じじぃの「絶滅のシナリオ・無差別爆撃を生き延びた生物?理不尽な進化」

進化の叙事詩 : クラッシュコース・ビッグヒストリー #5

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=92oHNd8vFwo

無差別爆撃

大絶滅―遺伝子が悪いのか運が悪いのか? 紀伊國屋書店

ラウプ,デイヴィッド・M.(著)〈Raup,David M〉/渡辺 政隆(訳)
進化史において、生死を決定したのは、必然か偶然か。古生物学界の異才D.M.ラウプがコンピュータを駆使してその謎に迫る。
…生命が誕生してから35億年。その間に進化した生物は500億種。一方、現在の地球に生息するのは4000万種あまり。まさに99.9パーセントが絶滅したのだ。進化の歴史は絶滅の歴史にほかならない。迫りくる絶滅の足音…われわれは歴史から何を学び、活かすべきなのだろうか。

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『理不尽な進化――遺伝子と運のあいだ』

吉川浩満/著 ちくま文庫 2021年発行

第1章 絶滅のシナリオ より

絶滅率99.9パーセント

生物種はどれだけいるか――推定はむずかしい

この星にはどれくらいの種類の生き物がいるのだろうか。
正確な数は誰にもわからない。専門家による推定値にもかなりの開きがあるが、現在生息している生物種は少なくとも数百万は下らないだろうといわれている。昆虫の数次第では数千万とか億というオーダーになるかもしれないとのことだ。(井田 2010: 56-8)。
どうして昆虫の数次第なのかというと、それだけこの星には虫の種類が多いからということらしい。イギリスの高名な生物学者J・B・S・ホールデン神学者の一団に囲まれて神の特質について尋ねられたとき、ひとこと「甲虫へに異常な溺愛」と答えたという逸話が残されているくらいである(hutchinson 1959: 146)。
推定値にそんなに開きがあるなんてひどいと思うかもしれないが、正確な数などは知りようがないのだからしかたがない。既知の種数よりはるかに膨大と思われる未知の種数の推定が難しいのはもちろんのこと、既知の種数の統計すら正確にはわからないというのが実情だ(同じ生物のに別の名前がついていたりする)。また、そもそも種とはなにかということについても議論が絶えない。ここではとりあえず、種とは「生き物の種類」の基本単位のことだと、おおざっぱに考えておこう。
さて、それでは、これまでに地球上に出現した生物種の統計はどのくらいになるだろうか。つまり、いま生きている生物種だけでなく、すでに滅んでしまった生物種も含めて考えると、どうなるのだろうか。これを推定するには、現生生物をおもな研究対象とする生物学や生態学だけではなく、古生物学(alaeontology)の助けを借りなければならない。

ほぼすべての種が絶滅する――驚異的な生存率(の低さ)

各地に残された化石記録をもとに、当時の生物の特徴や系統関係などを明らかにする学問が古生物学だ。地層には、絶滅した過去の生物の遺骸や痕跡が化石というかたちで残されている。古生物学は、数万年から数千万年という地質学的な時間尺度でもって地層や化石を眺め、40億年ともいわれる生命の歴史を跡づけるのである。
アメリカの代表的な古生物学者のひとりであったデイヴィッド・ラウプは、現在地球上に生息している生物種はおそらく400万種は下らないだろうと推定する。そして、これまで地球上に出現した生物種の総数は、おそらく50億から500億ではないかと推定している(Raup 1991=1996: 17-8)。ここからわかるのは、現在いかにたくさんの生物種が存在していようとも、これまでに出現した生物種の数と比べたら、ほんのわずかなものにすぎないということだ。
ラウプの推定にもとづいて、いまなお存続している生物種を500万から5000万とし、これまでに出現した生物種を50億から500億として割り算をしてみよう。すると、いま生きている種はじつに全体の1000分の1でしかないということになる。つまり、これまでに出現した生物種の99.9パーセントはすでに絶滅してしまっているのだ。せっかくこの世に登場してきたというのに、ほとんどの種は冷たい土の中で永遠の眠りについているのである。
なんとも驚異的な生存率(の低さ)ではないか。気持ちいいほどの皆殺しである。母なる大地などと言うけれども、それは一大殺戮ショーの舞台でもあるということだ。地球にやさしくとか言うけれども、地球のほうは生き物にそんなにやさしくないのではないかと思えてくる。ともかく、いま生きている生物種は、倍率1000倍の狭き門をくぐり抜けた稀有な存在なのである。
すると、私たちヒトを含む現存種は過酷な生存レースを勝ち抜いたエリート中のエリートなのだろうか。倍率からいえばそういうことになるだろう。また、私たちが漠然と抱いている進化のイメージに照らしてもそういえそうだ。常識的な進化のイメージでは、優れた者たちは生き残るべくして生き残り、劣った者たちは滅びサルべくして滅び去っていくのだし、生き物たちはそのようにしてより優秀に、より完全な存在へと近づいていくのだから。そうでなければ、序章で触れたように、向上心旺盛な野心家たちがビジネスやマーケティングにかんする持論に「たえず競争し、適応し、進化をつづけよ」とばかりに進化論風の味付けをほどこそうと思うこともないだろう。
しかし、そうは問屋が卸さない。事はそんなに単純ではないのである。

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どうでもいい、じじぃの日記。
地球に生命が誕生し過去5億年の間に少なくとも、今日まで「大量絶滅」が、5回起きているといわれる。
ある説によると、これまでに出現した生物種の99.9パーセントはすでに絶滅してしまっているのだとか。
99.9パーセントを例えると、人口密集地に対する無差別爆撃をイメージするとわかりやすい。

人口密集地に数百機の爆撃機が押し寄せて、雨のように多数の爆弾を降らせる。

99.9パーセントの人が死に、生き延びた人が0.01パーセントしかいない。

焼き尽くされた住宅地にぽつんと、無傷の一軒家が存在するようなものだ。
絶滅のシナリオに中には、「運」とか「不運」とかもありそうだ。