じじぃの「科学夜話・もうすぐ・人が死んだあとに起こること!人体大全」

What Happens to Your Body When You Die?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BpuTLnSr_20


人が死ぬとその体はどうなるのか?身の毛もよだつその過程を科学的に説明。

2014年11月10日  カラパイア
人が死んだ後に起こる身の毛もよだつ過程を、段階を追って丁寧に説明した動画が公開された。この動画はアメリカ化学協会がユーチューブに投稿したもので、身体機能を喪失する過程や、死体の防腐処理を施し葬儀のための身支度を整え、再度に腐敗が進行するまでの不気味な詳細を親切に紹介している。
https://karapaia.com/archives/52176855.html

『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』

ビル・ブライソン/著、桐谷知未/訳 新潮社 2021年発行

第23章 命が終わるとはどういうことか より

「人を死なせるのはライフスタイル」という時代

2011年、人類の歴史の中で、興味深い節目となる出来事があった。心不全脳卒中、糖尿病などの非感染性疾患による世界の死亡者数が、あらゆる感染症による合計の死亡者数を初めて上回ったのだ。わたしたちは、たいていの場合、ライフスタイルのせいで死ぬ時代に生きている。つまり、あまり深い考えや見通しを持っていないとしても、事実上、どう死ぬかを自分自身で選んでいる。
あらゆる死の5分の1は、心臓発作や自動車事故で突然訪れ、さらに5分の1は短時間の病気に続いてすばやく訪れる。しかし大多数の約60パーセントは、長引く消耗性の病気によるものだ。わたしたちは長く生き、長い時間をかけて死ぬ。「65歳以降に死亡するアメリカ人の3分の1近くは、人生の最後の3ヵ月を集中治療室で過ごす」。2017年に《エコノミスト》は淡々と指摘した。

