じじぃの「科学・地球_335_世界を変えた100のポスター・ウッドストック」

Woodstock 1969: The Music

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fbTyV8aMz7w

Woodstock Music Festival NY 「3 Days of Peace & Music」

The Complete Woodstock Lineup from 1969

August 12, 2019 Roohan Realty
Five decades ago, young people began flocking to a dairy farm in Bethel, NY for “3 Days of Peace & Music.”
Originally expected to draw a crowd of just 50,000, nearly half a million people ended up making their way to the The Woodstock Music Festival, which became one of the most iconic events in music history.
https://www.roohanrealty.com/blog/woodstock-lineup-1969/

『世界を変えた100のポスター 下 1939-2019年』

コリン・ソルター/著、角敦子/訳 原書房 2021年発行

074 ウッドストック より

Woodstock[1969年]

ハトとギター。このポスターはイベントがどんなものかを端的に表している。またこのイベントは、カウンターカルチャー世代の気風を端的に表してもいた。とはいえウッドストック・フェスティバルの運営と同様、ポスターの制作も無計画で成り行きまかせだった。

ウッドストックのステージで最後の音が鳴り響いたのとほぼ同時に、この名は「文化」、「世代」という言葉と同義語になった。3日間のロックフェスティバルは、今ではヒッピーの希望の頂点を極めたように思える。それは1960年代も終わろうとしている暗い時代に、束の間にともった楽天的な光だった。
1960年代後半のアメリカは緊張が高まり、まるで蒸気の充満しきった圧力鍋だった。1968年にマーチィン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺され、それを受けて暴動が起こった。そこで白日の下にさらされたのは、この国のほぼどこにでも存在していた制度的人種差別だった。さらに1969年の夏までにベトナムで米軍軍人4万人が若い命を散らすと、アメリカが国家として果たしている役割にも疑問がもたれた。若者が「ビジネス・アズ・ユージュアル」(何事もなかったような普通の生活)を拒む素地はできていたのだ。
若者は音楽と共同生活に表現手段を見出し、平等と人道主義、平和主義を根底に置いて、社会に対し違ったものの見方をした。合言葉は、解釈がいろいろ可能なふたつの言葉「愛と平和」。ウッドストックの開催は、若者の信じる全てを盛りこんだポスターで知らされた。それはまさしく絶好のタイミングだった。このイベントに押し寄せた若者は50万人にのぼる。
ウッドストックの運営は無茶苦茶だった。ウッドストックの町は、あと1ヵ月と少しというタイミングでフェスティバルを禁じる通達をしてきた。そのため主催者は新しい会場の周囲に柵をめぐらす時間が足らず、イベントを無料にせざるをえなくなった。新会場となったのは、マックス・ヤスガーの酪農農場だった。思いがけず膨大な数の観客が集まって出店やトイレの設備からあふれ、節操のない地元民が飲食者などを売ってぼろ儲けした。
観客を会場に引き寄せたポスターのコンセプトも、同じように右往左往した。最初は前衛アーティストのデヴィッド・バードにデザインを依頼していた。バードが提供したのは豪華なコラージュで、水瓶を担ぐ精霊ニンフの古典的な絵を智天使ケルビムとハートが取り囲んでいた。ウッドストックが称えようとしていたみずがめ座の時代[1960年から2000年まで続くとされる愛と平和の時代]を表した図柄だ。
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ウッドストックの会場が変更になったときは、バードと連絡がつかなかった。そこで急遽アーノルド・スコルニックに、週末のうちに新しいポスターを考えてほしいと依頼した。スコルニックはそれまでポスターをデザインした経験がなく、「ウッドストック」のポスターは色のついた紙を切り抜き、満足する結果になるまであちこち動かして作った。
「ポスターは、ゆっくり走っている自動車から見えるくらいシンプルでなければならない」と彼は後に述べている。
フェスティバルの出演者については、全員の名前をアルファベット順に、同じサイズで刷り重ねている。この判断はウッドストックの平等主義の原則を象徴している。ウッドストックは3日間の開催期間を超えて、カウンターカルチャー運動の中心テーマが正しいことを証明したように思われる。中心テーマ、それはヒエラルキーやお仕着せの制度の枠内でなくても、人間の精神は生き生きと活動できるということだ。
ウッドストック」のポスターがもはや、混乱に陥った音楽イベントだけを表していないのは、かえってよかったのかもしれない。今では(過ぎ去ったこのフェスティバルと1960年代とは違い)決してなくならなかった哲学を、あますことなく象徴するものとなっている。人を魅了するそのシンプルなメッセージ、「音楽による愛と平和」は今も生きつづけているのだ。