じじぃの「科学・地球_331_世界を変えた100のポスター・アシーナのポスター」

The Tennis Girl and its Parodies.mp4

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=sVFZUiDyyms

Athena Posters (1976 - 1980)

The Story Behind the ‘Tennis Girl’ by Martin Elliot, the 70s Picture That Made Tennis Interesting

August 12, 2019 Vintage News Daily
The photo was taken at the University of Birmingham’s tennis courts (formerly Edgbaston Lawn Tennis Club) in Edgbaston Park Road, Birmingham, England. The dress was hand-made by Butler’s friend Carol Knotts, from a Simplicity Pattern with added lace trim. Knotts also supplied the tennis racquet, with all of the borrowed items later returned by Butler to Knotts after the shoot with a box of chocolates.
https://vintagenewsdaily.com/the-story-behind-the-tennis-girl-by-martin-elliot-the-70s-picture-that-made-tennis-interesting/

『世界を変えた100のポスター 下 1939-2019年』

コリン・ソルター/著、角敦子/訳 原書房 2021年発行

067 アシーナのポスター より

Athena Posters[1964-1959年]

1964年、ロンドンでアシーナが開業。純粋芸術のアートプリントを販売する画廊として、イギリスの目抜き通りに数多くのチェーンストアを開いた。そのポスターを寝室に飾ったティーンエイジャーは100万人にのぼる。従来の作品の複製にくわえて、アイコンとなったアシーナ・オリジナルのポスターもあった。

ロックンロールは1960年代にロックになった。それと同じように、初めの頃は形式ばった実用的な演劇の広告ビラだったポスターも、創造性豊かなサイケ調のアート作品に成長した。それはうっとりするようなデザインだった。あまりに素晴らしいので、コンサートやイベントが開催されてしまうと捨てるのがもったいないほどだった。ファンは家の装飾として手元に置いたり収集したりした。ポスターは若者が選んで貼る壁紙となった。すると若者の好みの対象はコンサートのポスターにとどまらず、役者のプロマイド、映画ポスター、現代美術、現代写真へと広がった。
アシーナの成長はこの傾向と連動していた。この店舗が市場に手頃な価格のアートを供給すると、1970年代にはアシーナの名がポスターアートの代名詞になった。美術評論家からは大衆のために純粋美術を通俗化したとして非難された。まるでそれが悪いことのように。すでに一般的になっていた作品の複写を供給しただけでなくアシーナもいくつかオリジナルの傑作を生みだしている。
そうした1970年代のベストセラーのひとつに、J・R・R・トールキンの当時人気だったファンタジー3部作『指輪物語』のデザインがあった。この絵で魔法使いガンダルフと主人公フロドは一風変わったゴシップ様式で描かれ、ふたりをセピア色の枠が囲っている。1960年代の幻覚的な世界(サイケデリア)を思わせる作風だ。制作者のジミー・コーティはイギリスのアーティストで、後にザ・KLF、ジ・オーブといった音楽ユニットのメンバーとして有名になった。
アシーナのオリジナル作品のうちとくに有名なのが、10年を隔てて発行された2点で、10年にわたる社会変化のモノサシとして見ることができる。先に出た作品は「テニス・ガール」の名でひろく知られている。テニスコート若い女性の後ろ姿を捉えた構図で、彼女はスコートをたくし上げているが、ちらりと見せるその下には下着をつけていない。いかがわしさと性差別をにおわせるこのショットは、写真家のマーティン・エリオットが場面設定をして、恋人のフィオーナ・バトラーにポーズを取らせている。当初1977年のカレンダーに使われ、その後ポスターとなり200万枚以上が売れた。
オリジナル作品が有名になったせいで、次から次へとパロディー版がつくられた。
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その10年後、アシーナは『子供 L'Enfant』を世に送りだした。『男と赤ちゃん Man and Baby』と呼ばれることも多いポスターだ。白黒のプリントで、上半身裸のマッチョな男性モデルが新生児を両腕で抱えている。1987年に登場したが、その2年前にはジーンズのリーバイスが、新時代の幕開けを告げるテレビ・コマーシャルを流していた。モデルのニック・カメンがコインランドリーで服を脱ぎ、トランクス1枚になるCMだ。セクシーな男性の体もあるのだという。今では当たり前に思えることが当時は革新的だった。若い女性のお尻のチラ見が、近代イギリスの海辺で売られていた下品でユーモラスな絵葉書と変わらなかった時代から、社会は少なくとも前進しはじめていた。
1990年代の初めにはアシーナの目抜き通りの店から客足が遠のきはじめ、1959年、アシーナ・グループは破産を申請した。かつてアシーナが君臨した市場では今日、IKEA(イケア)の額入りアートプリントが圧倒的シェアを誇っている。