じじぃの「歴史・思想_538_日本の論点2022・バイデンの米国・中間選挙」

Hannity: Biden's disastrous year

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fGXhY5nQf54

2022年 中間選挙で懸念される民主党の大敗

「2022年の米中間選挙」は共和党が勝利か、バイデン氏の支持率急落の理由

2022.1.13 ダイヤモンド・オンライン
中間選挙で懸念される民主党の大敗
4年に1度の米国大統領選の間に行われる2022年の中間選挙まで1年を切った。
選挙賭博市場の賭けサイトでは野党・共和党の勝利予想が圧倒的に優勢だというが、メディアや選挙の専門家の多くも同様の予測をしている。
https://diamond.jp/articles/-/292489

『これからの日本の論点2022』

日本経済新聞社/編 日経BP 2021年発行

世界はこれからどうなる

論点18 「バイデンの米国」持続力は? 中間選挙に3つの試練 より

【執筆者】菅野幹雄(ワシントン支局長兼コメンテーター)

難路はこれから、突破力に陰り

バイデン政権への米国民の支持はどうなっているのだろうか。トランプ時代からの支持率、不支持率の推移をグラフで見てみると興味深い発見をすることができる。
支持率より不支持率のほうが一貫して高かったトランプ政権時代と違い、バイデン政権の支持率は当初、支持が不支持を上回った。米世論調査を集計する政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスの集計によると、各社世論調査が出そろった2021年1月以来の半年あまり、バイデン政権は50%台の支持率と40%の不支持率のなかで推移していた。特に初期のコロナ対応と現金給付などの緊急経済対策についての国民の支持は厚かった。
しかし、バイデン支持には明らかに息切れ感がある。バイデン氏が大統領に就任した直後の1月下旬の段階で、各種世論調査の平均で米リアル・クリア・ポリティクスが集計しているバイデン氏への支持は55%、不支持は36%と両者には20ポイント近い差があったが、その差はじわじわと縮小し、8月に入ってついに支持と不支持が逆転した。あとで触れるが、バイデン大統領が決めたアフガニスタン駐留米軍の撤収に伴い混乱が引き金となった。
背景はなにか。そこをたどると、本稿の主眼である2022年11月の中間選挙の展望も見えてくる。キーワードを使いながらバイデン政権の試練を分析してみたい。

①民主・共和の深刻な対立、政策実行に遅れ

1つ目のキーワードは「袋小路」。水と油ほども違う米2大政党の対立が深刻すぎることで、政策の実現が停滞する傾向がはっきりしてきたことだ。先ほど触れた「バイデン3大プラン」(1つ目は「緊急コロナ対策」)の残り2つ、「米国雇用計画」と「米国家族計画」は、その規模が大きすぎること、また企業や富裕層に対する増税に対する反対から、共和党の抵抗にあい、米議会での審議は難航を極めた。
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ところが、民主党内にも巨額の投資に反対したり、増税措置を適切でないと批判したりする中道勢力がいる。1人でも民主党内から反対が出てくると、民主党単独での可決・成立は望めなくなる。バイデン3大プランの実行は、そうしたガラス細工のような構造で成り立っている。派手なかたちで米国の「変革」を訴えたバイデン大統領だが、有権者はこうした長期間の停滞に失望感を抱きはじめたと見てもおかしくはない。
バイデン氏が掲げる法人税率や地球温暖化対策の政策は、結局のところ、米議会で関連の法案や条約を通さなければ、実効には移せないものが大半だ。

②好調な経済とコロナ対応に見られる「変調」

第2のキーワードは「変調」だ。バイデン氏の支持が頭打ちになっているもう1つの理由は、就任当初に非常に良い実績を示していた経済、そして新型コロナウイルスへの対応がやや変調をきたしていることだ。
経済面では高めの経済成長が続く一方で、有権者の生活実感に直結する物価上昇が目立っている。米消費者物価指数は前年比で5%近い上昇に達し、なかでも米国人の生活と切っては切れないガソリン価格、「住」の質にかかわる不動産の価格などが軒並み上昇している。
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コロナ感染で重症化あるいは死亡に至る例は大多数がワクチンの未接種者だが、そうした人々はバイデン大統領の呼びかけに反応せず、なかには反発している勢力がいる。大統領の呼びかけが逆効果となり、その悪影響が経済活動の鈍化や国民の不安の拡大、ひいては政権支持率の低下につながっているとう、なんとも皮肉な構図となっている。

③恒例の大統領に「行動力」への懸念も

第3のキーワードは「行動力」だ。ここへきて、78歳という史上最高齢で就任したバイデン氏の体力や健康に対する不安感のようなものが米国民のあいだに拡がっている印象がある。
反トランプの流れで誕生した民主党政権は、人種や性別などで多様性を重視した内閣を立ち上げた。優秀で高学歴の人材を要職に起用し、秩序だった政策決定を進めている印象が当初は強かった。ただ政権発足から時間が経つと「追い風」の材料が乏しくなり、徐々に傾斜がきつくなる坂道をのぼるような状況になるなかで、バイデン氏が米国をどのようなかたちを引っ張っていくのか、よく見えなくなってきた。8月末にアフガニスタンに駐留した米軍の撤収を完了したバイデン大統領だが、その過程で生じた大混乱は、米世論の支持の勢いを大きく落とす作用を及ぼしている。
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バイデン氏は撤収の判断の正しさを強調するが、その過程で生じた対応のまずさや多くの損失と向き合おうとはしなかった。これが米国民のあいだの不満を高め、支持が下落する要因となった。高齢のバイデン氏が、米軍を指揮するリーダーとしての「強さ」を備えているのかという点でも疑問を残した。バイデン氏がこの失点を挽回するのは容易ではないだろう。
初の女性副大統領であるカマラ・ハリス氏も、インド人とジャマイカ人の親を持つという多様性やカリフォルニア州司法長官を務めた実績などへの期待が当初は高かった。だが、政権発足から半年あまりが経過し、南部国境の移民入入増加の問題や有権者の投票機会の確保といったバイデン氏から与えられた課題をこなすのに手間取っている。バイデン政権全体として、物事を強力に前に進めるバイタリティーの不足を感じさせる。
1月20日の大統領就任式は例年のように数十万の人手あふれるお祭りでなく、高いフェンスに囲まれた連邦議会議事堂で参加者を搾っての厳戒態勢のなかで執り行われた。わじか2週間前の1月6日、大統領選に不正があったと不十分な証拠のもとで抵抗するトランプ氏の多数の支持者が、この日に予定された大統領の正式選任手続きを妨害しようと連邦議会議事堂内に乱入して一時占拠するという事件が起きた米国の民主主義史の汚点ともいえる出来事の直後だけに、バイデン氏が米国を正常化に導いてくれるとの期待も高かった。
「米国の傷を癒やす」と宣言して就任したバイデン米大統領は、民主党共和党の支持者のあいだでぱっくりと割れている米世論の断絶を修復する役割を自認しているはずだ。だが、そのための政策運営に逆風が強まりつつある。しかも、バイデン政権の勢いの衰えを立て直す「補助ロケット」のような材料が見当たらないのが気がかりだ。