じじぃの「科学・地球_310_新しい世界の資源地図・地政学の再均衡・シェールガス」

ロシアの天然ガス生産量は世界何位?(2014年版)

2016年01月23日 ロシアの地下資源がよくわかるブログ!
かつてはロシアが世界最大の生産国でしたが、2009年にアメリカに抜かされ、現在は世界2位となっています。アメリカの生産量が急激に増加したのは、シェールガスが商業ベースに乗ったことが大きな理由となっています。
ロシアは3位カタールを大きく引き離し、堂々の2位ですが、2014年は前年比-4.3%と大きく減少しています。他の国が生産量を増やす中、一体ロシアはどうしたのでしょうか?
http://russianresources.seesaa.net/article/432915291.html

新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突

ヤーギン,ダニエル【著】〈Yergin Daniel〉/黒輪 篤嗣【訳】
地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?
エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける地図を読み解く衝撃の書。
目次

第1部 米国の新しい地図

第2部 ロシアの地図
第3部 中国の地図
第4部 中東の地図
第5部 自動車の地図
第6部 気候の地図

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『新しい世界の資源地図――エネルギー・気候変動・国家の衝突』

ダニエル・ヤーギン/著、黒輪篤嗣/訳 東洋経済新報社 2022年発行

序論 より

本書では、この新しい地図を読み解いていきたい。世界における米国の地位はシェール革命でどう変わったか。米国vsロシア・中国の新冷戦はどのように、どういう原因で発生しようとしているか。新冷戦にエネルギーはどういう役割を果たすのか。米中の全般的な関係は今後、どれくらい急速に(どれくらいの危険をはらんで)「関与」から「戦略的競争」へ推移し、冷戦の勃発と言える様相を帯び始めるか。いまだに世界の石油の3分の1と、かなりの割合の天然ガスを供給している中東の土台はどれくらい不安定になっているか。1世紀以上にわたって続き、すっかり当たり前になっている石油と自動車の生態系が今、新たな移動革命によってどのような脅威にされされているか。気候変動への懸念によってエネルギー地図がどのように描き直されているか、また、長年議論されてきた化石燃料から再生可能エネルギーへの「エネルギー転換」が実際にどのように成し遂げられるか。そして、新型コロナウイルスによってエネルギー市場や、世界の石油を現在支配しているビッグスリー(米国、サウジアラビア、ロシア)の役割はどう変わるのか。
第1部「米国の新しい地図」では、突如として起こったシェール革命の経緯を振り返る。シェール革命は世界のエネルギー市場を激変させ、世界の地政学を塗り替え、米国の立ち位置を変えた。シェールオイルシェールガスが、21世紀の現在まで最大のエネルギーイノベーションであると言える。
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第2部「ロシアの地図」では、エネルギーフローの相互作用や地政学的なせめぎ合い、さらには30年前のソビエト連邦崩壊と、ロシアを再び大国にしたいというウラジーミル・プーチンの宿願のせいで、なかなか決着しない国境問題から生じる火種について論じる。ロシアは「エネルギー大国」だが、経済面で石油と天然ガスの輸出に大きく依存している。ソ連ソビエト社会主義共和国連邦)時代同様、現在も、それらの輸出がもたらしうる欧州への政治的な影響力については、激しい論争が巻き起こっている。ただし、欧州や世界の天然ガス市場で起こった変化によって、そのような潜在的な影響力は消し去られている。

第1部 米国の新しい地図 より

第8章 地政学の再均衡(リバランス)

