[人類誕生CG] 370万年前の人類は虫を食べていた! | NHKスペシャル
NHKスペシャル 人類誕生
NHKスペシャル 人類誕生 第1集 「こうしてヒトが生まれた」
2018年4月8日 NHK
【ナビゲーター】高橋一生
か弱いアフリカの生き物に過ぎなかったサルが、なぜ700万年の間にヒトへと進化できたのか?
驚きと謎に満ちた人類進化の壮大な物語を、最新科学で解き明かす3回シリーズ。
人類が進化の階段を上るときに起きた重大な場面を、実写と見まがう超高精細なCGでドラマ化。あたかも人類の「偉大な旅=グレートジャーニー」に同行し、進化の一場面を目撃したかのような視聴体験をお届けする。
第1集は、ヒトが生まれるまでの“奇跡”。440万年前のアフリカに、二本足で歩き始めた奇妙な生き物がいた。サルと人の特徴を合わせ持ったこの生き物の登場こそ、人類進化の壮大な物語の始まりだ。いったい何のために二足歩行を始めたのか?最新の研究が明らかにした理由は、家族を守るためだったという。
●二足歩行で実を集める
初めて二足歩行したとみられるのは、約440万年前のラミダスという猿人。
身長120cmと小柄で頭は小さく、立つことに向いていそうなシルエットに見えます。骨盤はチンパンジーとは異なり、立ったときに上から重量がかかる内臓を支えられる横長の形状をしていて現代人に近いそう。
不利だったはずの二足歩行ですが、この後の大規模な地殻変動による乾燥で木々がまばらになり、食料の果実が手に入りにくくなったときに有利に働きます。 両手がフリーだったことで、遠くからエサを抱えて運んでくることができたのです。
https://www.nhk.or.jp/special/detail/20180408.html
文藝春秋 進化を超える進化
【目次】
序章
創世記
第1部 火
第2部 言葉
第3部 美
第4部 時間
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『進化を超える進化――サピエンスに人類を超越させた4つの秘密』
ガイア・ヴィンス/著、野中香方子/訳 文藝春秋 2022年発行
創世記 より
第1章 概念――宇宙が誕生し地上で進化が働きはじめ人類が登場する
すべての舞台の誕生
138億年前、ビッグバンが生み出した、反物質を上回る量の物質が、今日の宇宙で見られるすべての起源だ。
量子ドットのような小さななにかが爆発し、以来それは壮大な無秩序へと拡大し続けている。宇宙で唯一、生物の存在が知られるほしである地球では、その生物たちがエントロピーに戦いを挑み、混沌から秩序を生み出し、高エネルギー粒子から複雑な構造を作り上げている。
エネルギーは物質を生成し、物質は原子でできている。これらの小片が鉄になるが、ゾウの耳になるか、あるいは熱帯雨林の香りになるかは、その中心にある陽子の数で決まる。水素原子には陽子が1つしかないが、鉛には82個もある。しかし、水素と鉛の違い(および、わたしたちにとっての有用性)の多くを決めているのは、それぞれの原子がどうやってエネルギーを伝達するかであり、それは電子によって決まる。電子は量子力学の奇妙な法則にしたがって、原子核の外側を回転している。
原子内や原子間で電子が移動するたびに起きるエネルギー交換は、DNAの複製から赤ちゃんの笑い声まで、地球上のあらゆる反応の基礎になっている。
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生命の誕生は地球の物理的性質を根本的に変え、地球を呼吸する生きたシステムにした。植物が進化すると、それらの根は岩の崩壊を早め、川に侵食を助けた。光合成は地球システムに化学的エネルギーを吹き込んだ。動物は植物を食べることでこのエネルギーを取り込み、二酸化炭素を放出して地球を暖めた。そして死ぬと、岩だらけの地球に堆積層(土の層)をもたらした。
