じじぃの「知りたくない話・世界最小の犯罪現場(ミニチュア)!禁断の世界」

Murder Is Her Hobby: Frances Glessner Lee and The Nutshell Studies of Unexplained Death

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2-6ndwvK3UI

Nutshell Studies of Unexplained Death

Death and Feminism in a Nutshell

February 5, 2018 The Paris Review
Homicide. Suicide by hanging. A great deal of drinking, mainly of whiskey, mainly by men. Blood pooled on the floor. Chairs overturned. Many weapons: guns and knives and ropes. Burned Cabin, where a burned skeleton is barely visible, Dark Bathroom, which contains a dead woman in a bathtub beside an empty liquor bottle, and Unpapered Bedroom, in a boarding house where an unknown woman has been found dead.
In Frances Glessner Lee’s dioramas, the world is harsh and dark and dangerous to women. “The Nutshell Studies of Unexplained Death,” her series of nineteen models from the fifties, are all crime scenes. Glessner Lee built the dioramas, she said, “to convict the guilty, clear the innocent, and find the truth in a nutshell.”
https://www.theparisreview.org/blog/2018/02/05/death-feminism-nutshell/

『科学で解き明かす 禁断の世界』

エリカ・エンゲルハウプト/著、関谷冬華/訳 ナショナル ジオグラフィック 2022年発行

パート1 死への好奇心 より

#1 世界最小の犯罪現場 警察官の訓練に使われるミニチュア

ジャドソン一家は全員死んでいた。靴工場の親方のボブ・ジャドソンは、血に染まったパジャマを着たまま、ベッド脇に落ちたキルトの掛け布団の上にうつ伏せに倒れていた。そばでは妻のケイトが穏やかに眠っているように見えたが、枕と彼女の頭の背後の壁には血が飛び散っていた。
隣の部屋はもっとひどい状態だった。赤ちゃんのリンダ・メイは小さな両腕を血まみれの顔の脇に投げ出していた。周囲の惨状とは裏腹に、リンダ・メイにはバレリーナの衣装で踊るゾウとイヌが描かれたピンク色の毛布がきちんとかけられていた。
この救いようのない悲しい現場で、私は手がかりを集めて真相を解明する任務を任されることになった。これは私にとって初めての殺人捜査であり、能力に不安を抱える私は緊張していた。ジャドソン一家がみんな高さ6インチ(約15センチ)に満たない陶器製の人形であってもだ。
おわかりだろうか。死亡した一家はフランシス・グレスナー・リーが製作したドールハウスサイズの犯行現場の一部だ。インターナショナル・ハーベスター社のトラクターと農機具が生み出した財産を受け継いだリーは1940年代から50年代にかけて、このように不気味なほどに精巧なジオラマを20個製作した。「未解明の死のナットシェル研究」と呼ばれるこれらの作品は、実際の犯行現場から着想を得て、断片的な事件の手がかりをあちこちに忍ばせながら緻密に作り込まれていることで有名だ。その精巧さゆえに、18個の作品は今でも警察官の訓練に使われている(残りの2個のうちの1個は1990年代に彼女が所有していた米国ニューハンプシャー州の家の屋根裏で発見され、もう1個は輸送中に破損した)。
私はボルチモア監察医務局の薄暗い部屋で18個の犯罪現場のジオラマに囲まれていた。ジャドソン一家は最大のジオラマ「3部屋の家」の一部であり、死者の数が一番多かった(私はその点に引かれたのかもしれない――結局のところ、私は難題に挑戦するのが好きなのだ)。
他のジオラマのなかには、とんでもなく失敗した自宅リフォーム番組に出てきそうな場面もあった。「ピンクのバスルーム」では、死んだ女性の顔が姿見に映っているし、「キッチン」には、ガスオーブンで自殺したように見える――しかし殺された可能性もある――女性がいる。「暗いバスルーム」ではバスタブで女性が死んでいて、プラスチックの水が彼女の顔を伝って流れているところで時間が止まっている。
    ・
今では「科学捜査の母」と呼ばれるリーは、刑事たちが科学捜査の原則を学ぶための道具として、これらのジオラマを製作した。当時は科学捜査が取り入れられるようになったばかりで、それらを学べる場がなかったからだ。彼女はハーバード大学法医学部の設立にも尽力した。ここでは1931年から1966年まで医師や警察官の教育が行われ、毒殺の方法から射撃残渣(ざんさ)の分析まであらゆる科学捜査研究の拠点となった。現在でも、リーが残したジオラマは米国の科学捜査に対する彼女の多大な貢献の証となっている。
ジオラマ(ナットシェル)は1インチ(約2.5センチ)から1フィート(約30センチ)の縮尺で製作され、死体解剖報告書、警察の記録、目撃情報などから得られた詳細情報がすぐにはそれとわからないように随所に隠されている。時には、リーは場面の説明に出てくる名前や日付を変えたり、壁紙や装飾など証拠とは関係のない細部を変更したりすることもあった。

                    • -

どうでもいい、じじぃの日記。
フランシス・グレスナー・リー(Frances Glessner Lee、1878年~1962年)は、アメリカ合衆国の法医学者である。
彼女は実際の殺人事件現場から着想を得て、1/12スケール(ドールハウス・スケール)の精巧なジオラマを20個制作した。
『未解明の死のナットシェル研究』と名付けられたこのシリーズは、うち18個が現在でもメリーランド州監察医務局で殺人現場の捜査官の訓練用に活用されているほか、現在では芸術作品とも見なされている。
監察医は、死体から、他殺・自殺・事故死・病死を見極めたり、死亡時刻・殺害現場・犯人像 等を割り出していく仕事で、学問的には「法医学」になる。

今では「科学捜査の母」と呼ばれるリーは、刑事たちが科学捜査の原則を学ぶための道具として、これらのジオラマを製作した。

壁に付着した血痕。
この血痕がどこから、どれだけの距離から飛んできたのか。
体の外傷と血痕。
鈍器によるものなのか、鋭利な凶器によるものなのか。
精巧なジオラマを見て、推理する。
ジオラマを見た人の推理の正解は、作者が作り上げた物語と一致した場合である。
物語のなかには、知りたくない話もあるかもしれない。