じじぃの「科学・地球_406_退化の進化学・ウマの指骨の進化」

Horse evolution: How did horses become the only animals to have a single toe? - TomoNews

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2XDy2LGxxyk

ウマの指骨の進化


馬の進化 ~ヒラコテリウム(エオヒップス)からエクウスまでを辿る~

2020/07/20 Pacalla(パカラ)
https://pacalla.com/article/article-2879/

盲腸、軽く見ているとキケン。「役立たないから取ってもいい」器官なの?

2019.01.17 ナビタスクリニック
たしかに虫垂は、進化の過程で退化した器官とされています。そのため、短期的には虫垂を切除しても支障ないというわけです。
ただ実は、何の役にも立っていないわけではなく、免疫機能に関係する器官であるとも見られています。虫垂を切除された人は、「潰瘍性大腸炎」という自己免疫の異常による疾患になりにくい、という報告もあるのです。
https://navitasclinic.jp/archives/blog/1930

『「退化」の進化学―ヒトにのこる進化の足跡』

犬塚則久/著 ブルーバックス 2006年発行

第1章 「退化」の進化学 より

「進化」と「退化」

オリンピックの年になるとメディアはこぞってスポーツの話題に力をいれる。ことにメダルの気体がかかる選手については「以前よりも格段に進化しました」などと報じられる。もちろん比喩的表現なのだが、ただ「進歩しました」というよりも。いかにもワンランク上の別物になったかのような印象をあたえる。
漢字の「進」には進歩、進捗、進展、前進といったプラスの価値観がこめられているように感じる。「進化」はevolutionの訳だが、たしかに翻訳当時の進化観には下等から高等へという意識がふくまれていた。しかし、本来の生物学用語のevolutionには「進歩」の意味はまったくない。evolutionはもともと「展開」の意味で、おだやかな変化を表している。
そもそも進化というのはある種から新たな別の種が生まれることである。別種なので体の大きさや形にちがいがあり、元の種より体が大きくなることもあれば、小さくなることもある。たとえば、ゾウの先祖は胴長の子ブタのような体格だったが、現生のアジアゾウアフリカゾウでは肩の高さが3mになる。
絶滅したマンモスの仲間にはテイオウマンモスといって4mにまで大型化したものもいた。有名なシベリアのケマンモスは3m級だから、先祖筋のテイオウマンモスにくらべれば小型化したことになる。北アメリカ大陸のコロンビアマンモスも4m級だった。ところが、カリフォルニア沖の島にあきらかにこのマンモスから派生した子孫で、2m級のアメリカコビトマンモスがいた。あきらかにコロンビアマンモスから派生した子孫だが、退化したとはいわない。
ウマの進化では体が大型化するとともに足の指の数が減っていった。最初のアケボノウマはイヌなみの体格で4本指だったが、ヒッパリオンという3本指のウマ(三趾馬)ではポニーぐらいになった。さらに大型化するにつれ、第2、4、5指が短縮・消失するかわりに、のこる第3指がどんどん太くなり、現生のウマではついに指1本で体重を支えるまでになった。

断面積が同じなら本数が少ないほど強度が出るので、固い地面を速く走る機能は洗練されてきたことになる。その反面、湿った凸凹の林床を駆けるのには向かなくなった。これが進化である。

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ヘビの足は退化の代表例とされ、もともとオオトカゲのような動物から進化する過程で足をなくしたものである。寄生虫は全身的退化の例にあげられる。栄養を宿主に頼るので運動器も消化器もふくめ体じゅうのほとんどの器官が退化する。しかし宿主をみつけるための感覚器や、繁殖用の生殖器だけは発達する。脊椎動物ではオスが極端に小さくなり、メスの体に寄生する深海魚のアンコウが知られている。これも配偶者をみつけにくい環境に適応し、進化した結果にちがいない。これらの退化もすべて進化の賜物である。
どの動物も進化の産物なので多少とも退化器官をもつ。このうち胎児の時期や一生のある時期に現れ、本来の機能の一部ないしすべてが失われたものを痕跡器官という。これに対して、作用がのこり、大きさだけが縮んだ器官を狭義の退化器官という。たとえば、男の乳首は痕跡器官であり。親知らずや足の小指などは退化器官である。

人体の退化器官をほかの動物のものと比較することで、その退化がはじまった時期がどのくらい前のことなのか、およその見当がつく。たとえば虫垂は盲腸が退化したなごろとされる。ではいつ頃ヒトに現れたのだろう。
虫垂のような柔らかい組織はふつう化石にはならないが、ヒトの先祖筋にあたる現生の動物でその有無を調べることでそれがわかる。虫垂はヒトやチンパンジーにはあるが、ヒヒやニホンザルなど類人猿以外のサルにはみられない。類人猿は3000万年ほど前に出現したので、その頃から盲腸が退化して虫垂ができたのだろうと推定できる。