そのお返しに、地球の物理的性質は生物に影響を及ぼし、生物は、地質的、物理的、化学的条件に応じて進化してきた。過去5億年間で、超巨大火山の噴火、地殻変動、小惑星の衝突、大規模な気候変動などを原因として、大量絶滅が5回起きた。それぞれの後、生き残ったものは立ち直り、繁殖し、ランダムな遺伝子変異が何世代も受け継がれるにつれて進化した。環境は生物に進化圧を加え、生物はそれに適応した。このプロセスは双方向に働く。たとえば、植物が(遺伝子変異によって)砂漠での暮らしに適応すると、それらは砂漠を低木地帯や乾燥林と変え、次には、そうした変化が、どの種とどの遺伝子がそこで生き延びられるかに影響するのである。
人類の登場
6600万年前の6月末のある日、進化史に最大の亀裂が刻まれたことを、わたしたちは天に感謝すべきだろう。その日、エベレストが小さく見えるほど巨大な隕石が、秒速14キロメートル(弾丸の20倍以上)のスピードで飛んできて、現在、メキシコがあるユカタン半島に落下した。その衝撃は非常に強烈かつ急速だったので、隕石が地表に触れていないうちから、前方の大気にかかる圧力のせいでクレーターができた。衝突時、この巨大隕石は直径30キロメートルの穴をあけた。それはマントルに届くほど深く、衝撃波は地球全体を揺るがし、火山の噴火、地震、地滑り、炎の爆風を引き起こした。生き延びた生物もいたが、大半はそれに続く過酷な気候変動によって絶滅した。それまで1億数千万年にわたって地球を支配してきた恐竜は滅びた。この生態系の空席を埋めたのは、わたしたちの先祖である哺乳類だった。
それから1000万年ほど過ぎた頃、急激な気候変動のせいで世界は湿潤になり、熱帯雨林、ヤシ、マングローブなどが、北は現在のイギリス、カナダ、南はニュージーランドにまで広がった。北極海は摂氏20度ほどの温暖な膿になったが、海流は止まった。地球全体で海面が上昇し、大量の動植物が移動し、あるいは絶滅した。哺乳類は多様化し、現在見られ種の前身が多く出現し、その中には最初の霊長類もいた。その後、今からおよそ5000万年前にインドとアジアのプレートが衝突し始めた。大地は大きく褶曲(しょうきょく)し、ヒマラヤの大山脈が誕生し、巨大なチベット高原が隆起した。この作用は今日も続いている。こうした地理的変化は、気候と生態に劇的な影響を与えた。サルは新世界ザルと旧世界ザルの系統に分かれ、また、東南アジアモンスーンを含む新しい気候パターンが生まれた。一方、アフリカの角の下の火山活動は、その大陸の東側を縦断する巨大な裂け目(台地溝帯)を作った。急峻な山々と深い谷が次々に生まれ、地形は分断され、気候は変化した。このように劇的な環境の変化は、進化のチャンスを大いにもたらした。
人間の優れた色覚はこの時期に生まれた。ほとんどのサルの色覚は青と緑に限られているが、わたしたちの祖先は3つめの錐体細胞を獲得する遺伝的変異が起きて、赤色が見えるようになった。赤色を見分けられるようになったことは、有毒植物を避けたり、熟した実を見つけたりするのに役立った。熟した実はカロリーが高く、より少ないエネルギーで消化できる。こうして栄養状態が良くなった結果脳は大きくなった。果実を食べる霊長類は、草木を食べる霊長類より脳の容量が25パーセントも多い。
また、わたしたちの祖先が森を出てサバンナに暮らすようになったことは、進化におけるもう1つのターニング・ポイントになった。根本的な原因は、300万年前の地質学的イベントにある。
漂流していた南アメリカ大陸が、現在のパナマで北アメリカとぶつかった。これによって海流のコースが変わり、西に太平洋、東に大西洋とカリブ海が誕生した。熱帯の温かい海水は北極へ運ばれ、そこで冷やされて南に向かい、現在、全球海洋コンベアと呼ばれる地球規模の循環を生じさせた。それは世界の気候のほとんどに影響している。メキシコ湾流が形成され、その海流が北極を凍らせる水分を運び、一連の氷河時代をもたらし、降雨パターンをリセットした。その結果、東アフリカは乾燥し、サバンナの風景が生まれた。
数十万年かけて、わたしたちの祖先の身体はサバンナに適応し、その一方で、気候変動のせいで、それまでの生息地だった森が減っていった。1年のほとんどの期間、サバンナでは果実が採れないので、祖先たちは根や球根を食べたが、それらは硬いので噛むのに時間がかかった。
彼らは次第に社会集団に頼るようになった。こうして自己複製する化学物質のオーケストレーションから生まれた人類は、自己家畜化のプロセスを嬉々として歩み始めた。