じじぃの「科学・芸術_914_遺伝子DNAのすべて・DNA構造の解明」

Junk DNA? -- There's no such thing!

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=lKNYD42Ntig

Photo 51: DNA X-ray diffraction image

The most important photo ever taken?

It may not look very exciting, but the photograph above has an important place in history. Known as Photo 51, it's an X-ray diffraction image of DNA and has at least a claim to be the most important image ever taken.
https://www.bbc.com/news/health-18041884

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

あなたのゲノムと親しくなろう

ヒトゲノムは、DNAに何十億ある「文字」でコードされた約2万個の遺伝子でできている。けれど、実際にそこにあるものはなんだろう?

ヒトは、精子卵子と出会う受精時に、各組の染色体の1本を母親、もう1本を父親から受け継ぐ。卵子精子はそれぞれ、染色体23本に30億のDNA”文字”(単数体とヒトゲノムと呼ばれる)を持ち、2つの細胞が合体して23組の染色体をつくり出し、60億文字の二倍体(連合した)ゲノムをつくる。そのうち22組は常染色体と呼ばれ、23組めは性染色体で、XXが女性核型、XYが男性核型となる。ほぼ全細胞にあるこの1セットのDNAが、その人のゲノム、つまりひとりの人間を特徴ずけるDNAコードだ。

写真51番 DNA構造の解明 より

1950年代、多くの研究者はDNAの子y像を突き止めようと競っていた。カナダの分子生物学者オズワルド・エイヴリーがその10年前に、細胞内のDNAが遺伝情報の伝達を担う分子であることを示していたが、それがどんな形をしていて、どう働くのかは誰にも分からなかった。この謎を解くため、キングス・カレッジ・ロンドンのモーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンは、X線回析と呼ばれる技術を使った。
X線ビームをDNAの結晶に照射したところ、内部の原子の”影”が見え、DNAによって形づくられたなんらかの構造の重要な情報をとらえることができた。
”写真51番”として知られるその写真は、博士課程の学生としてフランクリンとともに働いていたレイモンド・ゴスリングが撮影した。規則正しい形状からして、その構造は規則的に反復する二重らせん、あるいはねじれたはしご状であることが示された。ウィルキンスはその写真を、ケンブリッジ大学のジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックに見せた。
彼らは針金とボール紙で模型をつくり、DNAの立体構造を視覚化に取り組んだでいた。その写真はきわめて重要な情報であることがわかり、ワトソンとクリックは、DNAのヌクレオチドがどのように結合してあの有名な二重らせんをつくっているかを突き止めることができた。1962年、クリックとワトソン、ウィルキンスはその発見によって、ノーベル生理学・医学賞を受賞したが、悲しいことにフランクリンは受賞の4年前に亡くなっていた。そして何年ものあいだ、彼女の功績はあまり知られることがなかった。

トランクのなかのジャンク より

ジャンクDNA”という言葉は、さかのぼること1960年代、生物学者たちによって初めて使われた。けれどもそれが広まったのは、日系アメリカ人の遺伝学者、大野乾博士の研究を通じてだった。
1972年、ヒトゲノムにいくつの遺伝子があるのか誰も知らないころ、大野は「人間のゲノムにはたくさんの”ジャンクDNA”がある」と題した論文を発表した。彼の説明によると、人間は、4000個余りの遺伝子を持つ大腸菌の約700倍のDNAを持つ。もし遺伝子の数がゲノムの大きさに比例して増えるなら、人間は約300万個の遺伝子をもつはずだ。当時でさえ、それはあまりにも大きすぎる数字に思えた。
また大野は、サンショウウオとハイギョがヒトの30倍大きなゲノムを持つとすれば、1億個以上の遺伝子があることになってしまうと気づいた。これもあまりにも不自然に思えた。そこで、重要でないDNA塩基配列が、たとえ使われなくても、時とともにゲノム内に蓄積していくのではないかと考えた。大野はこう言った。「ヒトゲノムには、自然が行なった過去の実験の成功と失敗、両方が収められているようだ」