サンクトペテルブルクは極北にある。毎月6月、夏の白夜の季節になると、ツァーリ国時代にロシアの首都だったこの都市では、1日中ほとんど太陽が沈まない。しかし近年は、白夜の魔法と美しい宮殿や運河のほかにも、世界各地からここに大勢の人が集まってくる理由がある。毎年、この時期に1万人近い人がここを訪ねるのは、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムが、地元の出世頭ウラジーミル・プーチン大統領の後援で開かれるからだ。
2013年、プーチンはドイツのアングラ・メリケル首相とともにステージに上がった。米国のシェール革命が世界に与える影響が認識され始めた頃だ。2人の反りが合わないことは誰の目にも明らかだった。2人のやり取りはそっけなく、どちらも相手より聴衆の方を見ていることが多かった。
公式のインタビューが終わると、次に2人は聴衆から質問を受け付けた。最初の質問はプーチンに向けられたもので、ロシアの産業を多様化して、コモディティへの過度の依存を減らすことについてだった。しかし質問者は何気なくシェールガスにも短く触れた。するとプーチンはこれに色をなして噛みつき、シェールガスを激しく非難し始めた。東欧でシェールガス開発を行うべきではないと言い、シェールガスを危険きわまりないもの、環境を破壊するもの、土壌や水を汚染するものとまくし立てた。質問者は座席にへたり込んだ。
プーチンがこれほどまで激したのは、シェールが地政学上の問題になっていたからだ。当時、天然ガスの世界最大の生産国であり、なおかつ欧州における主要供給国でもあったロシアにとって、シェールは脅威だった。世界中で、非在来型革命は単に石油や天然ガスの流通に影響するだけではないことがはっきりしてきていた。それは各国の相対的な地位を変えうるものだった。
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2016年3月、原油を満載したスーパータンカーがメキシコ湾岸の港から出航し、パナマ運河を通過して太平洋へ出た。行き先は中国だった。顧客は、中国石油化工。中国の2大石油会社の1社であり、世界で最も多くの原油を買っている企業の1つでもある。「米国の原油輸出はグローバル市場にとっていいニュースだ。アジア・太平洋地域の製油所はそのおかげで供給源を多様化できる」と、中国石油化工の重役は述べた。数ヵ月後、別のタンカーが深圳に到着し、中国へ輸出された最初の米国産LNGが陸揚げされた。これらの航海によって示されたのは、限られたエネルギー資源をめぐって米中のあいだで壮絶な争奪戦が繰り拡げられることになる、という、わずか数年前までまことしやかに語られていた予測は、当たらなかったということだ。世界のエネルギー供給はあり余るほどあり、中国と米国は世界の市場を通じて相互に利益をもたらせる。シェール革命は米中間のおもな争点の少なくとも1つを取り除き、両国のあいだに――貿易戦争と新型コロナウイルスの責任をめぐる論争が続く両国のあいだに――新しい利害の一致を生み出している。
シェールのおかげで、アジアの国々での米国の「存在感」も、戦略的に重要な新しい形で高まった。シェールはエネルギー資源の多様化をもたらすことで、アジアの国々の中東やホルムズ海峡への依存を減らし、LNGの選択肢を増やした。米国はインドに石油や天然ガスを供給している複数の国の一国にすぎないが、その供給量の増加に伴って、両国の関係はより緊密になっている。過去にはあまり良好と言えなかった両国関係に重要で前向きな側面が新たに付け加わった。
日本の企業や政府も、米国の石油・天然ガスの輸入に積極的だ。日本はそれらの供給を、対米貿易黒字を減らすうえで重要なものとして、また世界のエネルギー安全保障に役立つものとして捉えている(日本では石油の99%、天然ガスの98%が輸入されている)。2011年の福島での原発事故以前、日本の電力の30%は原子力発電でまかなわれていた。2020年時点でその数字は5%以下まで低下している。代わりにLNGが発電燃料として重要になり、その穴の大半を埋めた。2020年現在、国内の電力の40%近くがLNGの火力で発電されている。
韓国は本書執筆時点で、米国のLNGの最大の購入国だ。韓国の政府高官の発言にあるとおり、米国の天然ガスという選択肢は「従来の供給国との交渉にも役立っている」。また韓国が米国から天然ガスを多く買えば、それだけ貿易黒字も減る。これは韓国政府もはばからずに認めている。

2018年の秋、当時はほとんど注目されなかったが、ある歴史的な出来事があった。米国がロシアとサウジアラビアを抜いて、世界最大の産油国の座に返り咲いたのだ。これはじつに40年以上ぶりのことだった。