じじぃの「科学・地球_275_それはあくまで偶然です・バンビーノの呪い」

野球の神様 ベーブ・ルース

バンビーノの呪いとは?ベーブ・ルースの放出によって始まった悲劇

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2018年にワールドシリーズ優勝を果たしたボストン・レッドソックスは、メジャーリーグの30球団の中でも強豪の1つとして知られています。
21世紀に入ってからは2004年、2007年、2013年、2018年と4度ワールドシリーズを制覇しています。
しかし、2004年の前に優勝したのは1918年であり、86年もの間、レッドソックスは優勝から遠ざかっていました。
そして、レッドソックスのファンの間では、これは「バンビーノの呪い」のせいだと言われてきました。
バンビーノの呪いにおける「バンビーノ」とは、「野球の神様」と呼ばれるベーブ・ルースの愛称です。
https://baseball-one.net/bambino/

『それはあくまで偶然です 運と迷信の統計学

ジェフリー・S・ローゼンタール/著、石田基広、柴田裕之/訳 早川書房 2021年発行

第5章 私たちは魔法好き より

運やその解釈にまつわるこうしたさまざまな話は、私の頭の中を駆け巡っている。どの話の場合にも、これらの出来事に対するほかの人々の反応について考え、自分の反応と比べてしまう。

バンビーノの呪い

ボストン・レッドソックスメジャーリーグベースボールワールドシリーズで86年間優勝から遠ざかっていたとき、ファンはそれをただのランダムな運や実力相応の負けとしては受け入れられなかった。かわりに、神秘的な「バンビーノの呪い」のせいにすることにした。これは、はるか昔の1919年に、スター選手のベーブ・「バンビーノ」・ルースをニューヨーク・ヤンキースに放出するという、レッドソックのとんでもない過ちがもたらしたものとされる。こうして、胸が張り裂けるような敗北の1つひとつが、この呪いのさらなる「証拠」になった。
たとえば2003年、アメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズ最後の第7試合、レッドソックスヤンキースと5対5の同点のまま延長11回に入った。この試合に勝ったチームがワールドシリーズに進出する、11回の裏、ヤンキースのアーロン・ブーンにサヨナラホームランを打たれ、レッドソックスは敗れた。ブーンはその年にレッズからヤンキースに移籍したばかりで、ホームランは11回に出たので、レッドソックスファンは、これで例の呪いが効いていることが明らかに実証された、とただちに宣言した。とはいえ、決勝点を挙げたのが長年ヤンキースでプレイしている選手だったり、ブーンのホームランが初回に出たりしていたとしてもやはり、きっと呪いの証拠だとされただろう。
翌2004年、レッドソックスはようやくワールドシリーズで優勝した。直前のアメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズでは、ヤンキースを相手に初戦から3連敗していたから、この勝利はなおさら甘美なものだった。私にしてみれば、けっきょく呪いなどなかったことがこれで証明されたわけだ。ところが多くのレッドソックスファンにとって、この勝利は、むしろ、呪いがついに「解けた」ことを示していた。
ボストンのチャールズ川にかかるロングフェロー橋には、道路の「リバース・カーブ(S字カーブ)」を警告する交通標識がある。いつの頃か、グラフィティアーティストがこの標識に手を加え、「リバース・ザ・カース(呪いを無効に)」に書き換えた。誰もあえてそれを元どおりにしようとしなかったので、長年そのままになっていた、やがて、2004年にレッドソックスがついに勝つと、すかさず誰かがそれをさらに書き換え、「カース・リバーストゥ(呪い、無効に)」とした。
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ああ、そうそう、108年間も辛酸を舐(な)めた後、2016年にようやくワールドシリーズで優勝したシカゴ・カブスはどうなのか? これは、108年続いたランダムな不運が終っただけのことなのか? もちろん違う。これも、彼らは魔法の呪いに終止符を打ったのだ、とたちまち宣言された。その呪いはどうやら、1945年にカブスが本拠地としているシカゴのリグレー・フィールドで行われたワールドシリーズの試合で、ファンの連れていたヤギの入場を拒否したために招いたとされる(なぜチームが1909年から1944年まで勝てなかったかは説明されていない)。世の中には、いつまでたっても変わらないものもあるのだ。