What Happened To Britain's Last Hunter-Gatherers? Prehistoric Europe Documentary
ポントス・カスピ海草原
ウィキペディア(Wikipedia) より
ポントス・カスピ海草原(Pontic-Caspian steppe)は、中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までのステップ地帯。黒海北岸からカスピ海北岸にかけて広がり、東ではカザフステップへと続く。ユーラシア・ステップの一部を成す。
ポントス・カスピ海草原の面積は994,000平方キロメートル(384,000平方マイル)で、ブルガリア北東部のドブルジャからルーマニア南東部、モルドバ南部、ウクライナ、ロシア、カザフスタン北西部を経てウラル山脈まで広がっている。
ポントス・カスピ海草原は、北は東ヨーロッパの森林草原に囲まれており、南側ではクリミア半島とコーカサス山脈西部にまたがる「クリミア亜地中海性森林群」が草原の南端となっているのを除いて、黒海まで伸びている。草原はロシアのダゲスタン地方のカスピ海西岸まで広がっているが、カスピ海北西岸・北岸には乾燥したカスピ海低地砂漠が広がっている。東ではカザフ草原がポントス・カスピ海草原を囲んでいる。
ポントス・カスピ海草原は、中生代と新生代にウラル山脈の南と東に延び、今日の西シベリア平原の大部分を覆っていたパラテーチス海(テチス海から分離して誕生した海)の延長線上にあったツルガイ海(Turgai Sea)の跡である。
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『第三次世界大戦はもう始まっている』
エマニュエル・トッド/著、大野舞/訳 文春新書 2022年発行
4章 「ウクライナ戦争」の人類学 より
第二次世界大戦より第一次世界大戦に似ている
我々はすでに「世界大戦」に突入してしまいました。そして戦争の歴史によく見られるように、誰もが予測していなかった事態が、いま起きています。
先日、ドイツの財界人や経営者を読む『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙に、「この戦争は1914年と1939年のどちらと比較すべきか?」という見出しの記事が出ていました。要するに、この戦争を「第一次世界大戦」「第二次世界大戦」のどちらのアナロジーで捉えるのが適切なのか、と問いかけているわけですが、私自身は「第一次世界大戦」の方が近いと考えています。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まった時、おそらく多くの人々は、第二次世界大戦の電撃戦のような戦争を想像していたことでしょう。しかし実際は、戦争の進行は遅く、むしろ第一次世界大戦のようになりつつあります。
もちろん第一次世界大戦の時も、人々は、「短期決戦」で片がつくと思っていました。ところが実際は、誰も想定していなかったことが起きたのです。
「民主主義陣営VS専制主義陣営」という分類は無意味
私が申し上げたいのは、この戦争を政治学などよりも深い領域から検討すべきだということです。
「この戦争は父権性システムと核家族の双系制システムの対立だ」とは誰も言わないでしょう。西側のどのメディアにも、こうした分析は見当たりません。よく見られるのは、「民主主義陣営VS専制主義陣営」という捉え方です。
確かにこうした分類法も、冷戦時代には、とくにアメリカが国内の平等も維持しながら経済的反映を謳歌する一方で、ソ連と中国が全体主義的に計画経済を実践していた1949年から1975年頃までは意味をもっていたかもしれません。しかし、今日の世界にはまったく当てはまりません。というのも、まず経済面で、ロシアも中国も、国家統制の舌にあっても市場経済になっており、共産主義はすでに死に絶えているからです。
また政治面でも、ロシアと中国には、大衆の意見を表現し、それを見極める一定の能力があります。さまざまな世論調査や研究が示しているのは、良い悪いは別として、ロシア国民の大多数が、プーチンと与党を支持し、国政選挙のない中国でも、多くの国民が政府を支持し、受け入れているという現実です。つまり、ロシアにも中国にも「民主主義的な何か」が存在しているのです。
真の経済力は「エンジニア」で測られる
そもそも西側諸国の経済力を過大評価する一方で、ロシア経済の耐久力を過小評価しているのは、今日の経済分析があまりに具体性を欠いているからです。
各国の経済力を測るには、農業部門、工業製品、サービスの付加価値を集計した国内総生産(GDP)を比較するのが通例ですが、例えば、アメリカの弁護士の熱心な活動が数字上は膨大な付加価値を生み出しているように、そこには、まったく「生産的」ではなく文字通り「虚構」と言えるようなサービスもかなり含まれています。
ロシアの経済力は、こうした指標(GDP)で測れば、韓国と同程度となります。
しかし、もしロシアの経済力がその程度だとすれば、ロシアはどうやってアメリカと軍事的に対峙できているのでしょうか。クリミア占領後の欧米の制裁にどうやって耐えたのでしょうか。それどころか、その後、穀物と原発の輸出大国になり得たのはなぜでしょうか。欧米のシステムから自立したインターネット網や銀行システムをどうしてつくれたのでしょうか。S-400地対空ミサイルシステムや超音速ミサイルの開発など、ある分野ではアメリカを技術的に凌駕できたのはなぜでしょうか。
これらはすべて「謎」なのでしょうか。
「地政=精神分析学」が必要だ
私はこの戦争に、まず歴史家として、また人類学者として向き合っているわけですが、いわば「地政=精神分析学」として語る必要にも迫られています。
「西洋の方向喪失」や「戦争への逃避」などについて語るとき、わたしは地政学を新たな研究領域に広げようとしているわけですが、それは、この戦争が第一次世界大戦と同様に、戦略的にも、「合理的」には説明がつかない側面を有しているからです。
そもそもなぜロシアは、これほどまでに西洋の憎悪の対象になったのでしょうか。
西洋から見て、選挙があり、女性の地位も高いロシアは、中国よりは”マシな国”であることを踏まえると、これは大きな謎です。事実、アメリカは、つい最近まで「最大の敵は中国だ」と言い続けていました。
この合理性を欠いた西洋における「反ロシア感情」について、1つの仮説を提示したいと思います。
それはおそらく、ヨーロッパの人々にとって、金髪で青い目をしたウクライナ人たちが”人種的に理想的な人々”に見えるからでしょう。逆にたとえば、シリア人は、身体的にはどちらかと言えば、私のような見た目をしているので、”人種的に理想的な人々ではない”のでしょう。
しかしここで疑問が浮かんできます。典型的なロシア人――アジア人に似ているロシア人もいるのですが――も、ウクライナ人によく似ていて、見た目はほぼ同じです。多くのロシア人は、北欧人のように金髪で、プーチンもまさにそうした見た目をしています。もっとざっくばらんに言えば、ヨーロッパ人から見て、ロシア人女性も、ウクライナ人女性と同じように”人種的に美しい”わけです。
ということは、”人種的な意味で理想的なヨーロッパ人”と見られているにもかかわらず、ロシア人は憎悪の対象になっているのです。
となると、これは、「ロシア人たちは金髪なのに我々と同じように考えていない」「我々と同じであるべきなのに異なる考え方を持っている」ことが理由だと考えるしかありません。要するに、”人種的”には完璧なのに”考え方”がよろしくない、と。他方、中国人に対しては「彼らはアジア人であり、そもそも我々と同じではない」と捉えられているがゆえに、そこまで問題となっていないのではないか、と。
これは乱暴な仮説ですが、西洋における「反ロシア感情」は、こうとでも考えないと説明がつかないほど、非合理的なものなのです。