じじぃの「科学・地球_307_人権の世界ハンドブック・移動の自由」

【パスポートランキング2022】最強のパスポートはどの国?@山尾加奈子 [帰化・永住 行政書士]

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=dGgKKK_XV_g

日本のパスポートが世界1位になりました【ビザなし渡航国数No.1】

2021年7月30日 ライトラ
●パスポートランキング
1位:日本(190ヵ国)
2位:シンガポール(189ヵ国)
3位:韓国、ドイツ、フランス(188ヵ国)
4位:イタリア、スウェーデン、スペイン、デンマークフィンランド(187ヵ国)
5位:アメリカ、イギリス、オーストリア、オランダ、ノルウェーポルトガルルクセンブルク(186ヵ国)
https://life-traveller.com/japanese-passport-no1

『地図とデータで見る人権の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、土居佳代子/訳 原書房 2021年発行

新しい権利の獲得 より

人権は一度あたえられた普遍の原理の集合体で構成されているのではない。人権には歴史があり、その歴史は今日もなお書きつづけられている。社会や経済の変化、そこから生じる新しい渇望、市民社会の当事者たちの要求、情報科学や生物医学(バイオメディカル)の技術の進歩が体現する挑戦などの影響下に、変容することをやめない。

戦争を根絶することができないかわりに、国際人道法は戦争を「文明化」しようと試みた。ニュルンベルクで生まれた国際刑事法は、性質からも規模からも全人類にかかわるような犯罪が無処罰であることに終止符を打とうとした。グローバルゼ―ションと将来の世代に対するわれわれの責任の認識が、新しい権利を構想するのを余儀なくさせる。たとえば環境や持続可能な開発にかんする権利、移動する権利などだが、これらは国家に互いに関連する義務を課している。

移動の自由、21世紀の人権

この21世紀の初頭にあって、移動は近代に欠くことのできない人の属性と考えられている。だが、移動は非常に不均等に割りあてられた権利の1つである。ヨーロッパ人またはアメリカ人が3ヵ月で180ヵ国以上を旅してまわれるところ、ロシア人は91ヵ国、中国人は70ヵ国、エリトリア陣屋スーダン人またはアフガニスタン人はほとんどどこへも行けない。なぜなら彼らはほぼどこでも、旅券の査証(ビザ)を義務づけられているからだ。

自由な交通――ユートピア

どこへでも行ける権利は、世界を股にかけて人間が自由に動きまわれる、国境のないユートピアと考えられる。
しかしながら、20世紀の終わり頃から、自分の国から出られる権利をあたえてくれるパスポートをだれでも手に入れられようになることが、鉄のカーテンが落ち、「南の国」でもこれが公布されるようになったのとともにほとんどの国で起こった。
この自国を出る自由は、アメリカ、カナダ、EU、オーストラリア、日本など、ほかからの入国を受け入れる大国による国境管理の強化をともなった。この壁による物理的な国境の増加(モロッコにあるスペインの飛び地セウタとメリリャ、ギリシャ/トルコ、インド/バングラデシュアメリカ/メキシコ)だけでなく、ビザによる制度上の国境が多くの異常な結果を導いた。2000年以降地中海での3万5000人の死者、収容所の増加、闇の通行料の発達、奴隷、売春、ゆすり、監禁、強姦、臓器売買の形での不法な旅行者の搾取である。何百万人もの不法入国者が通過途中や到達した国で貧困のなかに定住している。地球の3分の2の人々にとって、移動の自由は存在しない。ビザが手に入らないからだ。しかし貧しい国の金持ちは広く移動できることが多い。なぜなら金をもっていること、さらには高ドア職能をもっていることが、受け入れ国での滞在資格となるからだ。
多くの人にとっての、入る権利なしの出る権利は、ほかへ入るより自分の国を出るほうがむずかしかった過去に比べて逆転している。移民を受け入れ、植民地を増やしていた国々は新しく来る人々を求めていた。18世紀から19世紀なかばのヨーロッパでは好ましからざるといわれたマイノリティー、追放された人々、いくらかの特権をあたえられた人を除いて、出ていくことを禁止されていた、というのも人口は農業、軍隊、税収の源だったからだ。こうした出国についての閉鎖体制は、たとえば、パスポートをけちけちとしか発行しなかったポルトガルにおいて、1970年代まで続いたし(そこからピレネー越えを、ポルトガルの移民は「オ・サルト(跳躍)」とよんだ)、ソ連では「プロピスカ」とよばれた居住許可証と、1924年に一度は廃止された国内パスポートが1990年代初めまで続いた。国内での転居を制限していた居住許可証は、ソ連崩壊後、居住地登録となる。国内パスポートは現在もあるが、記載事項が変わった。中国は国境を開いた。北朝鮮のような世界でも数少ない国が、いまも国土から出るのを禁じている。キューバは最近になって許可している。農奴制、君主制、帝国、植民地体制、独裁制の国は、アルバート・ハッシュマン[1915-2012、ドイツの経済学者]の表現によると「足で投票する[不満があると出ていく]」人々に対し国境を閉じつづけたのだった。