じじぃの「科学・地球_316_新しい世界の資源地図・中国・コンテナ船」

How Container Shipping Works?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=YfDFKgGNP6s

コンテナ不足は深刻さを増している

海運業界の世界ランキング2022:日欧中でしのぎ、コンテナ不足で運賃急騰のゆくえ

2022/01/13 ビジネス+IT
コロナ禍でのコンテナ不足によって、需要がうなぎ上りとなり、コンテナ運賃が急騰し、活況を呈している海運業界。
だが、国際競争は激しさを増し、海を越えたアライアンスや経営統合が進んでいる。コンテナ部門ではイタリア発祥のMSCデンマークのマースクなどの欧州勢が上位を独占する一方で、中国や台湾などアジア勢の追い上げも激しい。その中で、かつて「海運王国」と呼ばれた日本勢も、日本郵船商船三井川崎汽船の大手3社がオーシャン・ネットワーク・エクスプレスとしてコンテナ事業を統合するなど合従連衡が進んでいる。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/28070

新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突

ヤーギン,ダニエル【著】〈Yergin Daniel〉/黒輪 篤嗣【訳】
地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?
エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける地図を読み解く衝撃の書。
目次
第1部 米国の新しい地図
第2部 ロシアの地図

第3部 中国の地図

第4部 中東の地図
第5部 自動車の地図
第6部 気候の地図

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『新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突』

ダニエル・ヤーギン/著、黒輪篤嗣/訳 東洋経済新報社 2022年発行

序論 より

本書では、この新しい地図を読み解いていきたい。世界における米国の地位はシェール革命でどう変わったか。米国vsロシア・中国の新冷戦はどのように、どういう原因で発生しようとしているか。新冷戦にエネルギーはどういう役割を果たすのか。米中の全般的な関係は今後、どれくらい急速に(どれくらいの危険をはらんで)「関与」から「戦略的競争」へ推移し、冷戦の勃発と言える様相を帯び始めるか。いまだに世界の石油の3分の1と、かなりの割合の天然ガスを供給している中東の土台はどれくらい不安定になっているか。1世紀以上にわたって続き、すっかり当たり前になっている石油と自動車の生態系が今、新たな移動革命によってどのような脅威にされされているか。気候変動への懸念によってエネルギー地図がどのように描き直されているか、また、長年議論されてきた化石燃料から再生可能エネルギーへの「エネルギー転換」が実際にどのように成し遂げられるか。そして、新型コロナウイルスによってエネルギー市場や、世界の石油を現在支配しているビッグスリー(米国、サウジアラビア、ロシア)の役割はどう変わるのか。
第1部「米国の新しい地図」では、突如として起こったシェール革命の経緯を振り返る。シェール革命は世界のエネルギー市場を激変させ、世界の地政学を塗り替え、米国の立ち位置を変えた。シェールオイルシェールガスが、21世紀の現在まで最大のエネルギーイノベーションであると言える。
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第3部「中国の地図」は、いわゆる「国恥の100年」(100年来の屈辱)と、ここ20年にわたる経済力と軍事力の飛躍的な伸長、それに世界最大になろうとしている経済(見方によってはすでにそうなっている)のエネルギー需要にもとづいて描かれる。中国は地理から軍事、経済、テクノロジー、政治にいたるまで、あらゆる方面で勢力を拡大しつつある。「世界の工場」は今、バリューチェーンの上流にのぼって、今世紀の新産業で世界の盟主になろうと狙っている。また、南シナ海のほぼ全域に対して、自国の領有権を主張してもいる。南シナ海は世界の海上通商路の枢要をなす海域であり、現在、米中の戦略上の対立が最も先鋭化している場所だ。中国よるこの領有権の主張にはエネルギーの問題が大きく関わっている。
中国の「一帯一路」構想は、アジアとユーラシア、さらにその先まで広がる経済圏を描き直し、世界経済の中心に「中華帝国」を据えようとするものだ。

