じじぃの「科学・芸術_378_ヒトの秘密・ヒトだけが芸術を作り出せるのか」

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 第3回「芸術(アート)のジョーシキを疑え」 動画 Dailymotion
http://www.dailymotion.com/video/x6dx9mm
Puffer Fish carves crop circles in Amami Oshima 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IO-NI7qbUrM

フグのミステリー・サークル

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密 「3 芸術(アート)のジョーシキを疑え」 2018年1月19日 NHK Eテレ
第3回は、アートについて。ヒトは自分たちが作り出した芸術を、進化の象徴だと考えている。
しかし動物もヒトに負けない見事な作品を作り出すという。ヒトは何を求めてアートを生み出すようになったのか。ジャレド・ダイアモンド博士が、動物の例をヒントに疑問を解き明かしていく。
アートとは何か。
①通常アートには生きていくために必要なものではない。
②アートは感情を刺激する。アートは美的欲求を満たす。
③アートは生まれてから習得するものです。偶然にはできないし遺伝子にプログラムされていないものがアートです。
今から15年ほど前、日本の海で泳いでいる人が海底の砂に奇妙な模様を見つけたんです。
この砂の彫刻を作ったのはアマミホシゾラフグのオスです。
ヒレだけを使って1週間美しい砂の彫刻が完成します。
出来上がった砂の彫刻を見てメスのフグがやって来ました。
メスはこの砂のサークルからオスについてどんな情報を得ているのでしょう。
なぜ、メスはこの模様を見てその気になってしまうのでしょうか。
このように大きくてちゃんとしたきれいなデザインのサークルを作れるオスは優れた遺伝子を持っているに違いない。
もう1つ、生物界で最も手の込んだシグナルを示すのはアズマヤドリです。
アズマヤドリは、私がよくフィールドワークに出かけるニューギニアやオーストラリアにいます。
オスは木の枝を編み上げて、塔を建て周りを青いもので飾り立てます。
住宅地ではヒトの家などから青いものを集めてくるんです。
なぜか、メスはこの色使いのセンスを優秀なオスの証拠と見るようです。
私たちはヒトのアートの方がはるかに崇高でそこに目的や機能などは存在しないと思いがちです。
しかし、ヒトの芸術が持つ動物的な側面を理解することも大切なのです。
http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/x/2018-01-19/31/10343/2753023/
『若い読者のための第3のチンパンジー ジャレド・ダイアモンド/著、秋山勝/訳 草思社文庫 2017年発行
芸術の起源 より
私たち人間の芸術は、シリ(アジアゾウ)やキャロルが描いた絵とはかなりかけ離れたもののようである。進化の点からすれば、ゾウはやはり人間の近縁ですらないのだ。霊長類のヒトの親類の手になる芸術はどうなのだろう。
飼育下にあるゴリラ、チンパンジー、オランウータン、さらにはサルもまた、指や筆を使った絵や、鉛筆、チョーク、クレヨンを使った絵などの芸術作品を生み出してきた。コンゴと名づけられたチンパンジーは、1日に33枚の絵を描き上げた。自分の満足のために描いていたはずであるのは、絵をほかのチンパンジーに見せようとしなかったからであり、筆をとりあげるとかんしゃくを爆発させていた。コンゴとベッツィーというもう一頭のチンパンジーは、1957年にロンドンで作品展を開くという栄誉に浴すると、その翌年、コンゴは古典を開催している。
展覧会に出ていた2頭の作品はほぼ完売した(もちろん買い手は人間)。これだけの快挙を果たした人間の画家もそうはいないだろう。また、別のチンパンジーが描いた絵が、人間の画家の展覧会にこっそりと展示されたことがある。チンパンジーが描いたとはつゆ知らない評論家は、この絵を大絶賛していた。
児童心理学者のもとに、ボルチモア動物園のチンパンジーが描いた絵がもちこまれ、描き手の心の問題について診断するように求められたことがある。書き手の正体は明かされていない。3歳の雄のチンパンジーが描いた絵を児童心理学者は、絵は7歳から8歳になる男の子のもので、攻撃的な性格の持ち主だと診断した。また、1歳になる雌のチンパンジーが描いた2枚の絵については、精神的な病気を抱えた、ともに10歳の2名の少女だと判断している。心理学者はいずれも性別を正しく言い当てていた。誤っていたのは、どのような種の生き物が絵を描いたのかという一点である。
私たちの近縁の親戚が描いたこれらの絵は、ヒトの芸術と動物の行動のあいだに引かれた線をあやふやなものにする。人間のように、チンパンジーの絵もこれという目的のために描かれたものではない。いずれも自分の満足のために生み出されたものだ。しかし、だからといって類人猿とヒトの芸術のあいだの類似性を言い張るには、ひとつ問題が存在している。類人猿が絵を描くのは、飼育下にある動物がおこなう不自然な行為にほかならない。野生状態では起こりえないことなのだ。
類人猿が絵を描くことは自然の行動ではないので、芸術の起源を動物に求められないと反論することはできるだろう。それならば、今度は自然な行動という点に光を当ててみることにしよう。アズマヤドリ(オーストラリアとニューギニアに生息する鳥)の行動だ。この鳥はあずまやを作るのである。ヒト以外の動物によって作られ、飾り立てられた構造物のなかで、これにまさるほど洗練された建物は存在しない。