサー』2016年11月号の記事「スターリンの弟子~ウラジーミル・プーチンとロシアの最新のウェット・アフェアーズ(ウェット・アフェアーとは、暗殺などの血なまぐさい事件を指す隠語)」には、プーチンが権力を奪取した2000年から2016年までにロシア情報機関によって暗殺あるいは襲撃された可能性がある主な被害者40人のリストがある。
このリスト以降の例でいうと、2016年12月、モスクワで元FSB幹部のオレグ・エロビンキンが変死体で発見された事件がある。エロビンキンは国営石油会社ロスネフチ社の幹部になっていたが、元M16ロシア部長のクリストファー・スティールがトランプ=ロシア関係を調査した時の情報源の1人と疑われていた。スティールの報告書に、プーチン側近のロスネフチ社会長イーゴリ・セチンの関係者から情報を得たことが書かれていたからだ。
2017年2月には、モスクワ在住の反プーチン活動家で元テレビ局員のウラジーミル・カラムルザが、謎の中毒状態で昏睡状態に陥るという事件もあった。

ロシアでは、プーチンに逆らう人間に安全な場所はない。