A COVID-19 Vaccine and the Stock Market: Which Industries Could Benefit?
A COVID-19 Vaccine and the Stock Market
If You Invested $10,000 in BioNTech in 2019, This Is How Much You Would Have Today
Jul 14, 2021 The Motley Fool
The shares have moved progressively higher since our imaginary $10,000 investment. But the movement intensified this spring.
Why? BioNTech reported a billion-dollar quarterly profit thanks to COVID-19 vaccine sales.
https://www.fool.com/investing/2021/07/14/a-2019-biontech-investment-is-worth-this-today/
第9章 効果あり! より
結局、アメリカの大統領選ではドナルド・トランプが敗北し、医療従事者や科学者は一斉に、聞き取れそうなほど大きな安堵を漏らした。その直後の日曜日のことである。アメリカでは新型コロナウイルスの新規感染者数が、それまでの4日間連続で最高を記録し、土曜日には13万人近くに達していた。アメリカにおける感染症研究の第一人者であるアンソニー・ファウチも、アメリカは「数多くの苦しみ」に直面することになると訴えていた。だが、次期大統領に選ばれたジョー・バイデンはその勝利演説のなかで、「科学を基礎とする」計画に基づいてパンデミックに対処することを約束し、最前線で神経をとがらせていた人々を安心させた。これで、こうした人々の重要な仕事もいずれは、「新型コロナウイルスの制御」を専門とする対策本部が取り仕切るようになるに違いないと思われた。
だが、海の向こうのドイツにいるウールとエズレムは、とても安心などしていられる状況になかった。むしろ、通常は何ごとにもうろたえない2人が、前例のないほどの不安に駆られていた。
この不安は、アメリカの政権交代劇とはほとんど関係がなかった。これから数時間のうちに、外部委員会がワクチンの有効性に関する最初の評価を伝えてくることになっていたのだ。適正な評価に必要な感染者数は、つい先日32人から62人に増やされ、トランプを大いに落胆させたが、実際の感染者数は、数日前にはほぼ確実に62人を超えていた。とはいえ、ベルリンからブエノスアイレスまでの臨床医が試験をダブルチェックするのに、しばらく時間がかかる。治験の間ずっと毎週顔を合わせていたいた専門家のグループが、いまは世界中のそれぞれの自宅の居間で、「盲検を解除」していた。つまり、新型コロナウイルスに感染した被験者のうち、ワクチンの投与を2回受けた被験者が何人いて、プラセボを投与された被験者が何人いるかを確認していた。そして間もなく、プロジェクト・ライトスピードが初期の目的を達成できたのか、世界を席巻するウイルスに効果のあるワクチンを生み出せたのかどうかを算出しようとしていた。
これまでのところ、このプロジェクト最大の難関だった6ヵ国での数万人規模の被験者による治験は、意外なことにほとんど何の問題もなく進んでいた。感染の波の移動に伴い、ウイルスを追って世界中に治験を拡大しなければならなかったが、それでも前例のないペースで被験者を集められた。その間にビオンテックは、およそ12年間で数千回分の薬剤が製造していただけの企業から、わずか数週間で数万回のワクチンを製造できる企業へと成長した。オーストリアの協力会社ポリミューンの技術者チームも、mRNAを脂質で包み、世界中におよそ150ある試験会場に配送する材料を用意するために、24時間体制で働いてくれた。
アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、イーライ・リリーは、通常の手続きに従って試験を進めていたが、被験者に見られた原因不明の体調不良を調査するため、最終段階の試験を一時的に中断していた。ところが、ビオンテックとファイザーの試験では奇跡的に、そのような事象は一切確認されなかった。実際、この段階でも、人体による初めての試験のときとほぼ同じような、軽微な症状しか報告されていなかった。注射部位の痛み、頭痛、だるさ、軽微な発熱などである。日常生活に支障のあるほど重度な副反応を経験した被験者は、わずか4パーセントだった。これは「光速(ライトスピード)」で実施された試みに対しては、ほぼ完璧と言ってよかった。それでも、このプロジェクトに携わった科学者、医師、患者、臨床スタッフはおろか、ウールはエズレムにも、これまでのあらゆる努力が報われるのかどうかはわからなかった。このウイルスが、HIVやマラリアと同じように、人類がいまだ十分に対処できない無数の病原体の仲間入りを果たすことになるのか、それはまだ誰にも断定できない。
評価結果が届く正確な時間がわからなかったため、ウールはエズレムは何かをして気を紛らわせようとした。娘は、当時を回想してこう述べている。「2人ともずっと張り詰めた顔をしていて、みんな口をきくこともありませんでした」。ウールは珍しく何にも集中できなかったようで、気持ちを奮い立たせてくれる大好きな名言集をぱらぱらと拾い読みしていた。ちなみに、この決定的瞬間に至るまでの1週間、自分に言い聞かせていた金言は、「過ぎた日々をただ数えるのはよそう。過ぎていく日々そのものを有意義にするのだ」である。エズレムは、最近ずっと目の前の急用にかまけておろそかにしていたアイロンがけに専念していた。ウールは、妻の緊張を感じ取ってこう言ったという。「このワクチンをつくるために人間の力でできることはすべてやったじゃないか。あとは生物学的現実に身を委ねるしかない。どんな結果になろうと、重要なのは私たちが努力したということだよ」
午後8時ごろ、電話が鳴った。2人の娘は言う。「ママがもう泣きだしそうな顔をしていたときに、パパの電話が鳴ったんです。電話の相手は、『そこにいるのは君だけか?』みたいなことを言ってた」。電話のスピーカーから聞こえてきたのは、ファイザーのCROアルバート・ブーラの声だった。エズレムとその娘は、そのまま話を続けてとでも言うかのように、しきりにウールにうなずいて見せた。アルバートは、ポーカーフェイスを演じているかのような声音で「結果を知りたいかい?」と尋ねた。ウールはふざけて「いいや」と言ったが、このジョークは誰にも受けなかった。永遠にも思える数秒間ののち、アルバートが沈黙を破るように言った。「効果ありだよ!」そして、その言葉の効果を確かめるように一呼吸置くと、さらにこう付け加えた。「それどころか、効果大ありだ」
ウールはエズレムはかつて、まさにこの部屋で、中国に出現した謎の病原体に対するmRNAワクチンを開発できるかどうかを議論したのだった。それから10ヵ月もたっていないというのに、2人の最有力ワクチン候補が、感染予防の90パーセント以上の効果があることが確認されたのだ。
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