じじぃの「生物学的遺産・遺伝という不滅!不死の講義」

リン・マーギュリス

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zOjXYiEurJ8

真核生物の進化

2014年5月30日 JT生命誌研究館
マーギュリスの仮説では、原核生物から真核生物が生まれる過程で少なくとも3回、独立した原核生物が壁のない真核生物の祖先に順次取り込まれ内部共生を始めることで、ミトコンドリア葉緑体、そして鞭毛の基底小体が発生したと考えている(内部共生)。
https://www.brh.co.jp/salon/shinka/2014/post_000008.php

ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』

ティーヴン・ケイヴ/著、柴田裕之/訳 日経BP 2021年発行

【目次】

第1部 「生き残り」シナリオ ーStaying Alive―
第2部 「蘇り」シナリオ ーResurrection―
第3部 「霊魂」シナリオ ーSoul―

第4部 「遺産(レガシー)」シナリオ ーLegacy-

第9章 遺伝という不滅――DNA、都市、生態系、ガイア、そして宇宙へ より

親から譲り受けた「古いカタマリ」

「私たちの死は終わりではありません。もし、子供たちの中で生き続けられるのなら」とアルベルト・アインシュタインは書いた。「なぜなら、彼らは私たちだからです。私たちの身体は生命の樹のしおれた葉にすぎません」。
友人が亡くなり、その未亡人を慰めるためにそう書いたとき、アインシュタインは「遺産のシナリオ」の後半、すなわち生物学的な不滅性の本質を捉えていた。それは、私たちは子孫の中で生き続ける、私たちと彼らとは深遠な形で結びついており、そのため何かきわめて重要な意味で同一の存在となっている、という信念だ。だから、個々の身体がしおれて死んでも、私たちは依然として、次世代の新緑の中で栄えることができるかもしれない。
生物学的な遺産を追求すれば、ある意味で、私たちは旅の出発点に戻ることになる。生存のための露骨な闘いと並んで、それは私たちが果てしない未来へと自らを持続させる試みの、最も本能的な手段だからだ。
世界中で無数の生き物が、今この瞬間もそれを試みている。求愛し、誘惑し、産卵し、射精し、離乳させ、巣を作り、ハーレムを形成している。アリストテレスが2500年近くまえに書いたとおり、「どの生き物にとっても…最も自然な行為は、その性質が許す範囲で、永遠性を帯びるために、動物が動物を生み出し、植物が植物を生み出すというように、自らに似たものを生み出すことだ」。
だが、永遠性を帯びることを可能にするためには、この生物学的な不滅性の主張は、単なるメタファー以上のものであることを証明しなければならない。あなたの一部が子供の中で生き続けると信じたからといって、その部分があなたの存続を確実にするに足ることにはならない。あなたが子供を通して存続して初めて、生物学的遺産は永遠に生きる道となる。だが、まさにそうなる、と強く主張することができる。ただし、自分自身の子孫との結びつきを大きく超える所まで進むことになるが。
人は生命の樹の自分自身の小枝から直接出てくる蕾(つぼみ)をとても誇りに思っているかもしれないが、それよりもはるかに重要なのが、根や枝を含めた全体との結びつきなのだ。
第8章で見たように、「遺産のシナリオ」に少しでも妥当性を持たせるためには、私たちは自己というものを、これまでとはまったく違う形で見てみなければならない。「生き残りのシナリオ」「蘇りのシナリオ」「霊魂のシナリオ」という、他の3つのシナリオは、身体という形であれ、心という形であれ、何か本人であると認識できる形態で生き続けることを約束する。だが、アレクサンダーの文化的遺産を通して、通常の意味で彼の身体あるいは心らしきものは何1つ存続しなかったことは明らかだ。だから私たちは、バンドル理論を見てみた。それは、人は単一の首尾一貫した自己ではなく、散り散りになっても存続できる記憶や考えなどの集まりであるとする理論だ。
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「子供は、私たちが信頼できる唯一の不死の形態である」と、著述家で俳優のピーター・ユスティノフは言っている。これは一般的な考え方で、それは、私たちの何かが子供たちに受け継がれることには議論の余地がないからかもしれない。したがって、生物学的な不滅性を望むのは、蘇りを待つほどやみくもなことではない。とはいえ問題は、その何かが、永遠の生を主張するに足るものかどうか、だ。今日私たちは、親の生物学的な遺産とは何かを、厳密に述べることができる。それは、親の遺伝子の50パーセントであり、それがやがて子供の遺伝子の半分を占め、もう一方の親由来の同量の遺伝子と組み合わさる。
当然、オリュンピアスも他のたいていの親と同じで、遺伝子以外のものもアレクサンダーに伝えた。それには、たとえば、自分と息子の英雄の血筋や、神聖な運命に対する信念が含まれる。だが、そのような価値観や考え方は、すでに考察した文化的遺産の領域に属する。
本章で注目しているのは、生身の人間にかかわる生物学だ。そして、生物学的に言うと、1つの世代から次の世代へと飛び移り、運び手の個々の身体よりも後まで残るのは、遺伝子だ。だから、進化生物学者リチャード・ドーキンスによれば、
「遺伝子は不滅だ……この世界における個々の生存マシンである私たちは、あと数十年生きることが見込める。だが、この世界の遺伝子は、10年単位ではなく、1000年あるいは100万年単位で計測せざるをえないほどの生を期待できる」
という。
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あなたが自分の子供の中で生き続けるのは、あなたが本当は、自分で思っているような別個の個体ではないからだ。あなたは、生命の鎖の幅が拡がった部分にすぎない。その鎖は、何十億年もの年月を経ており、いつ果てるとも知れない。したがって、誕生日があり、いずれ死亡日も持つ特定の人間としてあなたについて語るのは、便宜上の省略表現にすぎない。
ここで再度、進化生物学者のリン・マーギュリスを引用しよう。

「日常の、異論のない視点に立てば、『あなた』は今の年齢に加えて9ヵ月ほど遡った時点で、母親の子宮で始まった。ところが、もっと深い、進化の視点に立つと、『あなた』は生命の画期的な起源に始まったことになる。40億年以上前の、ぐつぐつ煮え立つ初期の地球のスープからの連続なのだ」