じじぃの「終章・ニセ情報から身を守る・まず冷静であること!ディープフェイク」

A New Way To Deepfake - BBC Click

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ToudDwGI62I

TikTokで流行のダンスを踊るエリザベス女王

ディープフェイクで作った「エリザベス女王のクリスマスメッセージ」がテレビで放映される

2020年12月24日 GIGAZINE
イギリスのエリザベス2世は1952年以来ほぼ毎年、女王として国民に向けてクリスマスメッセージを発信しています。
クリスマスメッセージは、公共放送であるBBCを通じて12月25日に放映されますが、2020年は同じく公共放送であるチャンネル4で「ディープフェイクで作られたエリザベス女王によるクリスマスメッセージ」が放映されるそうです。
なお、テレビで放映される完全版では、以下のようにエリザベス女王が机の上に乗って、紙吹雪が舞う中、TikTokで流行のダンスを踊るという場面もあるようです。
https://gigazine.net/news/20201224-deepfake-queen-on-tv/

『ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち』

ニーナ・シック/著、片山美佳子/訳 ナショナル ジオグラフィック 2021年発行

はじめに より

ディープフェイクとは?

ディープフェイクは、AIを使用して改ざんもしくは生成されたメディア(写真、音声、動画など)のことだ。技術の進歩により、フォトショップなどの画像編集ソフトウェアやインスタグラムのフィルターを使うことで、誰でも簡単にメディアを加工することができるようになった。
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インフォカリプス(Infocalypse)は2016年に米国の科学技術者アビブ・オバディアが作った、情報(infomation)と世界の終焉(apocalypse)を組み合わせた言葉だ。オバディアは、社会に有害な情報がまん延していると警告し、この社会がもはや対処できない危機の入口に差し掛かっているのではないかと問いかけている。

第7章 まだ、希望はある より

世界に広がるインフォカリプスの危険性を理解していただけたろうか。情報が置かれている環境がすっかり腐敗し、あらゆる情報が信用できなくなる未来が、もうそこまで来ている。
この事実を知った人間として、これ以上状況を悪化させず、改善するためにできることは何だろうか。私たちは、分極化したインフォカリプスや政治活動の舞台に引きずりこまれることなく、小さくても意味のある言葉で、一人一人の努力と熱意を壊れた環境の修復に向けることが一番大切だいと思う。まず、冷静にならなくてはいけない。海で離岸流に巻き込まれたときに助かるためには、流れに逆らうのではなく、横に向かって泳ぐことが大事だ。同じように、インフォカリプスに抵抗するためには。その中で溺れるのではなく、外に逃れる必要がある。情報のエコシステムの中身ではなく、構造に目を向けるのだ。「混乱を極めたディストピア」が永遠に続くことを阻止するのは、理解を深め、守備を固め、反撃することが必要だ。

1、理解を深める

私たちの情報のエコシステムは、信用できない危険な状態に陥っている。「ニセ情報」、「誤情報」、「陰謀」、「フェイクニュース」といった言葉は、時に新型コロナウイルスの関連でよく耳にするようになった。この傾向が、情報のエコシステム全体に広がる深刻な腐敗の一端であることを説明するために、的確な言葉が必要だった。そして、2016年にアビブ・オバディアが作った「インフォカリプス」という言葉にたどり着いた。
ここ10年で進行したインフォカリプスは、今後もっと広がるだろう。「悪質な情報」は昔からあったが、今私たちが直面している脅威は、これまでのものとは規模も影響力も違う。インフォカリプスがいうから起きているか正確にはわからないが、21世紀の現象であることは確かだ。今世紀になって、情報のエコシステムは、インターネット、スマートフォンソーシャルメディア、コミュニケーションの手段としての動画など、人々の交流手段の技術革命と結びついた。いま、私たちは急速に進化するディープフェイクという新しい脅威にに直面している。本書で説明したように、インフォカリプスにおける誤情報とニセ情報による危機は、現実の世界であらゆる人々を脅かすことになるだろう。

2、守備を固める

インフォカリプスについて理解ができたら、守りを固めよう。
正確な情報。インフォカリプスに対する防御で一番大切なのは、何といっても正確な情報を得るようにすることだ。新型コロナウイルス感染症パンデミックによって、それがいかに重要なことが示された。これまで以上に、信用できるジャーナリストとファクトチェック団体(情報の正確性を検証する組織)を支えていく必要がある。ファクトチェックに関しては、すでに数十もの団体が存在する。米国では、2008年の大統領選挙の際のファクトチェックでピュリッツァー賞を受賞したポリティファクトの他、スノープス、APファクトチェック(AP通信社から)などがある。ヨーロッパでは、AFP通信ファクトチェック、フルファクト、そしてBBCのリアリティーチェックの3団体が有名だ。

3、反撃に出る

「混乱を極めたディストピア」になるものを阻止するためのパズルの最後のピースは「反撃」だ。後手に回るのではなく、先手を打つことが肝要だ。もちろん1人の力で成し遂げられる挑戦ではない。皆の志を一致させることが大切だ。ロシアがガーナで行った干渉作戦である二重詐欺作戦を例にとってみよう。CNN、グラフィカ、フェイスブックツイッターが協力してロシアの策略を暴いた。その際は1回限りのプロジェクトのために各社の力が結集されたのだが、日頃から協力していけるような常設の仕組みがあれば、もっと有益だろう。
私が出会ったディープ・トラスト・アライアンスは、そういった協力の仕組みを構築する目的で設立された組織だ。設立者でCEOのキャスリン・ハリソンは、長いことIBMで働いていて、ニセ情報やディープフェイクのような複雑な問題の解決には、政策、技術、経済界が三位一体となる必要があると感じたという。

未来の希望

人類は、新しい発展の段階を捉え、コミュニケーションの方法が激変した。その副作用の1つとして、私たちの情報のエコシステムは急速に信用できない危険なものになっている。だが、希望はある。インフォカリプスに対抗する勢力がすでに集結し始め、力をつけている。私たちが脅威を理解できるよう支援し、皆を守るための解決策や協力体制の構築を始めている。ただし、私たちの協力も欠かせない。一人一人が脅威を理解し、守りを固め、反撃することが大切だ。もたもたしてはいられない。「混乱を極めたディストピア」が当たり前の世の中として定着するのを避けたければ、今やらなければならない。自分がシェアする情報に気をつけてほしい。情報源を確認しよう。何か間違った情報を得た場合には、自ら訂正してほしい。自分自身に政治的な偏りがないか気をつけよう。疑い深くなることは大事だが、歪曲した見方をするのも良くない。

エストニアの人々がロシアに対してしたように、インフォカリプスに対して「ノー」を突き付けるチャンスは、まだ残されている。