第3部 中国の地図 より

第23章 中国の新たな宝の船

南シナ海の争いには貿易そのものも関係している。
中国が急速な経済発展を遂げた理由はいくつもある。しかし、ニュージャージー州ニューアーク海上輸送革命が起こっていなければ、不可能だっただろう。その革命によって世界貿易の地図が描き替えられて、世界経済――ひいては中国経済――は一変することになった。
革命を起こした人物のことは、中国ではあまり知られていない。というより、世界であまり知られていない。その人物はノースカロライナ州の、かつて「シュー・ヒール」(靴のかかと)と呼ばれていた小さな町出身の起業家で、名をマルコム・マクレーンといった。「1分で1つのアイデアを思いつく男」という異名を持つ。運輸の歴史においては最重要人物の1人だ。

小さなトラック運送会社を立ち上げ、大企業にまで育てたマクレーンは、さらに世界の海上輸送にコンテナ革命を起こして、現在の世界経済の土台を築いた。「革命」といっても、コンテナに情熱的な要素や派手さはまったくない。

長さ約6メートルか約12メートル、高さ約2.6メートルか約2.9メートルのスチール製の箱だ。ある作家が書いているとおり、「エンジンも、車輪も、帆もない。船や、鉄道や、飛行機、あるいは船乗りやパイロットに憧れる者も、コンテナには魅了されない」。単なる貴族の箱にすぎない。しかし、その箱は輸送コストを減らし、船への積み下ろしの作業時間を短縮し、船やトラックや列車間の荷物を容易にすることで、経済的な問題を大きく取り除いた。そのおかげで、製造業が地域的なビジネスからグローバルなどビジネスへと変貌を遂げた。「この地味なイノベーションがなかったら、あらゆる主要な経済活動で未曽有の急成長が見られるということはなく、世界貿易の飛躍的な拡大は怒らなかっただろう」と述べているのは、経営学ピーター・ドラッカーだ。
マクレーンは一度も船に乗ったことはなかった。コストを下げたい。東海岸からテキサスへ荷物を運ぶコストを少しでも安くしたい、という思いがあるだけだった。アイデアが浮かんだのは、港湾労働者がトラックから船に「荷物を1個1個、どっこいしょと積み込む」のをトラックの中で待っていたときだ。しだいに待ちくたびれてくると、ふと疑問が湧いた。どうしてトラックの車体ごと船に載せて、運んでしまわないんだ、と。
1956年4月26日、ニュージャージー州ニューアークの港で、クレーンを使って58台のトラックの車体(車輪と運転席部分は外された)が第二次世界大戦時代のタンカーに積み込まれた。行く先はテキサスだった。「水上輸送の経済性と、陸上輸送のスピードと柔軟性とを組み合わせた方法が、ここに誕生した」と、マクレーンは宣言した。これが始まりだった。1960年初頭には、コンテナ輸送がビジネスとして本格化した。その先頭に立ったのはマクレーンの会社だった。もはや荷物を小分けにして、木箱や大袋に詰め、港で何日もかけて港湾労働者に運んでもらう必要はなかった。そのための多額の費用も発生しなかった。コンテナにまとめて詰め込んで、クレーンでいっぺんに積み下ろしをすることができた。作業員は高いところにあるクレーンの運転室にいた。わずか数年前、1954年の映画『波止場』で描かれていた港湾労働者の世界は過去のものになった。
1965年、コンテナ船の初の定期便が米国と欧州間で就航した。しかしアジアに目に向けていたマクレーンは、まずベトナムの米軍への物質の供給を始めた。これが太平洋におけるコンテナ輸送の先駆けとなった。
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世界の10大コンテナ港のうち、7港が中国にあり(世界最大の上海港を含む)、世界のコンテナ輸送の4割以上を中国が占める。一方、中国のGDPも4割近くが貿易で占められている。製品が滞りなく国外へ送られ、原油などのコモディティが滞りなく国内に届くことは、中国の経済成長に必要不可欠であり、政治や社会の安定の基盤にもなっている。コンテナ輸送は今では世界の屋台骨だ。しかし、中国や世界がどれほどコンテナ輸送に頼っているかが目に見えてわかったのは、2020年、コロナ禍で世界貿易の多くが停止したときだった。
マクレーンは2001年にこの世を去った。葬儀の日、海運業界はマクレーンの功績を称えた。