じじぃの「科学・地球_115_46億年の物語・白い地球・全球凍結と温暖化のサイクル」

Scientists have witnessed in real-time a single-celled algae evolve into a multicellular

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=QM_njyRNDTo

リン・マーギュリス(Lynn Margulis)と彼女の著書

真核生物の進化

2014年5月30日 JT生命誌研究館
真核生物では、核と細胞質が膜で隔てられ、染色体が存在し、有糸分裂が行われ、ミトコンドリア等の細胞内器官が存在し、植物ではさらに葉緑体が存在している。
彼女がこの50ページにも及ぶ記念すべき論文を書いた時は、DNA 配列を比較する技術もなく、従って古細菌ドメインとして確立していなかった。この論文に書かれた仮説は、様々な真核生物と原核生物の詳細な観察と比較から着想しており、彼女の想像力の豊かさを窺い知れる。現在では当たり前のテクノロジーが全く利用できなかった時代とは言え、今読み返しても想像力に満ちており、古びた感じはしない。
マーギュリスの仮説では、原核生物から真核生物が生まれる過程で少なくとも3回、独立した原核生物が壁のない真核生物の祖先に順次取り込まれ内部共生を始めることで、ミトコンドリア葉緑体、そして鞭毛の基底小体が発生したと考えている(内部共生)。
https://www.brh.co.jp/salon/shinka/2014/post_000008.php

地球進化 46億年の物語 ブルーバックス

著:ロバート・ヘイゼン 訳:円城寺守 渡会圭子

はじめに より

岩石に刻まれた記録を調べるほど、生物と無生物のどちらも含めた自然界が、何度も形を変えているのがわかる。
これまで語られなかった壮大で複雑に絡み合った生命と非生命の領域には驚きがあふれている。私たちはそれらを分かち合わなくてはならない。それは私たちが地球だからだ。地球上の物質すべて、私たちの肉体をつくる原子と分子も、地球から生まれ、地球に戻る。私たちの故郷を知ることは、私たちの一部を知ることなのだ。
第1章 誕生 地球の形成
第2章 大衝突 月の形成
第3章 黒い地球 最初の玄武岩の殻
第4章 青い地球 海洋の形成
第5章 灰色の地球 最初の花崗岩の殻
第6章 生きている地球 生命の起源
第7章 赤い地球 光合成と大酸化イベント
第8章 「退屈な」10億年 鉱物の大変化
第9章 白い地球 全球凍結と温暖化のサイクル
第10章 緑の地球 陸上生物圏の出現
第11章 未来 惑星変化のシナリオ

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『地球進化 46億年の物語』

ロバート・ヘイゼン/著、円城寺守、渡会圭子/訳 ブルーバックス 2014年発行

第9章 白い地球 全球凍結と温暖化のサイクル より

崩壊

謎の多い18億5000万年前から8億5000万年前までの時代とは対照的に、次の数億年には、地表付近で地球史上最も急激で大きな変動があった。およそ8億5000万年前、地上の大陸塊の多くは、まだ赤道付近でまとまっていた。それが乾いてまったく生物のいないロディニア超大陸だ。孤立した火山島がわずかに存在するだけの広大な海ミロヴィアが、この植物も何もない赤い巨大大陸を取り巻いていた。大気中には現在に比べて酸素はごくわずかしか含まれず、紫外線を防ぐオゾン層が形成されることはなかった。現代の人間が当時にタイムトリップしたとして、酸素と日よけをじゅうぶんに持っていれば、沿岸で味気ない藻類を食べて、かろうじて生き延びられるかもしれないが、新原生代の生活は決して楽ではないはずだ。
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ロディニア以前からの独特の大陸と海の配置も、地球全体の気候変動に影響したかもしれない。海と陸では、日光を反射したり吸収したりする力、いわゆるアルベドがまったく違う。黒っぽい海はアルベドが低い。太陽エネルギーのほとんどを吸収し、その過程で温度が上昇する。乾いた不毛の陸地は逆に、太陽光を反射する。ロディニアのように乾燥した荒れた超大陸は、日光の大半を宇宙へとはね返していただろう。赤道には極よりも多くの太陽エネルギーが集まるので、大陸が赤道付近に集中して極が海という状況では、地球を寒冷化させる出来事が起こった場合、影響は大きくなる。
そのような地球規模の動きと、複雑なフィードバック・ループの詳細についてはまだ解明されていないが、比較的安定した時代のあとの新原生代の地球は大きな変化へと向かっていた。

