The Death Paradox (3/5 Complete)
死は、それ自体が「パラドックス」である
養老孟司さんに聞きました「“死”は怖くないですか?」
2020年9月9日 ハフポスト
●死が怖いなんて考えても仕方がない
━━子どもの頃、死んだら自分にとっての宇宙や世界はすべて終わりだと思うと、恐ろしく感じることがありました。生死への、そうした畏怖の念をいつの間にか忘れてしまったような気がします。
死ぬことなんて考えてもわからないでしょ。僕はコロナが嫌なのは、入院するのが嫌だから。死というのは、意識がなくなって醒めないだけなんだから、今夜寝るときと同じ。一度寝てしまったら、意識で起きてるわけじゃないんで。
僕は死を怖いと思ったことはないのでよくわからないですね。そんなことは考えても仕方がないです。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story-yoro-takeshi_jp_5f51a76ec5b62b3add3e43cf
死は、それ自体が「パラドックス」である
2022.1.20 Yahoo!ニュース
「死にたくない」「長生きしたい」……人類はこの感情を原動力に、都市をつくり、科学を発展させ、文化を築き上げてきました。
そして、「死」がもたらす人生の有限性が、一人ひとりの人生の充実に大きな役割を果たしているといいます。それはいったい、どういうことなのでしょうか。哲学博士で、ケンブリッジ大学「知の未来」研究所(Leverhulme Centre for the Future of Intelligence)エグゼクティブディレクター兼シニアリサーチフェローのスティーヴン・ケイヴ氏による著書『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』から一部を抜粋し、ビジネスパーソンの教養となり、今をより豊かに生きるための考え方を紹介します。1回目は、「人は必ず死ぬ。しかし誰もが、自分の死を正しく想像できない」ということについて。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9deaa0b861150a9928cbbe11d36305f747287195?page=1
【目次】
第1部 「生き残り」シナリオ ーStaying Alive―
第2部 「蘇り」シナリオ ーResurrection―
第3部 「霊魂」シナリオ ーSoul―
第4部 「遺産(レガシー)」シナリオ ーLegacy-
第1章 美女、来る――不死に向かって伸びる4つの道 より
「死のパラドックス」――人は必ず死ぬ。しかし誰もが「自分の死」は受け容れられない
私たちを際立たせているのは、もちろん、大きくて接続性の高い脳だ。この脳も、私たちが自らを期限に存続させるのを助けるために進化したのであり、生存のための奮闘には大いに役立つ。私たちは、自分自身や、未来や、さまざまな可能性を自覚しているので、適応し、精緻な計画を立てることができる。だが、自分自身に関して、恐ろしいと同時に不可解な視点を持つことにもなる。
一方では、私たちの強力な知性は、私たちも身の回りの他のあらゆる生き物同様、いつの日か死ななければならないという結論に情け容赦なく至る。それにっもかかわらず、その一方では、私たちの頭脳に1つだけ想像できぬものがあり、それは、死という、自分が存在しない状態そのものだ。それは文字どおり、考えられない。したがって、死は不可避かつ信じ難いものという印象を与える。これを私は「死のパラドックス」と呼ぶ。そして、その解決が不死のシナリオに形を与え、したがって、文明に形を与えている。
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というわけで、私たちはパラドックスを抱えている。
未来に目を凝らすと、永遠に生きたいという願望が満たされるように思える。いつの日か自分が存在しなくなることなど、考えられないように感じられるからだ。だから、私たちは自分の不死を信じている。
それでも同時に、毒ヘビから雪崩(なだれ)まで、自分の存在に対する無数の潜在的脅威を痛切に感じており、そこかしこで他の生き物が否応なく命を落とすところを目にする。だから、私たちは自分の死の必然性を信じている。私たちの過度の発達した知的能力が、お前は永遠だ、お前は永遠でない、死は事実だ、死は不可能だ、と相反することを告げているように思える。
ジグムント・バウマンの言葉を借りると、「死の概念は矛盾を孕んでいる。そして、そうであり続けて運命にある」となる。私たちの不滅性と、死の必然性の両方が、同等の力を持って私たちの心の中に現れてくるのだから。
不死への欲求は「人類の進歩」の原動力
こうした人間社会の際立った特徴は、死の必然性についての視点が孕む矛盾を解消する試みとしてしか理解のしようがない。著述家のブライアン・アップルヤードは、それを次のように総括している。
「誰もが死ぬ。したがって、私も死ぬに違いない。だがこれは想像できないので、私たちは不死を創出し、その所産が文明である」