じじぃの「歴史・思想_578_トッド・第三次世界大戦の始まり・中国はロシアを支援する」

第三次世界大戦開始?トランプ当選を予想したエマニュエル・トッド氏の予言。アメリカの支援がロシアに大義

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https://www.youtube.com/watch?v=YGrL-hS3zc4


第三次世界大戦はもう始まっている』

エマニュエル・トッド/著、大野舞/訳 文春新書 2022年発行

1章 第三次世界大戦はもう始まっている より

我々はすでに第三次世界大戦に投入した

ウクライナ問題は、元来は、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」でした。1991年当時、ロシアがソ連解体を平和裏に受け入れたことに世界は驚いたわけですが、ロシアからすれば、1990年代前半に行うべき国境の修正をいま試みている、とも言えるでしょう。
しかしこの問題は、始めから「グローバルな問題」としてもありました。
アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ。ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています(The grand chessboard' 邦訳『地政学で世界を読む――21世紀のユーラシア覇権ゲーム』日経ビジネス人文庫)。アメリカに対抗しうる帝国になるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離えばよい、と。
そして実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの”事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」と留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。

いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話していますが、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」と私は見ています。

ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲を備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。
その意味で、ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです。ただ、アメリカは、自国民の死者を出したくないだけです。

中国はロシアを支援する

現在、中国は、外交の場での発言に非常に気を使っています。しかし明らかなのは――これは「環球時報」を読めばすぐに分かることですが――、政府だけでなく中国の国民も、圧倒的にロシアに親近感を抱いていることです。
ですから、バイデンが中国に対し、「ロシアへの武器の供給や支援はするな」と脅迫をしたのは、あまりに滑稽です。アメリカは、つい1ヵ月前まで、「中国こそ第1の敵」と名指ししていたからです。
「人間は基本的に賢明である」という前提から私の思考は出発しますが、「ロシアを支援しない」という決断を下すほど、中国の指導者層が愚かだと思えません。ロシアが倒されれば、どんな形にせよ、次に狙われるのは中国自身だからです。

もしアメリカのウクライナにおける軍事行動が成功を収めたならば、アメリカは、北朝鮮に対しても、あるいは台湾やベトナムに対しても、何か似た行動を起こすだろうと、中国指導者層は考えているはずです。

ですから、中国は、公けの場ではロシアに交渉を求めながらも、最終的にはロシアを支援するのではないかと私は見ています。