じじぃの「科学・地球_304_人権の世界ハンドブック・死刑の廃止」

国際人権団体アムネスティ・インターナショナル 2020年の死刑執行数を報告

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gGTjQGyprNI

死刑制度の世界の現状地図

次の図は2022年3月時点における世界各国の死刑制度の状況を表した地図である。
青  死刑廃止
緑  戦時の逃走(敵前逃亡・軍事施設からの脱走など)、反逆罪などの犯罪は死刑あり。それ以外は死刑を廃止
濃黄 法律上は死刑制度を維持。ただし死刑を過去10年以上実施していない。もしくは、死刑を執行しないという公約をしている国
赤  死刑存置

世界の死刑制度の現状

ウィキペディアWikipedia) より
2019年6月現在、世界には206ヵ国ほど存在している中で、国際的には死刑が廃止される方向性にあるとされるが、現在も死刑制度を存置している国も少なくない。
2016年では、死刑を全面的に廃止している国、国家を暴力で破壊しようとする犯罪を除いて通常犯罪は死刑を廃止している国、法律上死刑があるが最近10年間以上死刑の執行が停止されている国を合計すると、世界の国家数単位では多数派である。
国際連合の2016年度の人口統計によると、人口が1位の中国、2位のインド、3位のアメリカ合衆国、4位のインドネシア、6位のパキスタン、7位のナイジェリア、8位のバングラデシュ、11位の日本、13位のエチオピア、14位のベトナム、15位のエジプト、17位のイラン、18位のコンゴ民主共和国、20位のタイ、世界の諸国の人口規模ランキングの上位10ヵ国中の7ヵ国、上位20ヵ国中の14ヵ国が、死刑制度があり、死刑判決と死刑執行がある国なので、死刑判決と死刑執行がある国の人口は、世界の人口規模単位では50%以上の多数派になっている。

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『地図とデータで見る人権の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、土居佳代子/訳 原書房 2021年発行

人権の歴史 より

人権は時を超えるものとしてイメージされるべきではない。それは政治的・哲学的思想のゆっくりとした成熟ののちに、ある時期、ある場所、すなわち17世紀と18世紀ヨーロッパで姿を現わした。
1789年にフランスでおごそかに宣言され、その後徐々に法文に組み込まれた「人間と市民の権利宣言」も同様に社会の精神構造と慣行に根づいたものである。こうした具体化は民主主義体制の定着と強化をともなった。だがこの具体化が不完全で、さらには脆弱であったことは、20世紀前半の、独裁への回帰や、全体主義あるいは第2次世界大戦の残虐性の経験が示すとおりである。

死刑――世界中での廃止に向けて?

死刑の廃止は、おもにヨーロッパで現実となった。1948年には8ヵ国だけだったのが、戦後から国連加盟国198国中142ヵ国と一気に増えて、法律上あるいは事実上の死刑廃止国となった。欧州人権条約は1950年にはこれに言及していないが、その後、第6追加議定書(1983年、平和時の死刑禁止)第13追加議定書(2002年、戦時の禁止)が46ヵ国に批准された。

いまだに対照的な状況

ヨーロッパ(ベラルーシを除いて)はいまや死刑のない地域となっている。欧州人権裁判所判例のなかで、生命の権利の名においてそれを留意し、国際刑事裁判所の法規はもっとも重い罪(集団大虐殺(ジェノサイド)や人道に対する罪)にかんしても死刑を定めていない。フランスでは、1981年の廃止の後、2007年に憲法に「あらゆる状況における」死刑禁止を組み入れた。2001年以降テロリズムによって、拷問に対する議論がふたたび舞台に上がったが。極刑については同じことにはならなかった。死刑による抑止効果はないという多くの研究が一致をみ、優位を占めた。
だがこうした動きがパラドックスを隠してはならない。アメリカは暴力的な文化で強調されることが多いが、均質のブロックを形成しているわけではない。50州のうち18州が廃止しているし、4州は実際上廃止している、また1847年から廃止したミシガンや1853年からのウィスコンシンのような州もある。全体の処刑件数は減っている。最近では、メリーランド州(2013年)とコネティカット州(2012年)に先んじて、イリノイ州が2011年に死刑廃止の16番目の州となった。2017年に処刑を行なったのは8州だけである。連邦最高裁判所は、1972年に違憲として廃止したのち、1976年から復活させた(未成年と精神病患者は除外)。最高裁は、たとえその極端な形式厳守がある受刑者を死の廊下で何年も待たせることになっても罪は残酷でも異常であってもならない(第8修正条項)、といっている。
国家の絶対秘密のもとで、中国は死刑を科しているが、件数を減らし、最高裁判所最高人民法院)に再審の権限をあたえている。中東の国のなかには、シャリーアの名のもとに死刑を正当化している国もあるが(サウジアラビアやイラン。姦通罪は石打ちで処刑される)、その他は事実上廃止している(たとえばモロッコアルジェリアチュニジア、マリ)。アムネスティ・インターナショナルによると、今日死刑の84%を実施しているのは5つの国である(中国、サウジアラビアイラクパキスタン、イラン)。

廃止と代替刑

しかしながら、ヨーロッパにおける廃止の勝利とほかの国々の野蛮さを対立させるような図をまともに受け止めてはいけない。死刑が廃止された地区でも称賛するのは注意の必要がある。というのも、なぜイリノイ州などは死刑を廃止する一方で終身刑を強化しているのだろう? 自由の希望なしで人を閉じ込めることは、死刑の役割と同等なのではないだろうか? 廃止に集中するあまり、長期的に気を配らない危険をおかしている。これは実際、死を待つ刑罰と同じことだ。最近もフランスの刑務所で、癌や心臓発作のよる死亡例がみられたが、それは彼らが最期の瞬間まで危険だとみなされていたからである。
廃止論者の仕事は、世論を安心させることができるような代替案があるとき、よりよく遂行できる。