じじぃの「科学・芸術_918_遺伝子DNAのすべて・DNA指紋法」

「DNAの旅」 日本語字幕版

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gTMlnVx-PzQ

DNA指紋法

DNA鑑定の方法

法科学鑑定研究所
親子(血縁)鑑定はマイクロサテライトマーカーによる識別法が主として用いられます。
未婚の母による子の父親認知請求や相続問題での親子認知事件など逃れようのない正確さで解決できるのです。
当サイトでは、代表的なDNA鑑定法「STR法」 「MLP法」 「SLP法」 「ミトコンドリア法」 「Y染色体STR法」の5つの検査方法を説明いたします。
http://alfs-inc.com/DNA/001.htm

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

あなたは何者?

系統樹からアルツハイマー病のリスク、指紋から科学捜査まで、科学者は遺伝子に隠された情報をどうやって探り出しているのか?

DNA指紋法は、1980年代、レスター大学でイギリスの遺伝学者アレック・ジェフリーズによって初めて開発された。ジェフリーズは、病因的遺伝子の家族での継承を追跡する方法を探しているとき、DNAの観察から個人差を見分ける有効な方法に偶然行き当たった。
この問題に取り組むため、ジェフリーズのチームは、縦列反復数変異(VNTR)と呼ばれる短い繰り返しDNAに注目した。これらは非コードDNAの一部を形づくっていて、ゲノム全体に約3万本が散らばっている。各VNYRの長さはきわめて多様で、どの人も両親から独自の組み合わせを受け継いでいる。一卵性の双子は同じゲノムを共有しているので、同じパターンのVNTRを持っている。近縁の人は似通ったパターンを持ち、血縁でない人たちが類似パターンを持つことはまれだ。
ジェフリーズのチームは、制限酵素とよばれる分子の”はさみ”を使って、DNAの特定配列を切断し、被験者のゲノムを短い断片に切り刻んだ。人はそれぞれ異なる長さのVNTRを持つのでその断片の長さもすべて少しずつ違う。
次の段階は、最短から最長まで、個々の断片をすべてサイズで分け、次にパターンを調べる。それは遺伝子の独特なバーコードのようでもある。ジェフリーズはすぐさま、すばらしい着想を得た。2つのDNAサンプルから得たパターンを単純に比べれば、犯罪現場と容疑者の両方から採取した材料などが同じ人物によるものかどうかを明らかにできるはずだ。さらに、世代を超えた家族間、特に親子間で受け継がれるパターンには共通の要素があるはずなので、ふたりの人物が血縁関係であるかどうかもわかる。
すぐさま、この新たな技術は(DNA指紋法という呼び名がついた)は、メディアの大きな関心を引いた。興味深いことに、ジェフリーズの研究所に対する最初の依頼は、犯罪捜査ではなく、イギリスからの強制送還される予定の少年に関わるものだった。その子のDNAと、母親を名乗る女性と3人の子どもから採取したサンプルを比較したことで、その少年が間違いなく女性の子どもであり、国にとどまるべきであることが証明された。この結果のおかげで、研究所には、同じ状況にある切羽詰まった家族から何千もの依頼が殺到した。

サイズで分ける より

DNAの断片をサイズによってわけるために、科学者たちはゲル電気泳動と呼ばれる方法を使う。初めに、混ぜ合せたDNAを板状のゲルにあけた小さな穴に注入する。それを水槽のなかに置き、特別な液体で被う。ゲルはアガロースという化学物質(寒天の一成分)でできていて、DNAの断片は、そのゼリー状の組織のなかを通れる。断片を動かすには、水槽に電流を流すだけでよい。DNAは負の電荷を帯びているので、正の電荷を帯びた水槽の端へ向かって動く。小さいDNA断片のほうが大きい断片より速くゲルを通れるので、サイズごとに分けられる。
これが完了すると、科学者たちはDNAに貼りつく染料で着色して、パターンを明らかにする。別の方法として、DNAをさらなる分析のために薄膜上に移し、サザンブロッティングと呼ばれる技術を使うこともある。イギリスの分子生物学エドウィン・サザンの名前に由来するこの方法では、放射性同位体で標識したDNA配列をプローブ(探針)として使って、DNAの特定を探す。

DNA指紋法の将来 より

いずれDNA指紋法は、ちょっとしたバーコードよりずっと多くの情報を突き止められるようになるかもしれない。遺伝子の多様性が人体にどんな影響を与えるかについて多くのことが発見され、広範なゲノムの配列決定のコストが下がるにつれて、科学捜査官たちは、ある人物のDNAに基づいてどんな容姿かを予想する分子モンタージュ写真作成のツールを開発しつつある。
まず調べるべき最も明白な要素は、性別だ。通常、女性はX染色体を2本持ち、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持つ。しかし、遺伝的な性が必ずしも外見や性別と一致しない人もいる。リストの次の項目は、肌、髪、そして目の色だ。青や茶色の目などの形質は比較的簡単にわかるあ、緑や他の色は今もむずかしい。髪の色も、美容院に行けば変えられるとはいえ、予測できる。
科学者たちは、ある種の遺伝的多様性と顔立ちの関係を調べ始めている。個人を特定できるほど厳密ではないし、顔立ちは加齢や体重の変化で変わるかもしれないが、この方法は、警察が人物像にまったく一致しない人に時間を浪費する代わりに、一定の容疑者に焦点を合わせるのに役立つだろう。
身長や体重などその他の形質は、はるかに予測がむずかしい。DNAから年齢を推測するのも手強い問題だが、現在、年を取ると一定の遺伝子につく分子の”タグ”を調べられる新しい検査法が開発されつつある。今のところ、そのテクノロジーはまだ初期段階にあるが、増加するデータベースで遺伝子と身体の特徴が結びつくにつれて、もっと精確になるだろう。