スノーボール・アースとホットハウス・アース

7億4000万年前、地球は空前絶後の気候不安定な時代に突入した。それはすべて壮絶な氷河期から始まった。
氷河が存在していた場所には、それとはっきりわかる特徴的な沈殿物が残される。ほとんどは漂礫岩と呼ばれる指標となる石の、厚く不規則な岩石層だ。その中には砂、小石、角ばった岩石の破片、細かい岩粉が無秩序に入り混じっている。氷河の跡には、ゆっくり進む氷床にこすられて角が取れた岩盤の露頭も残される。迷子石や土手のようなモレーンも氷河があった証拠となるし、薄い層をなす年縞堆積物も、季節ごとに氷河湖へ水が流出していたことを示している。
7億4000万年前から5億8000万年前の岩石に、氷河の存在を示すそれらの証拠が、世界中のあらゆる場所で見つかっている。およそ7億4000万年前にゲク的な気候の変化が突然起こったという証拠は、数十年前から次々と見つかっていた。そんなとき、1998年8月28日付の『サイエンス』にハーバード大学のポール・ホフマンと3人の研究者が「新原生代の全球凍結(スノーボール・アース)」という衝撃的な論文を発表した。ホフマンらは、その時期に少なくとも2回、ただの氷河期が訪れただけでなく、地球の極から赤道まで完全に凍りついたと、それまで誰も考えたこともない理論を展開した。その主張の1つは、ナミビアのスケルトンコーストの岩石層の綿密な観察にあった。厚く堆積した漂礫岩とともに、氷河が赤道付近(緯度およそ12度)にあったことを示す古磁気学的な徴候が見つかった。それは高山にある山岳氷河でもなかった。その漂礫岩は明らかに浅い海の海面で沈殿したものだ。その時代、赤道付近はとても寒かったのだ。比較のため1番最近の氷河期を例にとると、氷河が緯度45度を越えることはなかったし、氷が最も広い範囲をおおっていた時期でさえ、非柿的暖かい熱帯が存在していたことが化石証拠から示されている。ところが新原生代には、赤道付近の海面位にまで氷が累積していた。ハーバード大学のチームはそれを示す確固たる証拠を見つけたのだ。以来、その現象はスノーボール・アースと呼ばれるようになった。

変化のサイクル

新原生代の地球に話を戻すと、7億年前、最初のスノーボール現象の終わりに、気候変化の転換期が訪れた。それには二酸化炭素の増加が大きな役割を果たしていた。メタンハイドレートから突然メタンが放出されたことも影響を与えた。地質学的にはほんの一瞬で(おそらく1000年未満で)、気候が大きく変化したはずだ。スノーボール・アースがホットハウス・アースに変貌し、気温は記録的なレベルにまで上昇した。
おそらく3000万年ほどの長きにわたって温暖な気候が続いたが、ホットハウス効果には終わりが見えていた。上昇していた大気中の二酸化炭素濃度が天井を打ち、しだいに低下し始めた。温室効果ガスの一部は岩石と反応して取り除かれた。むきだしの地表に、腐食性の高い炭酸が混ざった雨が降り注ぎ(大気中の二酸化炭素が高濃度になった結果)急速に風化が進む。無機栄養の流入と日光の回復によって藻類が爆発的に増殖し、温室効果ガスを大量に消費した。これらの出来事すべてが、炭素同位体の記録にきちんと保存されている。

動物の出現

ホットハウスの時期にリンや他の栄養に助けられて藻類が繁殖したことは、大気中の酸素の激増に間違いなくひと役買っている。粘土鉱物製造所がその影響をさらに拡大したかもしれない。そしておよそ6億5000万年前に、大気中の酸素量は現代に近いレベルにまで増加した。その結果、複雑な多細胞生物が生まれた。そのレベルの量の酸素が存在しないと、クラゲや虫などの活動的でエネルギーを必要とするライフスタイルが成り立たない。事実、化石の記録に現われる最初の多細胞生物と思われるものは、およそ6億3000万年前、第2のスノーボール現象の直後だ。
新原生代に動物が出現したことを理解するには、まず10億年以上さかのぼって、退屈な10億年以前に目を向ける必要がある。わずかな化石の証拠から、およそ20億年前にまったく新しい種類の単細胞生物が生まれたことが示される。それ以前、細胞はすべて物理的に分離された(相互依存していても)生物だった。しかしマサチューセッツ大学アマースト校の生物学者であるリン・マーギュリスが、1つの細胞が別の細胞を丸ごと取り込むという、革命的なアイデアを初めて提唱した。取り込んだ細胞は消化されず、大きい細胞が小さいものを吸収して共生関係を築いたのだ。それによって地上の生物は永久に変わった。
マーギュリスは創造力にあふれた、精力的かつ知的好奇心旺盛な人物だ。彼女はもっぱら生物の集団がどのように相互に作用し、共進化していることに取り組んだ。彼女は共生的な関係と生物学的発明を、生物の歴史の広範にわたるテーマと見なした。彼女の主張が少なからぬ人々を動揺させたのは、進化は基本的に突然変異と選択によって起こるという、正統なダーウィニズムの見解から逸脱しているからだ。異論はあるにしろ、マーギュリスの内部共生論には説得力があり、現在では広く受け入れられている。現代の植物、動物、菌類をつくっている細胞には数多くの内部構造がある。小さな発電所のような働きを持つミトコンドリア光合成をする生物の中で太陽エネルギーを活用する葉緑体、遺伝分子であるDNAが入っている細胞核。これらと他の細胞小器官には、それぞれ細胞膜が、場合によっては独自のDNAがある。マーギュリスはこれらの小器官はそれぞれ、もっと前に単純な細胞から進化し、取り込まれ、やがて吸収されて、特別な生化学的作業を行うようになったと主張している。今、最も有力な説によると、変化はおよそ20億年前に始まり、はるかに複雑な多細胞生物出現のための準備が整った。