じじぃの「科学・地球_46_SDGsの世界ハンドブック・生物多様性の危機」

What on Earth is Biodiversity?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NjwtneQ9cd8

One million species risk extinction due to humans: draft UN report

APRIL 23, 2019 phys.org
draft UN report obtained by AFP that painstakingly catalogues how humanity has undermined the natural resources upon which its very survival depends.
The accelerating loss of clean air, drinkable water, CO2-absorbing forests, pollinating insects, protein-rich fish and storm-blocking mangroves-to name but a few of the dwindling services rendered by Nature-poses no less of a threat than climate change, says the report, set to be unveiled May 6.
https://phys.org/news/2019-04-million-species-extinction-due-humans.html

『地図とデータで見るSDGsの世界ハンドブック』

イヴェット・ヴェレ、ポール・アルヌー/著、蔵持不三也/訳 原書房 2020年発行

19 持続可能な開発からほど遠い不平等な世界 より

地球上に住む人々のあいだにはつねに大きな不平等(格差)が存在してきたが、その一部はなおも増幅しつづけている。25年前には最貧困層(10%)の約7倍であったOECD諸国における最富裕層(10%)の可処分所得の平均は、今日では約9.5倍となっている。衛生環境や食生活の分野において改善こそみられるものの、社会的不平等は顕著である。極度の貧困状態で暮らす人々の数はここ30年で10億あまりに減少した(世界銀行調べ)。2005年から2015年にかけての10年間で、栄養失調状態にある人々の数は10億から8000万になった。とはいっても、環境問題(生物多様性の劣化、気候変動ないし温暖化、海洋汚染)は山積しており、これらは不適切で容認しがたい管理の仕方に起因する。人類全体としては持続可能な開発のスタンダードから今もほど遠い状況にあり、最貧困層は社会的・経済的な機能障害のあおりを真っ向から受けている。それゆえ、貧困の削減と根絶は持続可能な開発目標の核心をなすものといえる。

48 生物多様性の危機 より

生物多様性は地球の生態系の重要な構成要素のひとつであり、それは巨大な化学的環境、地球の炭素収支、その結果としての気候変動(とりわけ森林伐採による)にかかわっている。地球上の70億の住民がそれを使用し、破損し、さらには破壊している。このことから第6の「大絶滅」[地球の生物は、氷河期の到来や隕石の衝突などによって過去に5度、大量絶滅期を経験しているとされる]を危惧する専門家もいる。

生物多様性

生物多様性(biodiversity)は、英語のBiological Diversity(生物学的多様性)の縮約語で、生態系や種、同種内の遺伝子の多様性をふくむ、生物界の多様性を意味する。この生物多様性は、動物・植物群を主とする大きな「バイオ―ム(生物群系)」から構成される。これら生物集団は優勢な植生を対象とし、その有機的な組織体が大きな気候区分と深く関係する環境への適応によって特徴づけられる。
バイオ―ムとはある生物地理学的領域の特徴を示す生態系のひとまとまりを意味するが、機能的な単位である生態系には、互いの属性に影響をあたえる有機体と非生物的環境の両方がふくまれる。生態系は森林や沼沢、沿岸地域、草原、生垣[所有地の境界を示す灌木など]、樹木、海といったさまざまな空間的レベルに存在する。
それぞれの生物体は生態系のなかにおいてそれぞれ異なった機能を担っている。生産、消費、分解といった機能である。こうした生物多様性はまた炭素循環、窒素循環、リン循環、酸素循環のような、自然の大きな循環の構成要素をなす。そのかぎりにおいて、生物多様性は気候変動とかかわる。人間がこの気候変動を是正するなら、生物多様性は大気中に放出された大量の温室効果ガスから解放されるだろう。

今日の生物多様性

今日の生物多様性は、これまでの地球上に生存したすべての種の約1%を占めている。現在発見され記憶されている種の数は1500万から1800万のあいだといわれ、その半分は昆虫である。しかしながら、この数字は実際よりずっと少ないはずである。地球上の生物多様性は地域により大きなばらつきがみられるからである。
生物種の半分は陸地の7%に分布している。生物多様性に富んだ地域は各地に存在し、熱帯にみられる多くの「ホットスポット」[豊かな生態系をもちながら、絶滅が危惧される種が多く、破壊の危惧に瀕している地域]がこれにあたる。これらの地域は陸地全体の1.4%を占めるにすぎないが、そこには世界全体の44%の維管束植物類[シダ植物、種子植物]と35%の脊椎動物(魚類を除く)が生息・生育している。こうしたホットスポットカリフォルニア州やブラジル南部、地中海周辺、ギニア湾周辺の国々、南アフリカマダガスカル、インド洋の島々にみられ、約1万5000種の植物を有しているが、そのうち1万2000以上の固有種が東アフリカと東南アジアに認められる。

生物多様性の現状――生命の歴史の1段階

生物圏とその多様性はあらゆる時間・空間において進化する。いまだ異論はあるものの、生命の起源は今から30億年を少し超えた昔にさかのぼるとされる。海洋中で誕生した生命は、4億5000万年ほど前に陸上にも生息するようになり、複雑化していった。地質時代をへるなかで、地球の物理・化学的特性(気温や大気の成分)が変化するとき、種の絶滅が起こる。だが、絶滅期であっても、いくつかの種は生き残る。
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人類の歴史において、人間の活動による生物圏への影響は最初は非常にわずかであった。しかし、ホモ・エレクトゥス(原人)が80万年ほど前に発見した火とともに、それは顕著になってきた。環境と生物多様性に対する影響はホモ・サピエンス(現生人類)の出現によりさらに強まり、数十種の大型哺乳類が第四紀の気候変動と人間の活動――それがすべての大型哺乳類の消滅の原因ではないにしても――の二重の影響によって姿を消した。最近ではドードー[マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた鳥類]や巨大ペンギンが絶滅し、アフリカ象、マウンテンゴリラなどの前途も危惧されている。

国際自然保護連合(IUCN)[地球規模で自然資源と環境の保全をはかるため、1948年に設立された国際団体、本部はスイスのグラン]は、絶滅危惧種をまとめたレッドリストを作成しているが、これらの危機をまねいている原因には、生息地の破壊または細分化、その汚染、天然資源の過度の利用(過剰漁獲ないし乱獲、過密放牧など)、一部が「侵襲的」レベルにまで達している無秩序な種の分散、そしてむろん気候変動の影響などがあげられる。