じじぃの「ハンディキャップ説・大事な骨を失った人間のオス?生きもの・かわいくない世界」

Which Animal has the Biggest Penis? | Earth Unplugged

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IfJ5WTphzdY

ゴリラのペニスは意外に小さい

Penis size: An evolutionary perspective

Thu 6 May 2010 The Guardian
●Anonymous, age and sex unspecified
Dear Carole, Why are women so obsessed with the size of a man's cock?
Today, the average erect gorilla penis is 3cm (1.25 inches) long, the average chimp or bonobo penis comes in at around 8cm and the average human penis stands at around 13cm. Most primates, including chimpanzees, have a penis bone and achieve erections through muscle contraction.2 The human penis has evolved the unusual system of vasocongestion to achieve erection, making the erect organ far more flexible than that of other primate species.
https://www.theguardian.com/science/2010/may/06/women-penis-size

『生きものたちの「かわいくない」世界』

ヴィンチェンツォ・ヴェヌート/著、安野亜矢子/訳 ーパーコリンズ・ジャパン 2021年発行

第1章 オスとメスの戦争 より

一夫一婦制と一夫多妻制

ヒトの女性はどのように男性を選ぶのだろうか? 彼女たちは最高の遺伝子を探したり、繁殖におけるコストを分け合える男性を求めたりしているのだろうか?
ポッドキャスト版を録音した際に、答えにくい問題に率先して応えてくれたテルモ・ピエバニ氏に隣に来てもらいたちが、今、私はひとりでパソコンの前にいるので、勇気をもって問題に立ち向かおうと思う。私たちが、家や橋や爆弾を作る裸のサルを観察している宇宙人だということを、今は頭に入れておいてほしい。
ヒトの女性が選ぶのは、子育てを助けてくれる男性なのだろうか? それとも最高の遺伝子を持つ男性なのだろうか? 別の言い方をすればこうだ。私たちヒトにとって、一夫一婦制と一夫多妻制のどちらが適しているのだろうか?
雌雄の体の大きさの違いから、それぞれの種の社会的、性的構造を知ることができる。非常に大まかな法則に従えば、性別の見分けがつけば一夫多妻制だとされる。そして、雌雄の体の大きさの違いが大きければ大きいほど一夫多妻制の傾向が強まり、ハーレムも大きくなると言われている。
ゾウアザラシ属のオスは、体長6メートル、体重4000キロあるが、メスは体長3メートル、体重500キロしかない。
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では、善良な宇宙人になりきって、裸の男女の写真を見比べてみよう。両者に違いはあるだろうか?
体の大きさを始め、筋肉量や体脂肪の分布、毛髪の量には明らかに差があるうえ、乳房やペニスなどの第2次性徴もはっきりしている。宇宙人の目から見ても男性と女性は見分けがつくので、”ホモ・サピエンス・サピエンス”には一夫多妻制の傾向があると考えられる。
ただし、そこまで際立った違いがあるわけではないので、たとえヒトの男性がハーレムを作ったとしても、非常に小さなものになるだろう。男性の性的特徴を、進化的に非常に近しいいくつかの生きものと比較してみると、別のことが見えてくる。
宇宙人でもわかっていることだが、ゴリラのペニスは小さい。勃起した状態でも3センチしかないなんて、自然はずいぶんゴリラにケチなことをしまものだ。睾丸もほとんど見えないくらいに小さい。
ゴリラの社会的、性的構造は一夫多妻制だ。つまり、オスはハーレムを持っていて、家族のなかにおとなのオスは自分しかいない。そのため、シルバーバックと呼ばれるおとなのゴリラのオスは、この世のすべてのオスにしつこくつきまとうちょっとした問題、つまり「この子どもの父親は本当に自分なのか?」という疑念は持たなくていい。自分にほかのオスを遠ざける強さがあるかぎり、群れにいる子どもは自分が支配する。ゴリラにかんしては、進化が睾丸の大きさをセーブしたといえるだろう。
ゴリラのオスが持たなくてすむもうひとつの悩みは、「メスをどう喜ばせる」ということだ。オウムのように特定のメスとのあいだにパートナーとしての強い絆を結ぶ必要がないので、メスを喜ばせなくてもいい。
これが、ゴリラのペニスが非常に小さい理由である。おそらく、ゴリラの交尾は快感に大きく左右されない本能によるものなのだろう。一方、チンパンジーはゴリラの100倍もの交尾を行う。
実際、チンパンジーは、大きなペニスと、ゴリラの16倍の大きさの睾丸を持っている。
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100万年前、ヒトの男性は「バキュラム」と呼ばれるベニス内部の支えのひとつである陰茎骨を失った。チンパンジーを含む霊長類の多くのオスは、今でもこの骨をもっている。陰茎骨は、男性のペニスをまっすぐに整え、いつでも性交できるようにしてくれる。なかなか便利な代物だった。それにもかかわらずヒトの女性はこの骨を消滅させるまで頑張ってしまったようだ。いったい、なんということをしてくれたのか!
なぜ女性たちがそこまでしたのかはわかっていないが、諸説あるなかで最も興味深いのは「ハンディキャップ説」だ。陰茎骨があると、あまりにも簡単に性交ができてしまうため、女性は陰茎骨がなくても同じように性交ができる男性にだけ身を任せるようになった、というものだ。

クジャクのオスが動きにくい飾り羽というハンディキャップを持っていたように、ヒトの男性は、性交時に骨に頼ることなくまっすぐな形をキープしなければならないペニスを与えられたのだ。

かっての素晴らしい構造はすぐに退化し、100万年後の現在、年をとった男性はバイアグラを飲んで切り抜けなければならなくなった。
陰茎骨がなくなったもうひとつの理由として考えられているのは、ヒトがある時点で一夫一婦制になったことだ。たったひとりの女性を満足させればよくなったことで、陰茎骨も不要になったのである。
私たちの体は、ヒトが厳密な意味での一夫一婦制ではなく、一夫多妻制になりやすい傾向にあることを教えてくれる。実際、ひとりの男性が3、4人の妻を持つことができる国が多数あるし、たとえ一時的なものであれ、一夫一婦制も存在するし、ひとりの女性がふたりの夫を持つ一妻多夫制もある。なぜこのような違いがあるのかはこれから明らかになるだろうが、いずれにせよ、ヒトの女性がほかの種のメスと同様に、男性よりもはるかに好みがうるさいのは仕方のないことだ。