人が死んだあとに起こること

死は誰にでも訪れる。毎日、世界じゅうで16万人が死んでいる。年間では約6000万人。つまり毎年のように、スウェーデンとノルウエーとベルギーとオーストリアの全人口を絶滅させるのにほぼ等しいということだ。一方で、100人当たりほんの0.7人ほどの死者数と計算することもできる。つまり、どの年にも、100人にひとり未満しか死んでいない。ほかの動物に比べれば、ずいぶん高い生存率だ。
年を取ることは、死へ向かう最も確実な道だ。欧米諸国では、がんによる死亡の75パーセント、肺炎の90パーセント、インフルエンザの90パーセント、あらゆる原因の死亡の80パーセントは、65歳以上の人となっている。興味深いことに、アメリカでは1951年以来、少なくとも記録上、老衰で死んだ人はいない。その年に、「老衰」を死亡診断書の死因から外したからだ。イギリスではまだあるがあまり使われることはない。
死はほとんどの人によって、想像できるかぎり最も恐ろしい出来事だ。
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死に瀕した人のほとんどは、最後の1、2日には飲食への要求がなくなる。話す力をなくす人もいる。咳をしたり飲み干したりする能力を失うと、一般に死前喘鳴(ぜんめい)として知られるゴロゴロという音を立てることが多い。苦しそうに聞こえるかもしれないが、本人によってはそうでもないらしい。しかし、死戦期呼吸と呼ばれる、また別のつらそうな息づかいをすることもあり、それは4かなり苦しいらしい。死戦期呼吸は、心臓が止まりかけているせいでじゅうぶんな呼吸ができない状態で、ほんの数秒で途絶えることもあるが、ときには40分以上も続き、患者にとってもそばにいる家族にとってもこの上なくつらい時期になることがある。神経筋遮断薬で止められるが、多くの医者は投与しない。必然的に死を早めてしまうので、たとえ死が目前に迫っているとしても、非倫理的、ことによると非合法とさえ考えられているからだ。
人間は死ぬことについてとびきり敏感なようで、避けがたい運命を先延ばしにするために、やみくもな手段をとることも多い。ほぼこの国でも、死にゆく人々への過剰治療が日常的に行われている。アメリカで、がんによって死に瀕している人々の8人にひとりは、効果がある時点をとっくに過ぎた、死の2週間前まで化学療法を受けている。3つの異なる研究によれば、人生最後の数週間に、化学療法ではまく緩和ケアを受けているがん患者のほうが、長生きし、苦痛もずっと少ないという。
死にかけているとしても、死を予測するのは簡単ではない。マサチューセッツ大学医学部のスティーブン・ハッチ医師はこう書いている。「ある調査によると、平均生存期間が4週間の末期患者についても、医師が1週間後の生存を正しく予測したのは症例の25パーセントにすぎず、別の25パーセントでは4週間以上も予測とずれていた」。
死は、とてもすばやくあらわになる。ほとんどすぐさま、血液が表面近くの毛細血管から失われ始め、死に伴う幽霊のような青白さを生じる。「人間の死体は、まるで真髄をなくしたかのように見えるが、まさにそのとおりなのだ。ぐったりして色を失い、もはやギリシャ人がプネウマと呼ぶ精気に満たされることもない」とシャーウィン・B・ヌーランドは『人間らしい死にかた』で書いた。死体に慣れていない人にとっても、たいてい死は一瞬で見て取れる。
組織の劣化は、ほとんどすぐさま始まる。だからこそ移植用臓器の「収穫」(間違いなく医学で最も不愉快な用語)は、あんなに大急ぎでやらなければならないのだ。血液は重力に従って体の最下部に溜まr、死斑と呼ばれる過程でその部分の皮膚を紫色に変える。体内の細胞は破れて酵素が漏れ出し、自身を消化する自己融解という過程が始まる。ほかの器官より長く機能し続ける器官もある。肝臓は、まったくその必要がないにもかかわらず、死後もアルコールを分解し続ける。細胞が死ぬ速度もまちまちだ。脳細胞は、わずか3、4分ほどですばやく死んでいくが、筋細胞と皮膚細胞は何時間も、おそらく丸1日ほど持ちこたえる。死後硬直と呼ばれる有名な筋肉の硬直は、死後30分から4時間で起こり、顔の筋肉から始まって、体の下へ、四股の先へと広がる。死後硬直は、1日ほど続く。
死体は、まだじゅうぶん生き生きしている。ただ、それはもはやあなたの命ではないというだけだ。あなたがあとに残したのは、細菌と、群れをなすその他もろもろの微生物、彼らが体を貪り食うあいだ、腸内細菌はさまざまなガスをつくる。たとえばメタン、アンモニア硫化水素、二酸化硫黄、そして読んで字の如しの名前を持つ化合物、カダベリン[訳注 ”死体のような”を意味するcadaverineに由来]とプトレシン[訳注 ”腐敗”を意味するputrescineに由来]。腐敗した死体のにおいは2、3日、気温が高ければもっと短時間で恐ろしく強くなる。やがて、においは徐々に和らぎ始め、残った肉体が失われると、臭気を発するものはもうなにもない。もちろん、細菌が生きて繁殖できないような氷河や泥炭湿地に死体がはまりこんだり、ミイラになるほど乾燥した状態に置かれたりすれば、腐敗の過程が中断されることもある。ちなみに、死後も髪や爪が伸び続けるというのはつくり話で、生理学的に不可能だ。死後には何も成長しない。
土葬されることを選んだ人の場合、封印された棺の中での分解には長い時間がかかる。ある推定によれば、遺体防腐処理(エンバーミング)をされなかった人たちでも、5年から40年かかるという。墓参りは平均すると約15年で途絶えてしまうので、ほとんどの人は、ほかの人たちの記憶から消えるよりもずっと長い時間をかけて地上から消える。100年前には火葬される人はおよそ100人にひとりしかいなかったが、今日ではイギリス人の4分の3、アメリカ人の40パーセントが火葬されている。もし火葬されたなら、遺骨の重さは約2キロといったところだ。

これで、あなたは消え去った。けれど、命が続いていたあいだは、なかなか楽しかったのではないだろうか。