じじぃの「ラバー(ゴム)・使い道のない新素材だった?ケミストリー世界史」

マリオに扮して登場した安倍晋三首相 (2016年)


『ケミストリー世界史 その時、化学が時代を変えた!』

大宮理/著 PHP文庫 2022年発行

第11章 産業革命と市民革命 より

1735年 中南米は新発見の宝庫――ゴムがヨーロッパへ伝播

●ゴムとの遭遇
17世紀には、地球が球体だということはわかっていましたが、その形に関して、赤道のほうが遠心力で太くなっているとするニュートンと、宇宙空間に渦巻いているエーテル(当時の人びとは、エーテルという物質が宇宙を満たしていると考えていました。これは化学物質のエーテルとは違います)に押されて南北のほうが長くなっているとするデカルトとのあいだで論争がありました。
フランス科学アカデミーは1735年、数学者、測量者のチームを北欧と南米に派遣して、どちらが長いのか測定しようとしました。そのうちの一人、数学者、地理学者、天文学者であるシャルル・マリー・ド・ラ・コンダミーヌは、子午線の長さを測るよう南米に派遣されます。本来の測量を終えた彼は、南米を探険し、インディオたちがカウチュの木(カウは「木」、チュは「涙」で「涙を流す木」)と呼んでいた木から染み出す白い乳液上の樹液を固め、煙で熱したあとに固めるとボールや容器、長靴などがつくれること、アマゾンの現地人がクラーレという猛毒を塗った矢で動物をとっていること、キナの木の樹液キニーネという苦味の成分でマラリアを治せることなど、興奮に満ちた発見でした。

●ゴムをヨーロッパに持ち帰る
このカウチュの樹液から得られる白い樹液こそが、天然ゴムの溶液、ラテックス(ラテン語で「液体」という意味)です。現地の人びとは、ラテックスを固めてゴム製品をつくっていたのです。
コンダミーヌはカウチュからつくったボールや白い乳液をサンプルとして持ち帰り、パリにもどりました。しかし、煙で処理をしない生の樹液だったので、白い樹液は船のなかで発酵して腐ってしまいました。
これを契機に、ゴムという物質が本格的に知られるようになりましたが、生ゴムは夏にはベトベトになり、冬には硬化してヒビ割れるので、はじめは使い道がありませんでした。
それまで湿ったパンで鉛筆を消していましたが、1770年、イギリスの化学者ジョゼフ・ブリーストリーが偶然、生ゴムで鉛筆の字をこする(=「rub」)と消えることを見つけ、「ラバー」と名づけました。
使い道のない、この新素材のゴムを現代文明を支える物質にまで高めるには、ゴムにとり憑かれた一人の登場を待たなくてはなりません。

第12章 資本主義から帝国主義へ より

1839年 ゴムの実用化――現代文明を支えるゴムの時代へ

●ゴムにとり憑かれた発明家
現代は、ゴムによって支えられているといっても過言ではありません。ゴムのタイヤ、長靴などの防水グッズ、化学工業から自動車まで、パイプのつなぎ目からガスや液体の漏れを防ぐガスケット(充填剤)、O型のゴムリング(Oリング)、ベルト類などの機械部品など枚挙にいとまがありません。
この実用的なゴムの製造法を発明したのは一人のアメリカ人で、まさにとり憑かれた男でした。
1830年代、アメリカではゴムを使った製品があちこちで誕生し、多くのメーカーが立ち上がりました。しかし、夏にはベトベトになり、冬には硬化してひび割れるゴム製品は評判を落とし、たくさんのゴム製造会社が倒産しました。
1834年、34歳のチャールズ・グッドイヤーは、このゴムの実用化をめざして研究にとりかかりましたが、ゴムを使った試作品をつくっても、失敗する日々が続きます。

●新素材ゴムのブームが到来
1839年(日本では蛮社の獄が起きていたころ)の寒い冬の日の逸話には、さまざまなものがあります。グッドイヤーが周囲からバカにされて、怒ってストーブに硫黄と生ゴムを投げつけたという話。暖炉のそばでうたた寝して生ゴミと硫黄の瓶を手で払って混ぜた話、ストーブの上にゴムと硫黄を落としてしまった話など、いずれも、生ゴムと硫黄を加熱したことが共通です。生ゴムに硫黄を少量加えて過熱することでよく弾む性質が表れ、耐久性も劇的に向上することを発見しました。これを加硫法といいます。

この加硫法の発明で、ゴムは夏でも冬でも使えるようになったのです。

弾性や耐久性が向上して実用化が可能になって、たちまち世界中で新素材ゴムのブームが到来しました。

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追悼 安倍晋三元首相

オリンピックの閉会式では次の開催年がパフォーマンスをすることで知られていますが、リオオリンピック(2016年)の閉会式で、日本はプロジェクションマッピングや素晴らしいダンスパフォーマンス、幻想的な雰囲気の音響効果だけでなく、紹介映像の中に漫画やアニメ、ゲームのキャラクターが登場し、観客を楽しませた。

日本の内閣総理大臣は配管工のマリオの格好で、赤いボールを手に持って現れた。

矢継ぎ早の未来的なビデオにはキャプテン翼ドラえもんパックマンなどが登場。公用車に乗る安倍首相は 「リオには間に合わない!」 と言った後、任天堂の有名なゲームのキャラクターであるスーパーマリオに変身。東京の町を走り、緑の土管に飛びこんだ。ドリルによってリオまで進んだマリオはマラカナンスタジアムの土管から登場した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となった。