じじぃの「芸術家肌のフグ・なぜ曼荼羅を描くのか?生きもの・かわいくない世界」

Puffer Fish Constructs A Masterpiece of Love - BBC Earth

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VQr8xDk_UaY

Puffer Fish Constructs A Masterpiece of Love

The nest of a Japanese pufferfish - BBC's Life Story

01/12/2014 Caroline Banks
I was amazed to see this when catching up on the wonderful BBC series Life Story and just had to put my TV on pause to record these images of the work the male Japanese pufferfish undertakes to attract a mate.
https://www.carolinebanks.co.uk/general/the-nest-of-a-japanese-pufferfish-bbcs-life-story/

アマミホシゾラフグが描く不思議なサークル 海底のミステリーに迫る!

2020.08.03 NATURE & SCIENCE
鹿児島市からおよそ400 km南にある奄美大島
この沖合の海底に、直径2 mほどの “ミステリーサークル” が出現することが、以前からダイバーたちに知られていました。誰が何のためにつくったのか、長い間正体不明だった謎の幾何学模様でしたが、2011年の発見によって新種のフグによるものだということが判明します。
2015年、日本の生きものとしてはじめて「世界の新種10種」にも選ばれた、とてもユニークなアマミホシゾラフグの生態に迫ります。
しかし、何のためにこのような巨大な幾何学模様を海底に描いているのでしょうか?
実は、この巨大建築はメスにアピールするための産卵巣(産卵床)なのです。
https://nature-and-science.jp/pufferfish/#page-1

『生きものたちの「かわいくない」世界』

ヴィンチェンツォ・ヴェヌート/著、安野亜矢子/訳 ーパーコリンズ・ジャパン 2021年発行

第1章 オスとメスの戦争 より

芸術家肌のフグ

私は以前、イタリアのテレビチャンネル「Rete4」で、『ライフ――ヒトと自然』という番組の制作と司会を担当していた。独自のドキュメンタリー映像に加え、BBCディスカバリーチャンネルが撮影した素晴らしい自然の映像も紹介する番組だ。

あるとき、脚本を書く準備をしていた私は、BBCが撮影したある映像を見て、それこそ椅子から転げ落ちるほど驚いた。

それは日本で撮影された映像だった。白い砂で覆われた海底で、小さな白いフグが口を使って砂を動かしている。不思議に思いながら見ていると、フグは穴を掘ったり、砂に息を吹きかけたりしはじめた。動きに合わせて控えめに流れていた軽快な音楽が、だんだんと盛り上がっていく。
当初、カメラはフグの姿だけを間近から捉えていたが、しだいに引いていき、徐々にフグが作っているものを映しはじめた。やがて波状の砂の溝が見えてきたが、フグが何をしているのかはまだわからない。音楽によって雰囲気が高まり、カメラがとらえる範囲が広がり、フグはどんどん小さく、砂の規模は大きくなっていく。
ついにカメラの動きが止まったところでバイオリンと管楽器の音が響き渡り、フグという偉大な芸術家による作品の全貌があらわになった。なんということのない小さな白いフグが、白い砂の上に、宇宙の広がりを思わせる曼荼羅(まんだら)を描いていたのだ。
あまりの衝撃に開いた口がふさがらなかったが、しばらくすると、ある疑問が湧いてきた。フグはなぜこんなことをしているのだろう? どうしてオスの小さなフグが、1日のうちの24時間を、つまりはすべての時間を、波に消されつづける作品作りに費やしているのだろうか?
その答えもまた、性別と、メスによる最高の遺伝子の選択に関係している。フグのオスはこれほど儚(はかな)く複雑な作品を作り、保存するのに多くの時間を割きながらも、問題なく生きつづけ、獲物を追い、健康を保つことで、自分の遺伝子がいかに優れているかをメスに正直にアピールしているのだ。
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メスが最も優れた遺伝子を選ぶ際に基準となるものが、もうひとつある。年齢だ。20歳の人間が自分を美しく強く見せるのはたやすいだろうが、私のような56歳(もうすぐ57歳になる)の人間には、少々難しい。まあ、冗談はさておき、白いものが交じった髪に魅力を感じることがあるのは、何も人間の女性だけではない。ある程度の年齢を重ねたオスでも、十分な力を持ち、メスの視線を集められるのなら、質の高い遺伝子を持っていることになる。
しかしながら、動物のメスのなかにはクジャクやフグとは異なる戦略をとるものもいる。そうしたメスは、最高の遺伝子に狙いを定める代わりに、オスにも自分たちと同じくらい――ときには自分たち以上に――繁殖に献身的であることを求めるのだ。