じじぃの「科学・地球_277_それはあくまで偶然です・隠れトランプ」

US Election: Who voted for Donald Trump?

「隠れトランプ」でトランプ大統領が再選?過去に激戦区を的中させたロバート・ケイヒリー氏が予想

2020年11月3日 ハフポスト
トランプ氏を支持しているが世論調査には正直に答えない「恥ずかしがり屋なトランプ支持者」が相当数いるという。
ケイヒリー氏は2016年の大統領選と同じく「社会的望ましさバイアス」を考慮した調査手法を採用している。これは、世論調査に対して人々が、本音とは異なっていても社会的に受け入れられやすい回答をするという傾向のことだ。ケイヒリー氏は調査の際に「あなたの身近な人は誰に投票するか?」という質問を入れることにしていれて、本心を引き出すようにしているという。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/robert-cahaly_jp_5f979035c5b6b74d85f3e0b0

『それはあくまで偶然です 運と迷信の統計学

ジェフリー・S・ローゼンタール/著、石田基広、柴田裕之/訳 早川書房 2021年発行

第17章 ラッキーな世論調査 より

運が重要な役割を果たす現代生活の一分野が、世論調査だ。世論調査会社はランダムなサンプルを選んで、製品の好みから仕事の習慣や社会的な態度まで、母集団の意見を調査する。そして、いちばん目立つのが、選挙の当選者と落選者を予想するために使われたときだ。もし私たちの運が良ければ、世論調査は選挙の最終結果を予想してくれる。けれど、もし運が悪いと、世論調査は大きく外れ、混乱と狼狽(ろうばい)をもたらしかねない。

トランプにやられた

近年の世論調査でいちばんな失敗は、2016年のアメリカ大統領選挙のときのものに違いない。投票前には、ほとんどの世論調査ヒラリー・クリントンドナルド・トランプを4ポイントほど上回っているという結果を示していた。実際、クリントンは一般投票で勝ったけれど、その差は約2.1ポイントにすぎなかった。ほとんどの州で勝者総取り方式になっている選挙人投票の仕組みのおかげで、トランプはなんとかアメリカの次期大統領になれた。
そういうわけで、一般投票に関しては、選挙前の世論調査はおよそ1.9ポイント外れたことになる。ただの誤差の範囲だ。そうだろう? いや、違う。選挙前には多くの世論調査が行われたので、サンプルを全部合わせると、3万人を優に超えていた。だから、全体としての誤差の範囲は0.5パーセントで、実際の1.9パーセントの誤差よりもずっと小さかった。
では、どうしてこれほど大きな誤差が出たのか? 単純な話で、「バイアスのかかった観察」のせいだ。状況をCNNニュースチャンネルのコメンテーター、ヴァン・ジョーンズが、次のように見事に要約している。ジョーンズはカナダを訪問中に受けたインタビューで、トランプの選出は「我が国のさまざまなものに対する拒絶だった」と述べている。どんなものか? 政界のインサイダー、銀行業界のエリート、外国人、学者、ハリウッドのスターといった、おなじみのものに加えて、ジョーンズは「自分たちは何でも知っているという、世論調査会社の自身過剰」も挙げた。
彼の言葉は私の胸に響いた。もしトランプの支持者が(ほかのさまざまなものに加えて)世論調査会社に腹を立てていたら、クリントンの支持者よりも世論調査に応じる可能性がなおさら低かったかもしれない。それが結果に影響を与えたということがありうるのか?
私はさっそく計算を始めた。有権者を完璧に代表するサンプルに世論調査会社が電話し、回答者全員が完全に正直に答えるという筋書きを、私は想像した。その場合、唯一の問題は? 誰もが回答することに同意したわけではなかった点だ。クリントンをはじめ、トランプ以外の候補者の支持者の回答率が10パーセントだったら、トランプ支持者の回答率がどれだけ低いと、世論調査会社はクリントンが4ポイントリードしていると結論するだろう? 答えは、0.4パーセントだった。

トランプ以外の候補の支持者の回答率が10パーセントで、トランプ支持者の回答率が9.6パーセントだったら、それだけで、世論調査会社の誤りがすべて説明できる。それこそ、「バイアスのかかった観察」の威力なのだ。

用語集

本書で使った語句の一部の意味を簡単にまとめておく。

バイアスのかかった観察

特定の証拠を考慮に入れる一方で、ほかの証拠を見逃したり無視したりするとき。